11.何の盛りあがりも無い他愛のないお話で、タイトルが示す通り、高峰秀子のプロモーションビデオとしてファンの方が楽しむ作品に思えた。 |
《改行表示》10.ネット動画での映画鑑賞はあまり好まない派ながらもつい先日高峰秀子による「わたしの渡世日記」を読了したばかりであるが故にこのタイトルが目に入った直後に押してしまっていた。あとでDVD化はまだされていないということを知って、こうした「要ビデオデッキ」作品群はどんなクオリティであれありがたく観るべきだと変節もしてみたり。 邦画トーキー初期作品を数本まとめて鑑賞させてもらえる機会に恵まれた際に島津保次郎、五所平之助、衣笠貞之助といった名に触れることができ、この時代「庶民劇」というジャンルが存在していたということを知ったのは割と最近のこと。本作はまさにその流れの末期にあたる作品なのかもと考えたりもしながら鑑賞していた。公開が真珠湾攻撃の直前という時期でもあり、その世相はほのぼのとした話の筋の中にもどことはなしににじみ出てしまっている。検閲という語彙やその世知辛い皮肉な話の運びといい。ああ、そういや「藤原鶏太」という聴きなれない配役の名に遭遇したのもこれに関連があった…。 とはいえ成瀬+高峰ペアの栄えある第一本目という観点も重要。鑑賞後には前述の著書から今一度彼女が書く「成瀬評」の部分を探しだして読み返してみたりもした。その文章は愛憎相まみえるといった感じのもので、そのすべてが本作から始まったんだと思うと感慨深い。いや、正確にはこれよりも前の彼女の子役時代も経ているとのことで、ある日彼女がその頃の印象を監督本人に尋ねたところ「こましゃくれて、イヤな子だった、ウフフ」と返され、その後枯れのことを「イジワルジイサン」と呼ぶことにしたという下りがまさにその様子をうまく現している。このペア作品を時系列に上演してくれる映画祭なんかが開催されたら行っちゃうね、間違いなく。 個人的なツボは彼女自身から約20年後の出演作タイトルが口にされた時。木下惠介監督と組むのは本作からまだ10年先、戦後のこと。 【kei】さん [インターネット(字幕)] 5点(2015-11-14 10:08:57) |
9.《ネタバレ》 これ初めて見たのが動労がやたらストをしていたころで、労働問題方面から眺めることになった。単純に資本家対労働者の図式でいくと、このころの国鉄のようにどうしようもない状態に追い込まれていっちゃうな、なんてことを思っていたときだったので、おこまさんがいろいろ工夫する楽しさを見いだしていくのが至って健全に見えた。でもけっきょく職場を能動的に楽しくするそういう工夫ってのが、最後は資本家を肥やすだけなのもこの映画のとおりなわけで、うむ、難しい問題だ、などと、詩情豊かな傑作をかなり特異な角度から眺めることになり、それはそれであとから思ってもユニークな体験だった。それだけ豊かな傑作だったということだろう。人物の描き方が一歩退いているのがよく、社長もどことなく愛嬌があり(この勝見庸太郎って、豊田四郎の『冬の宿』が記憶に残る名演だった)、作家もただの正義漢ってだけでなくヒョウヒョウとした味がある。ラスト、いざ案内をしようとするとコーラスが止まなかったり、美男の登山家がズラッとこちらを見てて照れてしまうなんてユーモアもいい。バスを停めて、下駄を履き替えに家に寄ったりするの。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-05-08 10:22:11) |
8.『【秀子の】車掌さん』というタイトルからして、これは当時少女スターとして大人気だった高峰秀子のアイドル人気を当て込んでの製作だったことは想像に難くない。アイドルとしてのデコちゃんの魅力を生かしつつ、映画としても見ごたえがある作品に仕上げたのは成瀬監督の職人的手腕の賜物だと思う。戦後の数年間、絶不調だった成瀬監督は『稲妻』(10点)で奇跡の復活を遂げ、そこからまた第二の黄金期をスタートさせるわけだが、バスガイドをしている賢い末娘役に高峰秀子を起用したのは、戦前こしらえたこの映画での新米車掌役の彼女のイメージがよほど強かったからじゃなのかとも推測される。それにしてもこの映画のデコちゃんは本当にメッチャ可愛い。可愛い、可愛いと言っているうちに映画が終わってしまうほど可愛い(←アブナイ奴)自伝等にも書かれているが、背後にいろいろな重荷を背負っていたなんて画面からは微塵も感じられないほど嫌味のない愛くるしさをふりまいている。何かの作品のレビューの繰り返しになってしまうが、AKB軍団が幅を利かせているこの平成の世でも、もし彼女が現れたら、何の迷いもなく俺は大ファンになってしまうと思う。このレビュー未登録ではあるが『秀子の応援団長』という映画も、機会があれば観てみたい。ちなみにユーチューブで「煌めく星座」で検索すると、この映画の主題歌を唄う、在りし日の、まだまだお元気な頃の灰田勝彦氏と高峰秀子さんの動画が拝見出来ます。 【放浪紳士チャーリー】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2012-01-08 09:26:36) (良:1票) |
《改行表示》7.何という社長だ。運転手と車掌が会社を何とかして発展させようと懸命に頑張っているというのに。あのラストには腹が立ってしまった。プンプン! 若い高峰さんを、ほんとにほんとに偶然に見てしまった。こういった映画は、貴重だと思う。他にもこういう昔の隠れた名画があれば、どんどんDVDにしてほしい。 もう一言、この映画の1941年は太平洋戦争突入の年、それをまったく感じさせないこののどかさは何なのだ。 【ESPERANZA】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-07-26 13:22:49) (良:1票) |
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《改行表示》6.清水宏監督の『有りがたうさん』を彷彿とさせる内容と雰囲気。 さながら、女性版『有りがたうさん』だ。 最初と最後に流れるほのぼのとした音楽。 いやぁ、これを聴いているだけで、何だか幸せになれる。 そして、バス会社の社長! これぞまさに怪演! このキャラ、実にいい! 経営者としての達者な物腰も備えながら、どこかオカシイ。 いや、オカシイというのは面白いという意味。 いや、それより、ラムネに氷が印象的! 今観ても、何だか羨ましくなるような食べ物だ。 質素でいて魅力的。 これは、まさに本作の高峰秀子に通ずるものがある。 最初で最後のバスガイドを演出したラストも見事。 切なく、そして楽しい。 映画を観て、こんな気持ちになったのは初めてかも。 あ、そうそう、本作のビデオは東京・荒川区の南千住図書館まで片道1時間半かけてレンタル、、いや借りに行った。 ツタヤでの貴重な作品の発掘が一段落ついたので、次は「東京都内の図書館巡り」が自分の中で始まった! これがまた、意外にも貴重な作品の宝庫。 どんなに巨大なツタヤにも置いていない貴重なビデオが、ひょっこり図書館の片隅に眠っていたりして、とても刺激的だ。 図書館を巡ってのビデオ探し。 何だか病みつきになりそうだ。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2008-12-25 21:06:24) (良:1票) |
《改行表示》5.成瀬=高峰コンビの第一作。成瀬作品には珍しくほのぼのとした作品でバスを舞台にしている点で、なんとなく清水宏作品を思いださせるが、清水宏ほど演出に強い効果を狙っている訳でもなく題名どおり「国民的アイドル高峰秀子」を前面に出した作品なんだと思う。その高峰秀子は純朴な少女を演じている。彼女は17歳。この年は山本嘉次郎作品「馬」でも純朴な少女を演じていて(東北弁の使い方がとても巧いんです)、「恐るべき役者」と思ったのだが、このほのぼの感も計算した演技なんだろうか。この時期の高峰秀子の作品はもっと観たいですね。成瀬監督であればもっと面白く出来たんじゃないかという所でこの点数です。しかし、山梨を舞台にバスが名所「笛吹川」を渡っているのも興味深いです。19年後に老婆役として再びあの川を渡る事になるとは。 【サーファローザ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2007-10-23 17:21:21) |
4.《ネタバレ》 成瀬巳喜男監督、こんなにも微笑ましい作品がまだあったとは知らなかった。高峰秀子の初々しさ、そんな高峰秀子の車掌さん、おこまさんと運転手の藤原釜足、この二人を中心に山梨県は甲府街道の田舎町ののどかな風景を背景に描かれる何とも微笑ましい作品!二人が働くバス会社の社長がなんてたって、面白い。かき氷にラムネをかけて食べてばかりの社長の変な人間性が物凄い。また高峰秀子のおこまさんと藤原釜足のバスの運転手の二人が東京から来た小説家の先生に観光案内の文章を書いてもらおうとお願いに行くのだが、その時の小説家の観光案内所の読み方がなんだかお経でも読んでるみたいで、笑える。それにしてもこの映画の高峰秀子、何という可愛さだろう!そして、この映画、作られたのが昭和16年って、確か太平洋戦争の最中、戦争の真っ最中にも関わらず、どこにも戦争の匂いが感じないのが良い。一時間にも満たないこの作品、私は気に入りました。この映画もDVD化してくれないかなあ! 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-09-16 09:25:02) (良:1票) |
3.自分も[黒猫クロマティ]さんと同じようなことを考えてました(笑)それぐらいに高峰秀子の純粋っぷりが微笑ましいのですが、それにしても意地悪な終わり方ですねえ!そんな憶測もしてみたくなるというもんです。でも何も知らない高峰秀子と藤原釜足に対して、真相を知ってしまった観客側は彼女の一回きりのガイドを真剣に、そして悲しみをもって(大げさですが)聞くに違いなく、歌を歌い続ける女学生に苦笑するしかないのです。この、まるで監督との共犯関係みたいな状態に、それこそ恥ずかしいのですがラムネの甘酸っぱさを感じてしまいました。ラムネと氷ラムネと氷、ラムネと氷。この映画はまさにこれに尽きます。小品ながらも、イジワルジイサンこと成瀬巳喜男の面目躍如といった感じ、ここから成瀬=高峰の躍進が始まったのだと思うとワクワクします。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-08-29 02:13:22) |
2.高峰秀子の笑顔が愛らしい!こんなに可憐で汚れない少女が後々あんな目に会うなんて・・。いや違う、それは別の作品!いい加減にしろ>自分(笑)でも話し方にはこの頃から特徴あるんです。語尾の感じがね。なんとなく彼女の物まねを修得しつつある予感。あまり一般ウケしなさそうですが。小説家先生を踏み切りで見送るシーンなんか凄くステキです。ささやかで人間らしい人々の生活に憧憬を覚えるんですけど、それだけにラストシーンは何とも言えない哀愁があって心に残ります。初夏のそよ風みたいな作品。 【黒猫クロマティ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-04-19 12:28:08) (良:1票) |
1.おんぼろバスの窓の外を流れてゆく、のどかな夏の甲州の景色(これが昭和16年制作の映画だなんて)。ニワトリを追いかける下駄履きの車掌さん。「要求というほどのことじゃないんですが、ちょっと要求したいことがあるんです」(笑)の運転手。露天風呂でばた足している作家先生。みなその真面目さや一所懸命さが、可愛らしくてどこか可笑しい。高峰秀子はまだ表情もしゃべり方も初々しくて、ラジオの名所案内に聴きいる姿など、少女らしくて微笑ましい。終り方は「流れる」に共通するものがありますが、こちらはヒロインが若く堅気でもあるせいか、さわやかでほろ苦いラムネのような後味の映画になっています。原作は「少女の友」という雑誌に連載された井伏鱒二の短編小説「おこまさん」。運転手の「要求」のセリフなどは原作そのままですが、「フランス映画のにんじんて子に似て、、、」というセリフは原作にはなかったので、成瀬監督のオリジナルなのでしょうね。大好きな作品です。 【あまみ】さん 10点(2005-03-06 00:04:02) (良:1票) |