1.《ネタバレ》 この作品については個人的に食わず嫌いしていました。
柳の下に…的大人の事情で製作される作品にろくな物はないですし、アニメフアンに「もっとも脚本を書いてほしくない作家」アンケートを取れば1位を獲得すること確実の岡田脚本となれば、劇場に足を運びたくはならないしレンタルをする気も起きない…となるのはしょうがないところ。
そんな本作ですが今回実写版の公開に合わせてテレビ放送されたため鑑賞する事が出来ました・
で、結果としてはいい意味で裏切られたというのが率直な感想。
いろいろな作品でやらかした感のある岡田脚本ですが、本作のような本来の自分のテリトリーである秩父舞台のトラウマ物でシナリオを書けばちゃんとした物かけるんじゃん、と。まぁそう思ったわけです。(すんごい上から目線ですねw)
この作品の基本プロットは、よくある若者の葛藤群像劇であり成長物語であり、個人的にこの手の青春群像物映画はハナにつくものばかりで苦手なのですが、この作品については登場人物が基本的に善人として描かれている上に映画全体が前向きなためか観ていていやな気分になりませんでした。
これは僕的にはとても珍しい事です。
もちろん現実の人間を見れば登場人物はいくらなんでも善人すぎるとも思うんですが、しかし現実で嫌な奴についてはさんざん見慣れている私達ですから、何も映画の中でまでそんな腐った人間や嫌な人間をわざわざ見なくてもいいんじゃない?とも思うわけです。
そういう意味ではちょっと善人すぎるくらいの登場人物が揃うこの映画のスタンスは個人的には嫌いではありません。
最後も、あまりはっきりとした決着をつけず主要人物が未来に向かって歩き出す形で終わっている点も好感が持てます。
途中で「これ絶対に大樹と順がくっつくだろう」と思っていただけに、そこも完全に想定通りでしたし。
この映画で惜しいのは終盤のクライマックスシーン。
ミュージカルシーンとたくみが順を探して説得するシーンが平行して進む構成で、アイデアとしてはいいと思うんですが、残念ながらわざわざ平行させている意味がほとんどありません。
こういう構成をとるならなんらかの形でこの2つのシーンを呼応させるような工夫を持たせて盛り上がるべきところだと思うんですが、そういう工夫が全く無く相互にぶつ切り状態。
本当にただ平行して描かれているだけ。これは本当にもったいないです。
しかも、高校生のミュージカルなんてせいぜい20分か長くても30分程度ですよね。
どう考えても探す方のシーンとの時間が合っていません。
あのラブホが学校のすぐ裏にでもあった等でなければ絶対ミュージカルが終わってますよね…とつい突っ込みをいれたくなります。
さらに惜しいのが順を説得するシーンで、「え、それで解決しちゃうの?」って感じで正直拍子抜け。
彼女のここまでのトラウマや現場放棄した罪悪感その他もろもろを考えると、もうちょっと解消するための何かがないと無理があり、よくわかんない言葉遊びを少ししただけで手打ちというのはあまりに安直ではないでしょうか?
まぁそんな感じでクライマックスがやや残念という、コース料理で言えば「メインがイマイチ」という残念さがあるのですが、先に書いた通り映画全体のテイストが前向きで好感が持てるものであったため「メインは残念だったけど、コース全体としてはよかったよ」という感じの映画になっています。
クライマックスをもっとうまく組み上げてくれれば、かなりの名画になれた…と思うんですが、それは高望みというものでしょうか。
「あの花」にしても終盤の花火のくだりは微妙でしたからこのあたり製作陣の限界かもしれません。
とまぁ映画のベーシックな感想はここまでで、個人的に思った細かい事を2つ。
一つはメインの女性キャラの声優に水瀬いのりと雨宮天という20歳前後の若手女性声優の中でも特にルックス重視の選択が行われていた点。
おそらく映画が成功したときのイベントなどを考慮して「若くて可愛い子を」というビジネス的な配慮があっての起用だろうなと邪推してしまいます。
とはいえそこはプロの声優。演技に問題は全くなく、特に難しそうな順役を水瀬は好演していて(実際それで賞ももらってますし)、最近の劇場大作にありがちな「知名度の高い俳優女優を声優に使って違和感バリバリ」という悲惨な事故を起こしてないだけでもこの作品は評価できると思います。
もう一つは、たくみの父親の部屋にある大型スピーカー、あれはダイヤトーンのDS-3000ですね。
1984年発売ペア52万円。特に歴史に残る銘機等ではないのに一発でわかった自分はちょっとすごいな、と思いましたw