5.《ネタバレ》 作品には終始、ネオリアリズモのような空気がありながらも、
イタリアの地方の風土やそこで厳しくも力強く生きる人々を描く。本作もタヴィアーニ兄弟らしい、いい映画です。
ストーリーが動き出すのはガビーノが大人になってからですが、学校に父が迎えに来る冒頭から
時間をとって描かれる少年時代の描写が最後まで効いています。
ガビーノにとってはパードレ(父)でありパドローネ(主人)である粗暴な父を演じた、
タヴィアーニ兄弟の映画の顔とも言える名優、オメロ・アントヌッティがあまりにも素晴らしい。
父と息子の関係でありながら主従関係のようでもあった2人。幼少期からその関係を維持してきたのは父の暴力。
学校にも通わせてもらえず、文盲であったガビーノがその境遇を乗り越えていく様が感動的。
家を出て本土に行くことを決意するが、旅支度に欠かせない鞄は父の部屋にある。
その鞄を父の部屋にとりに行くシーンが印象的です。もう父は息子を服従させることができない。
無言の地味なシーンですが、それは息子が父の支配を乗り越え、自分の人生を歩みだす瞬間でもありました。
こうして家を出た後、彼は努力の末、言語学の博士にまでなる。
彼自身の自伝に基づく作品ですが、今では再び故郷の島に戻ってきているという。
彼は実在の人ですが、彼のこんな人生もタヴィアーニ兄弟の映画の登場人物らしくていい。