6.恐怖映画として出色の出来。表面的な暴力やセックスを垂れ流すことをせず、
全編が心理的な暴力に満ちている。
この白い手袋をした二人の青年は、人の心というものがよくわかっている。
わかっていながらそれを思い遣るつもりはない。逆手に取って相手を陥れる。
こうすればイライラするだろ?こんなことされれば腹が立つだろ?と挑発し続け、
我慢しきれずに手を出したが最後、「先にやったのはあんた」という子供の理屈を
押し付ける。自分たちへの礼儀だけとりわけ重んじ、少しでも気にさわろうものなら
「気分悪いだろ」ともっともらしい不平を言ってみせる。
この二人の青年は人の心を持ちながら、それを自分たちにしか向けられない。絶望だ。
この絶望たちが、こちらに向かって話しかける、承諾を求める。
彼らは観客の代行者。だって私たちは、わざわざこの映画を観ている。
逃げ惑う人々を殺す類の映画を好き好んで見る私たちの要求に答えるため、彼らは登場
している。ジェイソンやフレディは純粋すぎてもう飽きただろう、僕らがかわりにやるよ、
ってなもんである。そんなことを頼んだ覚えはない、こっちに気安く話しかけるな!
私たちは嫌悪感で拒絶する。でもやはり、彼らが戻ってくることを期待しているんだ。
私自身の悪趣味さを思い知らせてくれる、この映画は貴重な一本だ。