3.《ネタバレ》 『福田村事件』は、利根川流域の村人達が9人の日本人同胞を朝鮮人と見做して虐殺した事件。殺された人の中には2歳、4歳、6歳の3人の子供達と2人の女性(内1人は妊婦)がいた。何十人もの村人が竹槍や鳶口、日本刀で子供達を切り刻んだ上に川に投げ捨て、その現場を多くの者が目撃した。犯人は捕まったが、直ぐに恩赦で全員釈放され、その後村人は口を閉ざした。
千葉県野田の普段は農家や工場で働く人々。善良な村人達が何の躊躇もなく、3人の子供達を虐殺できたのは何故か?彼らが無知だったからか?当時、避難してきた多くの朝鮮人を凶暴化した群衆から匿った日本人の警察署長もいた。彼は正しい情報を得ていた為、デマに踊らされることはなかった。限られた情報の中で、危機に瀕した人々の集団は容易にヒステリー状態に陥り、時に凶暴化する。あなた(私)がその集団にいたとして、どのように振る舞えるか?そういう想像力が試される。
現代社会は情報に溢れているように見えて、島宇宙化した領域では情報が偏り、いつの間にか限定されてしまうこともある。気が付けば集団の中で加害者側にいる自分。その可能性を想像し、集団心理にのみ込まれないよう(ノリに流されないよう)、常に個であり、俯瞰的であり、逆張りでいる自分を手放さないようにしたいと思う。
森達也の映画も良かったが、その原案に位置づけられる辻野弥生のルポも読み応えがあった。