6.《ネタバレ》 前回からの続き、所長の「今は戦時中だ。平時の道理は通用しない」にあらわされている通り、倫理観、人道的行為そのほかすべてが意味をなさない異様な状況、それが戦争。 それを象徴するかのような、残酷な結末。 そして同胞が加担しているとも知らずに一方的に「日本人の鬼め!」と ののしる滑稽さ、一方で加担していることを隠してさも平然としているつらの厚さ。 しかしすべて「そうしなければ生きられない」という本能がさせたもの。非常に考えさせられる作品でした。 【クリムゾン・キング】さん [DVD(邦画)] 8点(2021-08-23 01:34:51) |
5.捕虜脱走だけであれだけ話を保たせるというのも、たいしたもの。第一部より面白かった。王享立の存在感、渡合の悪辣ぶりが強烈でした。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-09-29 17:21:13) |
4.《ネタバレ》 シンドラーになりきれない梶さんの葛藤。処刑を前にして、「7人を逃がしてやる」と駆け出す梶。「あなたが殺される」と必死で止める妻の美千子。しかし少し落ち着きを取り戻すとやはりどちらも人間だ、美千子は判断を梶に委ねるし、梶は梶でやっぱり行くことができない。板ばさみになって、憲兵から拷問を受けたかと思えば、今度は中国人からも恨まれる。そんな悲劇の物語。 【リーム555】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-04-29 13:08:14) |
3.《ネタバレ》 前作に引き続き、2日連続の観賞となった第2部はこれまた見ていて腹が立つ。同じ日本人として、これほど腹の立つことはない。梶(仲代達矢)の言葉に耳も傾けない三島雅夫の黒木署長に中国人捕虜との喧嘩の末に負傷したことは中国人捕虜達が脱走しようとした事を止めたからだと嘘を言う小沢栄太郎に脱走を企てることを吹き込み、陣(石浜朗)を罠に嵌めて殺させた三井弘次にも腹が立ち、出来ることなら奴等三人こそ処刑されるべきだと言いたくなるぐらい許せない思いでいっぱいになる。この三人を更に上回る許せない奴がいる。それは安部徹の渡合である。こいつが自分の名誉のことしか考えず、脱走兵とされた七人を処刑しようとする。ここで2人が先に首を斬られ殺される。そこで処刑の立会人を命じられた梶が命を張ってこれ以上は殺させないとはむかうシーンでのそれを見て他の中国人全員、宮口精二の王亨立の掛け声と共に立ち向かうシーンに感動せずにはいられないと共にもう少し早ければ2人の命も助けることが出来たのにという梶の表情が何とも切なくて、やりきれなくなる。梶と美千子の心の葛藤も1部以上に苦しみを感じさせる仕上がりになっていて、とにかく切なくて悲しくて、高を殺された悲しみ、恨みを梶にぶつける有馬稲子の演技もこの映画の全て、中国人から日本人への強烈なメッセージとして観ることが出来る。全てにおいて、とにかく重くてやれきれない映画であるが、けして、眼を背けてはならない真実、人間としてのあるべき姿を考えさせられる映画として見応え十分!この後の話も絶対に見なくてはという気持ちになってきた。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-01-27 21:06:18) |
2.第1部では重い内容の中でも梶が妻といるシーンだけは雰囲気が和んでいたが、この第2部ではその二人のシーンすらも重くなり、梶が人間として苦悩する姿など第1部に比べて見ていてかなり辛い。高をはじめとした脱走を企てたとされる捕虜たちが処刑されるシーンは直接的な残酷な描写がないにも関わらずショッキングに感じた。それでもほとんどが重々しいシーンばかりの辛い内容なのについ引き込まれてしまうのは第1部に続いて完成度の高い作品という証拠だろう。この第2部では梶の妻・美千子の悲しみがよく描かれており、また演じる新珠三千代もその悲しみをうまく表現する名演を見せており、素晴らしい。以前、小林正樹監督が男性的な作風の監督であると何かで読んだことがあるが、この作品の美千子を見ていると、やっぱり脚本担当の松山善三共々木下組出身ゆえか女性の描き方もうまいと感じる。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-06-04 20:34:47) |
1.《ネタバレ》 この映画の世界は、一人梶の腕で支えられているのだろうか?昔原作でこの作品を読んだとき、僕はひたすら梶に熱中して読んでいた。その見方で行けば、美千子は梶の付属でしかなく、梶の心の支えとなり、迷いとなり、原動力となるその存在であった。しかし、ここで美千子を生身の女優が演じていることで、美千子が俄然存在感のある登場人物として輝きだす。美千子にとって梶とは全てであり、その尽くすべき愛すべき相手であるのに対して、梶にとっての美千子は何だったのであろうか?生まれながらの羊飼いの番犬に、その仕事以外は必要ないのであろうか?この作品を通して現れる梶の不器用さ、先に”愚”という文字がくるほどの愚直さ、ある種のペシミストぶり、さらにスーパーマン的な万能な才能は、時間が経つにつれて美千子から梶を引き離してゆく。これこそ美千子を主役とした悲劇である。この映画の中で残念なことは、原作にある王享立の手記がカットされていることである。梶と王享立という「人間の隣りの人間」の関係性がはっきりと描写されず、何故に梶がそれほどまでに王の主張するヒューマニズムに感化されていくのかがわかりにくい。飼い主に歯向かい始めた梶の行動が、正義感という一元的な感情ではなく、自尊心や戦争に対する悲観や、独善的な生への渇望とない交ぜになったところをもう少し見て取れたらなと思う。今回のキーとなる岡崎の心の動きは良かったと思う。彼の平衡感覚と、正直な恐れや嫌悪感、反抗的意志は、これからの梶と比較する上でいいインデックスとなるのではないか? 【fero】さん 8点(2004-01-17 18:00:33) (良:1票) |