11.《ネタバレ》 晩年の男の人生回帰を、夢のように描いた傑作。夢と幻。その映像表現が素晴らしい。歪んだ時計。針のない時計。シュールな映像。 【にけ】さん [映画館(字幕)] 8点(2019-01-30 22:26:38) |
10.老教授の栄典をめぐる1日を90分余に凝縮して描き、生と死、老い、家族観など人生の機微を散りばめた珠玉の一遍。 人との関わりを避け仕事に集中して生きてきたが、功成り名遂げても心の空洞を抱える老教授。老人の虚無感や孤独感・死への恐れといった内面が表現される。 冒頭の夢のシークエンスはドイツ表現主義を彷彿させるもので、絵画的構図が秀逸。詩的・哲学的でシュールな画づくりは主人公の心理を巧みに視覚化しており、針のない時計は特に印象的で、“死”のイメージを怖いほど漂わせる。 回想シーンは、現在の姿で過去と向き合うことにより、孤独感や後悔の念が滲み出ている。道中における若者たちの生の実感と老人の孤独感の対比も見事。 3人の若者との交流や息子夫婦との対話、心が通じ合った家政婦とのやり取りなど(ガソリンスタンド店主の感謝も重要)を通じて主人公の心理は徐々に解きほぐされる。最後に寝床でみせる表情は孤独や死の恐れからの解放を示すもので、前夜の夢(不安)と対照的な安堵があった。 主人公の内面の変化を通して人生の価値を感じさせる作品。 【風小僧】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-10-16 13:47:05) (良:2票) |
9.《ネタバレ》 「第七の封印」に感動したので本作も観ましたが、「死」を一つのテーマとしたロードムービー的な作品であるところは良く似ているなあと。同じテーマで、異なる結末を描いてみせたという感じでしょうか。印象的な悪夢の描写から始まる不穏な出だしとは対照的に、エンディングでは不思議に暖かいホッとする雰囲気に満たされました。よくよく考えれば、主人公は夢想の中でつらい過去を追体験させられるし、何か困難を乗り越えたり問題を解決するわけでもないし、最後のシーンでは主人公がそのまま老衰で眠るように死ぬんじゃないかってくらいクタクタになってたりするのに、ラストは途轍もないハッピーエンドのように感じました。結局主人公は自分で思うほど孤独な人では無かったからでしょう。私は人生に対する肯定的なメッセージを受け取りました。 【すらりん】さん [地上波(字幕)] 8点(2016-10-08 13:40:25) |
8.自分に厳しく他者にも厳しく。他者の弱さを受け入れられない。他者の為に尽力することが出来ない。過去を顧みて後悔に苛まれるのは老境に入り「死」の恐怖を自覚したから。身につまされるものがありました。どんなに遅くとも後悔したからには残された時間をどう生きるのか、救われるラストシーンに励まされます。 |
7.映像が秀逸(特に序盤の夢のシーン)で、かつストーリーにも深みがあり心に残る映画でした。年をとるほど味わい深くなりそう。 【eureka】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-08-09 20:42:01) |
|
6.冒頭のシュールなシーンが頭に焼きつく。二元論をうまく使ったストーリー構成、映像の美しさ。ロードムービーとすることでさらりと流れていく。観れば見るほどジワジワと味わいが増す映画である。 【円軌道の幅】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-04-19 22:51:00) |
5.《ネタバレ》 冒頭のあの夢のシーン、何とも恐ろしく強烈な印象を残す。映像によるインパクトの与え方に関してこの監督は上手い。主人公である老医師が最初に見る自分の死体の夢の怖さとその後、野いちごを見つけてかつての婚約者を思い出し、若い頃の自分と現在の老いた自分とを比較し、人生は辛いことの方が多いけど、年老いて初めて解る楽しさに何だか見ている側に対しての監督からの人生は素晴らしいものであるという熱いメッセージのようなものが聞えてきて考えさせられる。それにしても夢のシーンの使い方が効果的で幻想的な映像美と深みのある白黒のコントラストによる映像美はこの監督の映画のどれもに共通して言える。そして、出てくる若い女性も何とも魅力的である。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2008-10-26 21:59:39) |
4.ベルイマン監督作品は観ていて辛くなったりしますが、本作はすっと主人公イサクの気持ちに入り込むことが出来ました。 老人と若人の対比が良いです。 そしてはっとするほど美しいモノクロ映像に舌を巻きました。 聞いていてこちらが辛くなるようなセリフもあるのに、終わったときにはほんのり癒されていました。 質の高い本作に拍手を送りたいです。 【たんぽぽ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-05-18 22:08:25) |
3.50年代の作品だったのでまずは斬新な象徴的シーンにビックリ。回想中に現在のイサクを登場させる手法も今でこそ度々目にしますが当時は珍しかったのではないでしょうか。 イサクは利己的な人物であったという設定ですが、名誉や地位などとは別にガソリンスタンドがあった町の人々ように彼を慕っている者も登場させていますし、イサクの周囲の面々にも多少なり利己的な面があるように見えます。つまり誰だってイサクのようになりえるかもしれないし、事故を起こした夫婦のようになるかもしれないし、イサクの息子夫婦のようになるかもしれない。僅かな事の差で人生は変わってしまう。でも僅かだからこそ自分自身で変える事もできる。しかしその僅かな事が難しいから人間は後悔する。冷たい雰囲気の中、イサクに好人物の印象をもたせることによって決して否定的にはせず、人間には欠点があるけれどそれでも自身を見つめればそれで良いのだという温かいメッセージを感じました。 【ミスター・グレイ】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-06-17 11:51:44) (良:1票) |
2.名声を得た老医師が式典へ向かうまでのロードムービーと自身を振り返り自らを罰する追憶のロードムービー、この二つのロードムービーの絡みぐあいがホントにお見事。同乗する若者たちの屈託無く感情を表に出す姿にそれまでの孤独な生き方に人生の虚無を感じてゆく。そして夢を通して、これまで人との距離を置き大人の対応をしてきたがそこに愛は無くまわりの人たちを傷つけてきた自分を心の深層から引っ張り出す。現実のシーンが無駄無く夢に投影され、夢が現実に影響してゆく。で、その夢のシーンがまた素晴らしい。人生を振り返るきっかけとなる死への不安を意味する冒頭の夢も衝撃的だが、昔住んでいた家に寄り、当時を回想するシーンでその回想されたシーンに現在の自分がいるという斬新な作りにもびっくり。W・アレンよりはるか以前にやってたんですね、凄い! 【R&A】さん 8点(2004-12-24 12:08:48) (良:2票) |
1.冒頭のイサクのみる夢のシーンのなんと素晴らしい事か、いろいろ解釈できそうな展開が見る者の興味を引き続ける。そして誰もが感じるであろう、主人公イサクの孤独感、感情移入しやすい環境をすんなり夢の形で表現するあたり、さすがベルイマンといったところ。孤独感を今を生きる青年たちと対比させる手法も実にスムーズに進行する。孤独を愛すイサクが青年たちとの交流を通し、自分の生き方、考え方が次第に変化していく過程を見事に表現した傑作。 【ゆたKING】さん 8点(2003-09-03 16:34:47) (良:1票) |