1.《ネタバレ》 見終わっていつものシャマラン監督らしい明快さは無いわね、って思ったのだけど考察するうちにやっぱりシャマラン監督ならではの映画だって思えてきたわ。シャマラン監督の映画っていつも見終わった後にあれこれ考えるのが楽しいのよね。
『シックス・センス』からずっと監督の作品に描かれてきたのは「見えない恐怖、見えてしまう恐怖」だと思うの。その相手は幽霊だったり宇宙人だったり超常現象だったり。今回その相手は人の心であり信仰でありそして神なのね。
キャビンの3人家族は見えない恐怖の代表者。家族にとって押し入った4人は訳の判らない事を言う、頭のおかしい、死を強要してくる理解不能な謎の集団。捉えどころのない、不条理な存在。
一方キャビンに押し入った4人は見えてしまう恐怖の代表者。世界の終末のビジョンを見てなんとかしないといけないと突き動かされて本意ではない拘束、殺人の強要をする事になる。
一見、一方的に押し入った側に絶対的なイニシアティヴがあるように思えながら、実は恐怖に支配された弱い存在である事が判ってゆくわ。善良、とは言えないけれど本来は主人公家族と同様、普通に生きてきた人たち。
双方とも不条理な意思に翻弄され、その運命に抗いきれないままに反目し葛藤し、最終的な到達点へと至る、それは神に象徴される権力に支配された者たちがその掌で繰り広げるいざこざのようでもあるし、思想、宗教に翻弄され対立する人びとの姿のようでもあるし、そして人にはそれぞれに生があり心があることを啓示しているようでもあるし、理不尽な事象によって犠牲となった人びととその縁者の心を映しているようでもあるし。
人類の代表者にされてしまった普通の人びとが天罰を回避するために葛藤する物語、それはあまりに不条理で納得のゆくものではないわよね。
密室サスペンスとしてはちょっとユルい感じね。双方、肉体はともかく心は弱いのでピリピリとした緊張感とはならずパワーバランスがあやふやな混乱劇って風情。それでも役者さん、特にデイヴ・バウティスタさんが多面的な(怖い、優しい、強い、弱い)演技を見せてくれて良かったわ。
シャマラン監督らしい衝撃的ラスト!ってのは今回なし。でもクルマの中で見つけた証しが彼にもたらしたもの、それは切なく哀しいけれど無常の中の少しの理解、少しの希望のようでもあったわ。