2.《ネタバレ》 20年以上前に10作品以上見た記憶だけは残っていて、私のイメージでは「関所破り」が最高傑作だと思っていましたが、初カラー作品である本作3作目はやたらと素敵でした。続けて見た4作目(座頭市兇状旅)もなかなか良かったのですが、本作「新・座頭市物語」のほうが頭一つ抜き出ていたと思いました。
深い感銘を受けたのはきっと私自身が年齢を重ねて感受性が変わったためだと思われますが、しかし大人になって冷静に見返してみると、本作や次作(座頭市兇状旅)ではやたらと市の心情を表現したシーンが多いことに気づきます。勝新が監督した89年版のメイキングでも女の子にしきりに感情指導していましたので、おそらく勝自身が”哀しき孤高の盲目ヤクザ”の内面を演じたかったのでしょうか。とにかくこの心情表現が素晴らしい。
ベタな展開ながら師弟関係(河津清三郎)と天狗党の一件も非常に面白いし、師の妹(坪内ミキ子)に惚れられる展開もシンプルで良いです。なんだかんだと市はよくモテます。因果応報で安彦の島吉(須賀不二男)に執拗に追われる展開も綺麗な結末を見せるし、その後の市の心情を揺さぶる流れもよく出来た展開でした。兄の本当の姿を目撃して見せる弥生の表情も素晴らしかったのですが、極悪人である兄が死に、その兄を斬った市も去って行く流れは少し可哀そうではありましたね。
さりげないシーンですが、幼馴染みに「イチタさん」と呼び止められます。おそらく座頭市の本名が判明する唯一の回ではないでしょうか。