25.《ネタバレ》 まるでドキュメンタリーのように描かれる淡白な演出は、堕胎という深刻な問題を扱っている故か。キリスト教が重要な立ち位置を根強く残す時代、ごく普通の中年女性が善意で行っているそれは、倫理的に許されるものではないが、性暴力による望まぬ妊娠であるものなら、妊娠した女性も生を受けてしまった子供も不幸になるだけだろう。その命に価値があるか否か、綺麗事で片付けられないことをヴェラ・ドレイクは理解しているかは分からないが、罪に対して無知だとしても救いたい気持ちは本物なのだろう。奇跡が起きるわけもなく、法は容赦なく彼女を裁く。彼女の帰りを待ち続ける残された家族のショットが善意の対価、喪失の大きさを突き付ける。現在でも女性蔑視の構図は変わらないまま。老いを受け入れたような達観さのあるイメルダ・スタウントンは名演。 |
《改行表示》24.重い題材の割に、主演女優の人柄のお陰で、比較的サラリと観れましたが 最後はもう少し、主人公にも家族にも余韻を映す時間が欲しかったように思います。 【昭和の代表】さん [DVD(字幕)] 6点(2017-12-07 21:48:10) |
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《改行表示》22.ごく普通の、いえいえ、おそらくは超の付くぐらいの主人公は善人でしょう。舞台となった時代が悪かった、最初の判例としていい見せしめにされたにすぎない余りにもかわいそうで不条理な刑に気の毒としかいいようがありません。 【白い男】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-01-27 21:54:55) |
《改行表示》21.《ネタバレ》 1950年の英国では堕胎は非合法だった。人工妊娠中絶は、医師が判断した特別な場合に限られ、それも相当な高額費用を要していた。(映画の中でも親に内緒で100ポンド用意した女性が医師に泣きついていた)従って貧乏で医師の所へ行けない女性は、ヴェラのようなもぐりの堕胎に頼るほかなかったのだろう。 ヴェラは金儲けで堕胎をやっていたわけではない。年老いた母をいたわり、孤独な住人は訪問したり、家に招いて夕食を共にする。困った人をそっとしておけない善意の人でだった。だからと言って許されるはずはなく禁固刑になってしまう。 映画はこういう実態を暴いた社会派映画ともとれるが、私は人間愛に着目したい。彼女が行ったこと、彼女の行為を知った者の接し方などなど・・・。考えさせられる映画でもある。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-04-06 18:36:01) (良:1票) |
20.ちょっといまいちでした。後半にかけて淡々としすぎて、何を強調したいのかがよく分からないです。観るのが早すぎたのでしょうか…。無理に社会派映画にする必要はなかった気がします。家族のキャラクターが活かしきれていないと思いました。イメルダ・スタウントンの演技が高評価ですが、あまり来ませんでした。何というか…主張がないというか…近所にいそう。 【色鉛筆】さん [地上波(字幕)] 3点(2009-02-11 21:19:18) |
《改行表示》19.《ネタバレ》 軽妙なテンポで喜劇的な要素すら感じさせる前半(喩えとしては不適切かもしれませんが「必殺仕事人」を思い出してしまいました)とひたすらシリアスな後半のギャップが非常に印象に残りました。 しかしまあ、この重いテーマをここまで上手く料理してしまうマイク・リー監督の手腕はお見事としかいいようが無いですね。余計なナレーションや説明書きが無くても、ストーリーを追っていくだけでほぼ理解できるようになっているのですから。ラストのまとめ方も巧かったです。 【TM】さん [DVD(吹替)] 8点(2008-11-06 16:18:09) |
18.《ネタバレ》 男が作った社会の中でどうしても犠牲になってしまう女たち。その時代の社会がどうであれ、社会と程よく付き合っていこうとする人間ほどヴェラを凶弾する。取調べに当たった二人の警官の態度の違いがそうであり、息子と娘の態度の違いがそうであり、旦那の弟とその妻の態度の違いがそうである。最も分かりやすいのが裁判官の言い渡す重い判決。ヴェラが寸分違わない善行の人であることは時代背景をよーく理解しないと納得してもらえないところかもしれないがマイク・リーはその時代性をさりげなく語っている。ここはドラマ成立のために手を抜けないところなのだが、ドラマの成立に反比例して映画は退屈になってゆく。全体的に暗い色調は伝統的なイギリス映画臭と同時に暗雲とした結末を予感させるのだが、退屈に感じているうえに暗いとなったら、もうお手上げ。ただ、イメルダ・スタウントンの涙にはやられた。まるで自分の母親が泣かされてるような感覚を覚えた。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 5点(2008-07-31 14:52:59) |
17.《ネタバレ》 時代背景によって法律的な罪と人間的な功罪が一致しないことを、一人の善人の視点で描こうとした?娘の結婚や弟夫婦のエピソードとの絡みなど、正直よく分かりませんでした。 【ハラミ定食】さん [DVD(字幕)] 4点(2008-02-11 01:11:12) |
16.《ネタバレ》 警察が家にやってきたときの、天国から地獄に突き落とされたようなヴェラばあさんの顔の表情がじつに痛快でした。蚊も殺せないような、ぶりっ子ばあさんが、無知であるがゆえに大罪をおかしました。けっきょく本人は最後まで罪にたいして無自覚だったのではないでしょうか。といっても私はヴェラが悪いとは思っていません。悪いのは盛りのついたオトコどもなんです。女性を性の道具としか見ていない厚顔無恥なオトコは全員加害者です。そしてすべての女性は被害者なのです。吐き気がするほどクソッタレのオトコ社会で生きていかなければいけない女性の立場はよく分かります。いつの時代も女性はオトコに虐げられている。だからこそ本来は戦わなくてはいけないのではありませんか。ヴェラの行動はバカなオトコの行動を容認しているようで赦しがたいのです。しかも自分がナイチンゲールのように人を救っていると自己満足しているのです。裁判シーンのヴェラの態度は歯がゆい。私が裁判官だったら、ばばあ早く喋れ、と罵ったでしょう。しくしく泣いているヴェラが、少女のような可憐さを装っているように見えて私は閉口してしまいました。こういう浅はかな女がいるからオトコが調子に乗るのだと思います。もしヴェラに本当に罪があるとするならば、それは破廉恥なオトコどもを図にのせた罪ではないでしょうか。どうせならば中絶させたオトコを脅迫して身包みをはがすような罪だったら私はヴェラを拍手喝采したでしょう。偽善者はいつの時代も醜いものです。戦わずして女たちのジハードは成立しません。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-11-15 19:46:04) (良:1票) |
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15.《ネタバレ》 いろいろなことが起こるわりには最後までテンションの変わらない映画だった。実際にはものすごいことしているんだけど、それを日常に溶け込ませて描いた監督とヴェラを演じたイメルダ・スタウントンの演技は今思えばよくできているなと感心する。最後、同じ罪の囚人との会話で、ヴェラはどのように考えたのだろうか。お勤め後も再び娘さんを「助ける」のだろうか。 【おっちょ】さん [DVD(字幕)] 5点(2007-08-24 00:33:38) |
14.淡々と怖い話が進んで行きますね。この映画に決定的にかけているのは「主張」だと思います。ラストもあれっって感じで終わっちゃうし。淡々と描いて淡々と終了しました。これでは私は納得しないんだけど皆さんどうだったんでしょう?私は望まれない生を受けるのはやはり保護者も不幸だし子供も不幸になるのでないかと思います。 【たかちゃん】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-07-12 12:19:07) |
13.《ネタバレ》 ラストだけ見れば倫理的に判断の難しい問題に取り組んだ社会派映画ということになりますが、途中までは家族ドラマとして十分見応えがあったので、そのままドラマで終わってくれれば、と、個人的にはちょっとだけ残念。ただ、この映画への私の評価はイメルダ・スタウントンの素晴らしい演技に与えるものであり、話の内容はもうなんでも良いかも。レビューとは関係ないですが、私の亡くなった祖母に表情がどことなく似ており、ちょっと泣いてしまいました。 【あおやん】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-02-11 06:35:45) |
12.《ネタバレ》 監督さんがヴェラをどう描きたかったのか分からないが、少なくとも自分には彼女は「いい人」というよりは「アブナイ人」に映った。何を考えているのか読めない。義弟の妻が「あんな自分勝手な人」とヴェラを忌み嫌っていたが、自分は常に正しく、周囲を幸福にしていると信じて疑わないヴェラの姿には、道をもう半歩誤っていたら、独善的なシリアル・キラーになっていそうな危うさを感じた。あのタイミングで捕まった事は、誰にとっても幸福な事だろうと思う。「人間は良い事をしながら、悪い事をしているものよ……」この映画を見て、池波正太郎の鬼平ならしみじみそう言うだろう。関係ないけど、イギリスの下町訛りは心地良い。 【C-14219】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-02-03 23:04:14) |
11.《ネタバレ》 人を助けようとしてしていることが罪になってしまう。何が正しくて何が悪か、その時代の倫理観によって違いますが、宮沢賢治の「ホモイの火」のようにヴェラは悪いことをしているのではないと思いながらもしていたのに、罪を犯していることは気がついていました。悪と罪の違いは難しいです。ヴェラ逮捕後の行き場のない家族が集まったクリスマスで、ヴェラの娘の婚約者が言ったひと言にジーンときました。他人を思ってしたことで刑務所にいるヴェラよりも、物欲にそまったヴェラの夫の弟の妻の方が哀れに思えてしまいました。 【omut】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2006-12-31 04:15:53) |
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9.《ネタバレ》 前半に豊かではないが幸せな家族を思う存分描いていて、後半にヴィラの罪を描く。分け隔てなく人に接し、よく働く善良な主婦が、実は中絶を手助けしているという対比。敬虔な(プロテスタントだとは思うが)信者であるヴィラには宗教的にも大罪を犯している。1950年を設定としていることから戦争での死と中絶によっての死も対比して描いていると思う。この時代、まだ女性の力が弱く中絶の原因は男性の身勝手さから来ることが多いのに、中絶を手伝っている母親を嫌悪するのが娘ではなく息子ということも面白い。 【さら】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-05-22 11:00:52) |
《改行表示》8.う~ん 主役のイメルダ・スタウントンの演技に尽きます。 映画自体の題材になっている中絶については、うまく散りばめられているとは 思うけれど、どうも不明確な感が否めない、かな。 それにしてもよくお茶を飲むなー さすが英♪ 【タッカー】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-05-06 19:37:47) |
7.《ネタバレ》 この時代、堕胎は合法ではなかったのだろうなー。堕胎するにはものすごくお金がかかる。スーザンはお金持ちの娘だったから医者で堕胎ができたのだろう。その他の女性たちは貧しさゆえヴェラの言う「助け」を必要とした。子宮の中に石鹸水を入れて流産を促すなんて、怖いな~~~。マイク・リーは生活に根ざした家族の姿を描くのがうまい。舞台がイギリスのせいかお茶やビスケットを嗜む習慣、地に足つけてきちんと仕事をする家族たち、映画を観にいったり散歩をしたりダンスをしたり…。重たいテーマの本作ですが、土台がしっかりしているせいか、穏やかに鑑賞することができた。 【ふぉんだ】さん [DVD(吹替)] 7点(2006-04-20 00:02:33) |
6.《ネタバレ》 ヴェラを演じるイメルダ・スタウントンによる、物語終始に渡って続く「目の演技」は素晴らしい。人を愛する微笑み、逮捕される際の戸惑い、家族を苦しませる時の哀しみ、しわくちゃのおばあさんなのに、なんて表情豊かに見えることだろう。‥‥‥人助けとはいえ、知っていながら法を犯した罪は罪。一番印象的だったのは彼女の逮捕シーンで彼女がつぶやいた「人助けをしました」という自白。罪を犯したと分かっていながら、家族を傷つけることを恐れて「罪をおかしました」という言葉を使わなかった彼女の切ない言い逃れは、人が良く気が優しい善人である筈の彼女の人格の全てを象徴しているように思えた。‥‥‥この映画を観た方に伺いたいが、望まない妊娠で死にかけてヴェラの告発へと繋がった入院の女性、冒頭の彼女の妊娠のきっかけとなった(暴行の)ベッドシーンで、相手の男がヴェラの息子に見えたのは私の勘違いだろうか?母親が堕胎と言う「人助けの罪」を犯した一方で、母親の罪を避難する息子が、それを知らず「罪の原因」だったという皮肉が描かれていたように思えてならない。 【six-coin】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-12-05 00:51:22) |