1.《ネタバレ》 アレンらしい映画で確かに面白いと感じた部分はあった。ウィル・フェレルはアレン好きの人なら特に賛否両論あろうかと思うが、往年のアレンの演技やセリフが思い出される。その点だけでも良かった。サル真似かもしれないけど別に悪くは無いだろう。コアなアレン映画ファン以外ならば、充分笑いは取れる演技だ。
人物の描写という点についても各々のキャラクターには「性格」が設定されており、それぞれある程度の悩みを抱えているために深みが増しており、好感を持てた。
そして何よりも、この映画のセリフが非常に良い。美しいセリフには酔いしれた。
本作は、悲劇編と喜劇編の二つのストーリーから成り立っている。
この手法は「スライディングドア」を思い出される。グウィネスの髪形などに気を配り、二つのストーリーが混同しないように細心の配慮がされている点に好感が持てた。
一方、本作でもメリンダの表情や髪型などで分けていたし、そもそも出ている役者が違うので混同しようはないかもしれないが、観客に対する見せ方としては、あまり上手くはないような気がする工夫が足りない。バーで飲んでいる4人(「ブロードウェイのダニーローズ」が思い出される手法)の会話をもう少し論点を分かりやすくした方が観客には良いだろう。
この映画に賛辞を送れないのは、結局この映画で何がやりたかったのかが自分には伝わらなかったということ。確かに「人生は短い」というメッセージは伝わるが、人生は果たして悲劇なのか、喜劇なのかという答えがない。この問題に対する答え自体がないことは知っているが、考えるためのイントロダクションにもなっていないと思う。昔のアレンだったら「人生が悲劇的であってもいいのではないか」という皮肉的な答えを出したかもしれない。
さらに、二つのストーリーの対比が上手く描けていないために、何のために二つのストーリーがあるのかという根本的な部分がクリアにならない。「重罪と軽罪」のような明確な対立軸が必要だったかもしれない。
また、どちらのストーリーのオチもあまりよろしくない。特に喜劇編に対してはいくらなんでも強引かな。「スコルピオンの恋まじない」くらいに描くのならまだしも、メリンダには恋人もいるし。病院に連れて行ったときに前フリをいれて、さらにメリンダがローブの切れ端を拾いあげて少し悩むくらいのカットがあれば多少の前フリにはなったかなと思われる。