2.アラスカの森林でグリズリーを保護すべく、彼らとの共同生活を送った挙句、ついにグリズリーに食い殺されてしまった環境活動家、ティモシー何とかさん(←ごめん、忘れた)の姿を追ったドキュメンタリー。
このティモシー何とかさん、ビデオカメラを手に森林生活を送っていたのみならず、カメラに映像を残すこと、それも野生動物の姿だけではなく、彼らの中に溶け込んでいる(かのごとき)自分の姿をも映像に残すことに強い執着を持っていたようで、彼の残した映像がこのドキュメンタリー映画の中核をなしています。そしてさらに、彼の生前の姿、あるいはその最期を追い求めて、関係者とのインタビューを敢行し、かつ映画のナレーションを務めるのは、ヘルナー・ヴェルツォーク監督本人。インタビューは落ち着いた部屋の中だけではなく、「現場感」を感じさせるような場所でもしばしば行われ、またティモシー某氏の残した映像や音声から彼の最期の姿に迫ろうとするなど、監督本人の強い関心からくる生々しさが、映画の中から感じられます。
これはもしかしたら、ヘルツォーク監督が、自身のこれまでの映画作りの姿勢を、ティモシー氏の姿と重ねて捉えているのかも。そこには、自分だけは動物たちと解り合えるという思いこみと自惚れがあり、その点では監督自身も一定の距離を置いているように見えるけれど、命がけで撮った映像が持つ迫力、大自然に対する人間の無力さを実人生で描き切ってみせたことなどには、羨望の気持ちがこのドキュメンタリーに込められているようにも感じます。