2.《ネタバレ》 クラシック演奏家と聞くと、そのアカデミックな威光にハハー、と畏れ入ってしまうクラシックオンチなワタシである。しかし芸術畑もまた人間社会なのだなあと感じ入る一本でありました。
カルテットの一人が引退を表明したことから連鎖のように噴出する人間関係のわだかまり。それは凡庸な生活を送るワタシらとなんら変わることがないわけで、まるで同級生の熟年トラブルを聞いているようだ。
人間関係というのは微妙なバランスで保たれているもので、たとえ25年という月日を抱えてきたものでも、ちょっとしたきっかけでガラガラといってしまうのね。第二奏者の、第一奏者への屈折した思い、父と慕うチェリストの病にショックを受けるジュリエットには夫の不倫という追い討ち。その娘の秋波にまんまとやられてストイックの仮面が剥がれるダニエル。
私が思うに、若いアレックスが最も良くない。ダニエルに取り入ったのは母への当て付け気分が七割ほどと感じる。ころりといったダニエルが気の毒だ。ピーターにも「恥を知れ」ともっともな説教をされちゃったじゃないか。おじさんなのに。
メンバー間が不穏な中、一人弦を置く孤高の音楽家C・ウォーケンの静かで覚悟の伝わる演技が見事。個人的に好きなホフマンはついてない役どころで(たいていそうね)可哀相だなあ。