33.《ネタバレ》 日本の民話「天女の羽衣」や、デンマークの「あざらしのお母さん」を思い出す。男が異形の女に惚れて結婚し、相思相愛にもかかわらず妻は夫の元を去っていく。天女もあざらしも、天や海に帰るために必要なアイテム、羽衣や毛皮を見つけてしまうのがきっかけだが、マチルドの場合は、夫との些細な喧嘩がそれにあたる。幸いすぐに仲直りができたからよかったものの、今後、どんなトラブルに見舞われて夫婦生活に亀裂が入るかわからない。仲の良い夫婦生活をずっと続けていきたかった彼女は、大きな不安に襲われたのだろう。アントワーヌと同じくマチルドも彼に一目ぼれしたのだと思う。容姿の好みや性的嗜好も完全に一致した夫婦は、はた目から見ると羨ましい限りの幸せぶりだ。それなのに、妻は入水してしまう。映画では多くは語られなかったが、結婚するまで孤独を愛してきたマチルドは、過去に悲惨な性的虐待を受けた、あるいは愛する男の子供を堕した経験があったのかもしれない。膨らみようのない腹という言葉からも、不妊のにおいがする。彼女の寂しそうな笑顔は、常に秘密を抱えているせいだ。過去を一切語らない妻を、夫アントワーヌは丸ごと愛して子供すらも欲しがらなかった。マチルドは、そんなアントワーヌにいつか愛想をつかされることに、死ぬほどおびえていたのだろう。民話の哀しい妻のイメージが、どうしても彼女について離れない。アントワーヌも、マチルドも、深く心にしみこんだ。 【tony】さん [インターネット(字幕)] 8点(2018-04-13 22:46:31) (良:2票) |
32.《ネタバレ》 少年の初恋は、美容室に勤める太った大人の女性でした。汗ばむ女性の匂いや、どこかエロティックな雰囲気は、少年にとって性的な魅力に溢れていたのです。時がたち、少年は初老の男性となりました。ふと立ち寄った美容院で昔の記憶が甦ったのか、そこで働く若い女性に恋をしたのである。フランス人らしい語り口で口説き、結婚することになります。男は店で何をするわけでもありません。妻の働く姿をただ見つめるだけである。でも妻は夫がそこにいてくれるだけで幸せなのだ。日本でこんなことをすれば、どやされるのがオチである。一週間でいいので、こんな夫婦生活を体験してみたい。閉店後は二人だけの時間。毎晩激しく愛し合います。ある嵐の夜、いつものようにセックスに耽っていたが妻はふとこの愛が終わるときのことが頭をよぎります。恐ろしくなったのか、家を飛び出しそのまま命を絶ってしまいました。悲しい思いをするくらいなら死んでしまった方がまし。これは日本人には到底理解できない、究極の愛の形である。ラストも重い雰囲気になることなく、爽やかに終わらせるところはさすがフランス映画。日本の周りの迷惑を考えず、二人でセックスしながら毒を飲んで心中を図る某不倫映画とは大違いですね。 【スノーモンキー】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-01-14 23:37:16) |
31.人間の深層に隠され、自分も知らないことを表現されたとき、面白く思える人と、そうでない人に分れるのでしょう。 【cogito】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-08-02 09:21:47) |
30.あぁ。俺って、自分の求める愛なんて今まで知らなかった、形はどうであれ人生というものの琴線にも振れてなかったなんてこぼしたくなる映画だ。 【min】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-09-17 21:35:36) |
29.《ネタバレ》 出だしから良い映画の予感がし、その通り素晴らしい映画だった。 これ奥が深いよ、御主人の自己流ダンスは別として(素晴らしく笑える動きだったけど・・・) 孤独だった故にストレートな愛で迫るアントワーヌの愛を受け入れ、愛されるマチルド。 そして、この上なく幸せ過ぎる日々が余計に怖いが為にとった“あの行動”・・・ この辺は『ねぇ、約束してちょうだい 愛してる振りだけはしないで』というマチルドのセリフと常連客の段々背中が曲がっていくと感じた老いへの不安から見て取れる。 主人公アントワーヌは、子供の頃からの夢を実現し羨ましくもある(例え、それがどんな夢だとしても) 世間一般的にはダメ男ですけど、そんなことはマチルドには全く関係ない訳です。 愛し続けてくれさえすれば・・・ よく恋愛と結婚は違うというけど(事実、身をもってそう思う)、ひとつの理想形でもあると思えた・・・“あの行動”以外は。 そういった辺りが、いちいち私の琴線に触れ忘れられない映画になりそうです。 【ぐうたらパパ】さん [インターネット(字幕)] 8点(2013-06-23 05:34:49) (良:2票) |
28.《ネタバレ》 結婚生活とは何か? 本作の定義は、好きな人と好きなだけ好きなことをヤルための環境整備です。モチロン、目的は下半身の欲情を満たすこと。子孫の繁栄や子育てに対する興味など、これっぽっちも視野に入っていない。エンディングでは、その愛欲関係に賞味期限まで設定してしまう。危険な空気を孕んでいますが、もの凄く真っ当な解釈のひとつだと思いました。 「バニラ味のレモン」とは、主人公が幼い頃に嗅いだ豊満な理髪師の体臭だったのだと思います。そこには、肉欲への憧れと共に儚い死の予感が同居していました。年老いて優しさだけが残る関係は嫌だと書き残して、彼女は死んでしまいました。あの時、すでに下降線に入っている自身の、あるいはお互いの肉体の「バニラ味のレモン」が、死の方向へ傾いてゆくことを実感していたのだと思います。 世の中の夫婦は愛欲関係が無くなっても、普通は結婚生活を維持しますが、ここに描かれるのは性交の切れ目が結婚の切れ目という夫婦です。この10年は刹那的だったのか、それとも十分な蜜月だったのか。こんなテーマの映画は観たことがありません。欧米に比べて、早々に交渉が無くなると言われるニッポンの夫婦には理解しがたい映画なのかもしれません。 本作の面白いところは、このAV的、あるいはロマンポルノ的な結婚解釈をお上品な文学調にまとめたところではないでしょうか。私は共感しましたよ、結婚していないからだと思いますけど。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-12-01 21:33:06) (良:2票) |
【Balrog】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-05-02 08:56:23) |
26.《ネタバレ》 以前見たときは評判通りの良さを感じ取れなかった映画だが、改めて見ると今は逆に評判以上の良さを感じる。10年の歳月はこうも変わるものか。 映画の中の二人も結婚して10年、変わらぬようで天井のヒビが二人の愛の行方を暗示していた。いつかは老い、いつかは消えてしまうだろうと・・・。 突如の夕立に、妻は「あなたが先に死んだり、私に飽いてしまう前に・・・」と書き残し、身を投げてしまう。これが10年前の私にはまったく受け入れられないことだったのだが、今はそういう愛の表現もあるのかと・・・。 ところで、髪結いの亭主なる言葉、日本にも西洋にもあるのだと改めて痛感。ただ違うのは、こちらではまったくのヒモみたいな意味だが、この映画ではそういう低俗なものではなく、文字通りの理髪師の旦那。 理髪師夫婦は日夜生活を共にできるうらやましい職業、仕事はもっぱら妻任せと思ったら、亭主にもちゃんとした役割があった。あの奇妙なるダンスで和ませ、むずかる子どもさえ魔法にかけるという仕事。 この映画の奇妙なダンスを支える音楽がまたすばらしい。すばらしいはず、マイケル・ナイマンだ。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-06-18 09:31:25) (良:1票) |
25.美しい映画だった。熱烈な恋程、悲しくなる。どうしようもなく、切ない映画だった。 【ホットチョコレート】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2009-02-01 18:11:46) |
24.《ネタバレ》 深刻ぶらず心地よさだけを求める事を信条とする表面上の穏かさとは裏腹の激しい心情を持つ夫婦の朝も昼も夜も離れずに暮らす10年の歳月。客は「今は魅力でも何時か消える、魅力を感じなくなったら他のを探すだけ・・・」と語ります。苦楽を共にする、表裏一体の愛憎。これらの心地よくない部分を受け入れる事を拒否した女房の幕引き。残された亭主の佇まい。浮世離れしたお伽噺にほろ酔い加減の心地よさとほろ苦さを噛み締める作品でした。 |
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23.《ネタバレ》 おじさんがとても面白かった。 ダンスしているときにとても良い動きをしていた。 お店の雰囲気が素晴らしい。 暖かくて静かで、時間が止まっているような感じ。 そこはまるで、周りとは切り離された別の空間。 柔らかな明かりを取り入れて、それがお店の様々な物に反射して、とても奇麗な色合いを出していると思いました。 コロンって飲んでも大丈夫なんだ。 最後がどうしても意味がわからないんだけど! でもお洒落な作品でした。 【ゴシックヘッド】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-12-04 02:07:41) (笑:1票) |
22.《ネタバレ》 官能的で、突っ込みどころ満載なステキ映画。どうして美容室で寝起きにプロポーズしているのか、そして奥さんもなんで受けるのか。毛糸の海水パンツって?真夜中の香水カクテルパーティーって?そのダンスはなんだ?そんな疑問をふっとばし、ひたすら愛とロマンな映画。まさにフランス映画!といいたくなるような、ミステリアスとエロスをしっとりと漂わせた映画。ところどころで笑ってしまうのに、最終的に切なくて泣けてしまうのだからズルイ映画だ。 【リュカ】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2007-07-28 10:33:23) |
21.あぁ・・・・良いラストだなあ、っておもった。こんなに愛せるなんてすごいです。ストーリーをさしおいても、マチルダの服かわいいし、店内の色使い、インテリア、そして全部がセクシーにきこえるフランス語などなど・・・・みていて、きいていて、楽しい。いい映画です。 【ギニュー隊長★】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-05-28 22:36:03) |
20.官能的です。シュールです。 たぶん好き嫌いがはっきり別れる映画だと思いますが、 私はこのおフランス的?な空気にはまりました。 外出もしない、友達も作らない、 ただただ2人だけの暮らしに浸る美容師の妻と夫。 穏やかすぎる時間の中で、小鳥のようにさえずり、踊り、 ついばみ合う。 微笑みだけが彩りのような日常が、ある日バッサリ断ち切られる ラストが衝撃的です。 【Rei】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-08-29 17:34:04) |
19.《ネタバレ》 これぞおフランスの本領発揮ともいうべき妄想万歳描写と官能性。少年期の妄想をそのまんま大人になって実行してしまいましたという設定だけで勝利。また、ウェディング・ドレス姿で客の髭を剃るというシュールすぎるカットなど、演出のフォーカスが明確に絞られているのが、作品に引き締め感を与えています。 【Olias】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-12-25 01:38:30) |
18.何の予備知識もなしに深夜テレビで偶然みました。 フランス映画はすごいと思いました。 【TU】さん [地上波(字幕)] 8点(2005-12-24 04:16:10) |
17.奥さんの決断も理解できないが、だんなさんが働かないで座っているだけというのもまた理解できない。働け働け。あるいはあんな夫だから奥さんは何かしら自殺に追い込まれていたのかも知れない。理解できないゆえの切ない深みがある。 |
16.ルコントの作品の中では1番好きです。 理想の女を追い求め、手に入れた主人公ですが、 相手は幻想の中にいるのではなく、もちろん生身の女。 それに気付く前に相手が死んでしまった主人公はある意味 幸せなのか、それとも幻想を捨てても生身の女と向き合えた 方が幸せなのか。 音楽と映像がぴったりと合った傑作だと思います。(ビデオ) 【なみこ】さん 8点(2004-08-14 15:11:03) |
15.今までルコント作品は「橋の上の娘」をTVで観ただけだったのですが、あまり観た事のないタイプの作品で素直に楽しめました。「観る」というより「味わう」、いやむしろ「酔う」作品でしたね。マイケル・ナイマンの音楽がすごくマッチしてたし、官能寓話、とでもいうのかな、こういうの。あんまし現実的に考えないで、それこそ「鶴の恩返し」とかを読むように見た方が楽しめる気がします。 【ぐるぐる】さん 8点(2004-06-07 16:36:14) |
14.《ネタバレ》 「嵐(rage?)が来るわ」の台詞や赤みの強い画面が印象的でした。『仕立て屋の恋』と同時期に製作されたとのことで、一組でみると確かによい気がします。 【its】さん 8点(2004-01-05 00:22:01) |