2. この1、2年映画化が立て続いている伊坂幸太郎の原作作品。
僕自身、伊坂作品は最近になって続けて読んでいるが、中でもこの「ラッシュライフ」は、彼らしい語り口とストーリーテリングで、ぐいぐいと引き込む傑作だと思う。
原作小説の表紙カバーに描き表している通り、この物語は、4つの人生(厳密にはもっと沢山の)が、まったく別の方向性から交わり、また別の方向へ向かっていくという“絶妙”な連鎖を描いたものだった。
先に言ってしまうと、この映画の致命的なミスは、その「連鎖」を描けなかったことだ。
東京芸大の制作によることが影響したのかどうかは知らないが、
4人の監督が、物語に登場する4人のキャラクターを主人公にした4つの物語としてオムニバス化してしまったことが、最大の敗因だと思う。
この物語は、決してオムニバスではない。
主人公は4人ではなく、それぞれの人生が少しずつ絡んだ”繋がり”こそが、主人公である。
短絡的に4つの短編を並び立ててしまったことで、原作の魅力は大いに損失されてしまった。
ただし、それぞれのキャラクターを演じた役者達は流石に実力者ぞろいで、原作のキャラクター性を損なうことなく演じ切ってみせている。
そのおかげもあり、決して完成度の低い映画という印象は与えない映画に仕上がってはいると思う。
だからこそ、尚更勿体ないという印象も拭えないが。