1.いや、ヒドい作品だ、ってのは、わかってるんですよ。というか、こないだ見た際には、あれ、ここまでヒドかったっけ、とちょっと驚きました。
そういや、TVジョッキーのガンバルマンのコーナーで、この映画もシーンに倣ってたけし軍団の面々がロープで股割きやらされてたよなあ。とか、どうでもいい記憶が、蘇りつつ。
いかにも80年代低予算映画のノリ。音楽もチープで、わざとやってるんじゃないか、と思えてくるぐらい。いや、当時はこれがフツーだったのであって、今見ると改めて、いやあ、ヒドい。
達人に弟子入りしたらあっという間に強くなる、というストーリー展開がこれまた安直、なのでは無くって、そういう安直な『ベスト・キッド』をパクろうというのが、実に安直。まさに安直の二乗。
若き日のジャン=クロード・ヴァン・ダムが初々しい、というより完全にイモ演技。驚いた際の演技なんて、完全にコメディ映画のソレ。この人もしかして、バックトゥザフューチャーのマイケルJフォックスを見て演技の勉強をしたんじゃなかろうか、と思えてくるぐらい。まあ、それでもいいんですけど。
しかししかし。
チープな作品ながらも、ちゃんと(本当にタイなのかどうかは知らんが)タイっぽい場所でロケ撮影してる。これは、素晴らしい。もっとも、最初の方、公園でキックボクシングの練習をする場面なんぞ、いやさすがにもうちょっとちゃんとした撮影場所なかったものかと思えてきます。まあ、主人公兄弟がまだ気を抜いている、ということを表現したかったのかも知れませんけれども、しかし何だか、「ではこの辺りでお弁当にしましょうか」というノリで「ではこの辺りで撮っときますか」と手っ取り早く撮影したかのような。でも多くのシーンは、ロケの効果がしっかり出てます。特にあの、寺院跡みたいな場所。なーんか、エキゾチシズムを感じさせるだけではなく、ああ、この国では遠い過去から戦士たちが戦ってきた歴史があって、その無数の戦いの上に今、この主人公が居るんだな、と。
でもって、クライマックスの試合における、ヴァン・ダムの肉体美。実に実にお見事。スローが多用されている分、スピード感は損なわれがちだけど、それを補って余りあります。スロー映像に耐える、この筋肉。スロー映像の中で、松明の炎も幻想的に揺らめいて。
まさかまさか、こんなチープな映画に、神が舞い降りた瞬間かと。
ところでヴァン・ダム、ダンスが上手いですね。いえ、お世辞ではありません。イヤミです。