1.《ネタバレ》 まず映画として面白かった。
メディアに興味のある方なら記者がどういう仕事をしているか、新聞記事がどのように提供されているか、
単純にそのドキュメンタリーとして面白い。
今の政権がメディアを巧妙に利用していることは数年前から如実に感じていたが、
先日、「桜を見る会」問題が発覚し、朝のワイドショーをひとしきり賑わせた直後、
突然、緊急事態でもない不自然な速報テロップが連続して流れて驚いた。
「景気判断が上昇」「ハンセン病家族補償法案を提出」といったニュースである。
政権の悪印象を払拭するための、なんというわかりやすい情報の出し方だろうと思った。
先の参議院選挙の某局の特別番組では、この映画で登場する政治家の生い立ち再現ドラマという信じがたいコーナーがあった。
選挙報道番組が堂々と政党の宣伝番組と化している。
政権と関わりが深いと言われる企業が、この番組のスポンサーとして入っていたことと無関係ではあるまい。
(有名なホテルのCMが流れてました)
この参議院選挙では、自分の世帯に選挙公報が届かなかった。
広報を配る町会の役員の名前をネットで調べたら、ある政党所属の市議会議員の名前があった。
町会に理由を問い合わせても全く取り合ってもらえない。
確実に今の世の中は、かつてないような、おかしなことが起こっている実感がある。
話をこの映画に戻すと、テレビでは発言を許されない人たちが多々見られるのは興味深い。
実際、この映画で出てくる事件、問題は全く解決しておらず、「終わったこと」「無かったこと」にされているだけである。
辺野古の赤土の問題も初めて知った。
特に印象に残ったのは、先の参議院選挙、秋葉原で某政治家が登場するシーンである。ゴージャスな音楽が流れ、ショーと化している。
たまたま現場に自分がいたら正直、カルチャーショックであろうと思う。
公共の場で一人の政治家がここまで祭り上げられる演出が行われているのは不気味に感じざるを得ない。
編集としては露骨に意図的に感じる部分もあったが、意図的ではないドキュメンタリーなどありえない。
おかしいものはおかしいと言うこと。それは子供の態度ではなくはるかに大人の態度だと感じる。
返す刀のようだが、この記者の行動を見て、いわゆるヒーロー、ヒロインに仕立て上げてはならないようにも感じた。
この人は職務に忠実で、職業上の信念としてあたりまえのことをやっているだけで、この人が表に出てくるような状況こそがおかしいのだと思う。
マスコミも様々な不作法をしてきた歴史があるから自分は全面的にマスコミの仕事を支持するというわけではない。
なので、善対巨悪で割り切るかのようなアニメーションのシーンは余計に感じる。
しかし自分はこの人が注目されたことによって、メディアに多少の希望を感じたことは事実である。
自分は長年、ソーシャルサイトでニュースを見てきたが、罵詈雑言のコメントが目に入るのに辟易し、精神衛生上も良くないこともあり、
最近は新聞をネット契約して雑音のない記事を読むようにしている。どこの新聞とは言わないが。
誠実な仕事をしている人たちには、自分ができる範囲で対価を払って報いるべきだと思ったからだ。
誠実な情報にきちんと対価を払うことで、少なくともメディアが良い方向に行けば良いと思う。
ネット上の得体のしれない人たちが何を言おうと、個として自分はこう考える。
この映画はリアルタイムで改めて今の日本の政治のあり方について考えてさせてくれます。