6.《ネタバレ》 自然や宇宙原理に則った生き方が幸福であるという老荘思想の「タオ(道)」の生き方を示した映画。タオでは、流れに逆らわない、自分や他人と争わない、無理に満たされようとしない、無為自然に生きる、何かに成ろうとせず自分らしさに任せる等と説く。人間の本来の生き方や幸福のあり方が主題である。物語に大きな波紋はなく、生命感溢れる自然の映像と共に、ゆったりと時間が流れる。観客は何も考えず、映像に心を委ねていればよい。布屋の奉公人に出された少女ムイの物語。裕福で、三人の子宝に恵まれ、一見して幸せそうな家庭だが、いくつかの問題を抱えている。夫は愛人を作って家を出る性癖がある。妻は最愛の娘を死なせたことに悔悟の念を抱いている。老母は亡き夫の供養にかまけて籠りっきりだ。長男は家に居つかない。ある日、夫が有り金を持って家を出て、一家に暗雲が立ち込める。老母は嫁を責め、妻は自分を責め、子供達は不満を募らせる。タオから外れた生き方だ。タオの生き方をする人もいる。一人はムイの先輩の奉公人だ。彼女は文句ひとつ言わず、何十年も同じ家に奉公している。布屋が経済的に困窮し、給金が貰えなくても出て行かない。もう一人は若い頃から老母に恋焦がれている老人だ。彼は老母に会わず、老母の存命を遠くから確認するだけで満足している。彼女の人生に一歩も踏みこまず、それでいて老母の幸福が彼の幸福なのだ。イオは二人を見習って成長した。彼女は新しい奉公先の青年に恋心を抱いているが、その気持ちを彼に伝えようとしないし、恋に悩むこともない。ただあるがまま、自分らしく自然に生きているのだ。最終的に青年は婚約者と別れてイオと結婚する。イオの生き方が道を開いたのだ。現代人の観点からすれば、彼女の生き方は受け身で、自主性に乏しく、魅力に欠けたものに映るだろう。しかし、タオの思想から見れば、流れに逆らわない自然な生き方なのだ。例え、彼女が青年と結婚できなかったとしても、相手の幸福を願いつつ、身近で働くのを幸せと感じるのである。自我を超越した生き方で、どんな小さなことにも喜びを感じられる。青いパパイヤは生命と性の象徴だ。蔓を切れば白い液が流れ、実には種が詰まっている。イオが種をつまみ出して水に浮かべるのは、母になりたいという願望の表現だ。そして最後場面では、子供を宿している。会話を排し、映像で語る映像演出が秀逸だ。考えるのではなく、感じる映画。 【よしのぶ】さん [映画館(吹替)] 8点(2015-01-13 04:56:55) (良:1票) |
5.とにかく映像が美しく、それを見ているだけで飽きない。主人公の女の子が食事の支度や掃除などの家事をする姿もこれまた美しかった。確かに明確な主題がないように感じるけれど、「目立たなくても堅実に慎ましくきちんと生活していれば、きっと幸せになれる」と、この映画を見て私は強く思った。平凡でも、きちんとした生活がとても大切だと・・・。少女時代の主人公を演じた女の子がとてもかわいかった。 【きょうか】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-08-09 03:42:27) |
4.美しい映像を観ているだけで幸せな時間を過ごせました。ベトナム語の響きも心地よく、水の滴りも美しく、好きな映画です。 【rexrex】さん 8点(2004-06-12 16:13:17) |
3.まるでチェーホフの劇のように、日常生活を淡々と描いた映画でした・・・。たまにはストーリー重視の映画ばかり見るのではなく、想像力や感性を磨ける映画を観ることも大切かと。 【花守湖】さん [映画館(字幕)] 8点(2003-10-14 14:10:08) |
2.この映画は、人によって楽しみ方が違う映画でしょう…。僕は、仏教の映画であると思います。自然体であることの美しさが伝わってきます。仏教の教えの中の一かけらではありますが、最後に言葉で表そうとしたので、浮いた気がします…。又、音楽は、現代クラシック的で好きでない部分もあります。が、やはり、美しい映画です。 【ても】さん 8点(2003-01-07 01:00:35) |
1.瑞々しくも清冽な美しさをたたえた映像美。この映画の見どころと言えばそこでしょう(笑)ストーリーは、お屋敷の奉公人であるヒロインの生活を淡々と描いていて、退屈といえば退屈かも知れないですね(笑)けれど、ずば抜けて美しいアジアンテイストあふれる映像は、一見の価値があります。 【ネジマキ】さん 8点(2002-11-01 13:05:43) |