8.《ネタバレ》 いつか機会があれば見てみたいと思っていた作品です。
風に波打つ黄金色に輝く麦畑。季節は移ろい、雪に覆われた白銀の世界。
その季節の中で、あるいは1日の中で、最も美しい瞬間をとらえる。
特に幾度と無く挿入される、赤く空を染める日没前後の美しさには心が震えるようでした。
そんな美しい作品の世界に自然と溶け込んでいくかのような巨匠モリコーネの音楽もやはり美しい。
病弱な農場主と、この農場に労働者としてやって来た男と女と、1人の少女。
彼らに訪れた、一見すると雄大で美しい自然の中での天国の日々。
しかしその微妙な関係は常に脆さや危うさをはらんでいる。
まるでマリックは遠くから彼らの日々を眺める傍観者のようでもありますが、
淡々とした日々の営みの中から人間の野望や嫉妬心といった、彼らの心の内を拾い上げていく。
どんなに文明が発展してもイナゴの大量発生の前になす術も無い人間。
本作が映し出す自然の大きさや美しさの前には、人間とはかくもちっぽけなものかと思わされます