《改行表示》33.《ネタバレ》 -CATERPILLAR- “芋虫・毛虫” 寺島しのぶのベルリン映画祭最優秀女優賞受賞が印象深くて、この映画のタイトルはよく覚えている。トレーラーのインパクトから、機会があったら観てみようと思って、今回ようやく。 やたらと連呼される「御國のために」と、イチイチ映される天皇皇后両陛下の写真に、何か監督の伝えたいことが詰まってる気がした。 言葉の使い方から「御國のために」が「御國(天皇)のせいで」って脳内変換される作りになっている。 誰かのせいにするのは一番簡単な逃げ道。あの戦争を『御国(天皇)のせい』にしておけば気持ちが楽になるのかな。婦人会の人なんかも、面倒を人に押し付けるとき「御國のためだから」。自分は悪くないし、被害者の立場にもなれる。便利な言葉かもしれない。 映画は日中戦争、主人公久蔵による中国人女性のレイプ(殺人)から始まる。痛ましい映像だけど、安っぽい作りと、レイプに至った背景を描かないのは疑問。背景もなしに“戦争中こんな酷い事が起きてました”って部分だけを映像化しても、それでは説明のない死体写真を見せられてるのと変わらない。 そして久蔵はモトからシゲ子に暴力を振るうような、今で言うDV夫だった事がわかる。その久蔵が戦地でも最低なことをしていて、手足を失って帰ってきても、シゲ子に命令して食ってヤッて寝るだけ。別に戦争で理性を失ったとかはなく、モトから最低な男。 時代は日中戦争から太平洋戦争に突入して、原爆投下、敗戦と続く。久蔵とシゲ子の立場が逆転したように、久蔵が中国人女性にしたことがフラッシュバックするように、日本が中国にしてきた酷いことを、今度はアメリカから受けることになる。って事だろうか? 黒川家とは無関係の原爆はもちろんだけど、B・C級戦犯の絞首刑まで入れるのは詰め込みすぎ。それに呼応するかのように久蔵の自殺。 クマとシゲ子が「戦争が終わった。バンザイ!」と笑顔。負けた。でなく、終わった。クマはともかくシゲ子はどんな感情で笑っていたんだろう。 余談だけど、小学校3年生の頃の担任を思い出しました。道徳の時間に、戦争の悲惨さというか、日本軍の非道な行為を詳しく教えてくれました。なんか、そのまんまな考えの映画でした。 【K&K】さん [インターネット(字幕)] 2点(2022-02-10 14:52:20) |
《改行表示》32.《ネタバレ》 俳優達は、すばらしいと思うが、脚本、監督が何の映画を作りたいか、単なる反戦映画にしか見えない。 単なる反戦映画は単なる好戦映画と同じぐらい、中身が薄く感じられる。 【cogito】さん [DVD(字幕)] 5点(2016-08-05 22:55:53) (良:1票) |
31.《ネタバレ》 海外の国際映画賞を狙っていたな。「反戦」っていう錦の御旗ですべてをラッピングしようとしている映画。これでいいと思っているしたり顔がイヤなんだ。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 2点(2015-10-03 20:00:00) (良:2票) |
30.《ネタバレ》 うーん、若松監督作品をたくさん見てきた訳ではないが、描き方が中途半端な印象。戦場で四肢を失った夫を迎える妻、という設定自体は興味をそそるものだが、想定した範囲を超える描写はなかったように思う。戦争負傷者を「軍神」として讃え敬う当時の日本社会の滑稽なまでの「建前」と、パワーバランスが崩れた夫婦関係のありようは描けていると思うが、時折挿入される大本営発表や最後の原爆シーンなど、いずれも唐突な印象は否めない。学徒動員で学生服姿で野良仕事に励むシーンなども違和感を感じた。寺島しのぶの鬼気迫る演技だけが印象に残る作品。 【田吾作】さん [DVD(邦画)] 4点(2015-01-11 18:06:00) |
29.鬼気迫る部分は見え隠れしたけどこいつはすげーとならない映画でした。もっとつっきってもよかった。 【とま】さん [映画館(邦画)] 4点(2014-10-05 08:52:23) |
28.《ネタバレ》 四肢を失ったことにより軍神となった男の日常を覗き見る作品。銃後をとらえたこの切り口としての反戦は面白いが、リアリティを感じる半面、物語としての面白みは当然無い。男の中国での鬼畜的行為を見せられる自分とそれを知らない主人公とのバランスがどうも上手くいってないのが残念。若松監督の矜持を感じる作品ではある。 |
《改行表示》27.《ネタバレ》 若松監督の追悼放送で鑑賞しました。映画メディアには色々な側面がありますが、この方の作品は常にエンターテイメントとは対極の場所にあります。何かを訴えるというレベルでは無く、暴いて抉るって感じです。その追い込み方は恐れ入ります。 本作ですが、監督本人の意図は別にして、反戦映画という範疇には入らない気がします。ラストにヒロシマや長崎の映像や戦死者の数がテロップで表示されますが、本編と繋がっていないような違和感を覚えました。 私にとってのキーワードは「御国のために」です。「御国のために」送り出した亭主が形容も難しい姿で帰還し、妻は「御国のため」に食欲と性欲と排泄の世話をする。「亭主のために」という言葉は聞こえてきません。その亭主が「御国のために」やっていたことは中国の婦女子を凌辱することで、軍神と祭り上げられても呵責に苛まれる状態。 世間からは軍神と帝国婦人の鑑だったりする訳ですが、内実は「御国のために」蝕まれて行く夫婦です。「御国のために」やっていたことを現代に映画化して、その内実を伝えること自体は、直接的には意義を感じません。今、日本が戦争状態になっても、同じ状況が現れるとは思わないから。でも、日本人の悪しき体質である、本音と建て前の使い分けが最も悪いカタチで現れた例が「御国のために」だったと思います、カタチこそ違え、その体質は現代の日本を相変わらず不自由な国にしているような気がしてならない。それを教訓としたい映画だと思いました。 タイトルのキャタピラーは「芋虫」って意味なんですね。乱歩の同名短編をモチーフにしているらしいのですが、そのまま「芋虫」ってタイトルでも良かったと思います。その昔に「ジョニーは戦場へ行った」という映画がありました。四肢を失くした兵士という共通項があります。名作と言える作品だと思うし、真っ当な反戦映画ですが、本作を観た後では随分とキレイな作品だったなぁと思いました。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-10-27 23:19:12) (良:1票) |
26.《ネタバレ》 確かに寺島さんと大西さんの演技は迫真でしたが、なにしろ彼らに感情移入する暇がない。想像してみるも有りきたりな心理描写しか浮かばない。男尊女卑&SEX依存症で気位は高いが気の小さい夫?虐げられていたが夫より上の立場になって共依存のドSに変貌した妻?この2人にはもともと愛が存在しないようなんだけど…。そしてエンディングの曲の謎。結局、監督は反戦を訴えたいのか、人間の裏面も描きたかったのか、全体がまとまってなくてよくわからなかった。熊さん演じる人が幼少時に近くに住んでいたオジさんに似ていてそこだけノスタルジー。 【movie海馬】さん [地上波(邦画)] 3点(2012-05-21 22:36:36) |
25.《ネタバレ》 若松監督作品に、普通の意味での映画的陶酔は期待していない。「永遠のシロート」と言うか、シロートっぽい表現のくどさがときに、洗練の対極の異様な力を感じさせることがある。その一瞬を待ち受けるように観ている。もっぱらそれは暴力がらみの場面で起こるのだが、今回は違った。いや、妻が旦那の軍神を殴るところもかなり「異様な力」なのだが、本作で一番キたのは、旦那をリアカーに積んで村を回るシーンだ。精神的な暴行。闇の中でうごめいていた夫を、軍神として陽光の中にさらけ出す。世間に対しては貞節な軍神の妻としてまっとうしながら、同時に夫を辱める(「五体不満足」の乙武さんの覚悟を逆に思った)。辱めているのは夫だけではなく、村の人々もだ。「これがあなたたちの軍神です」と巡る。軍神というフィクションを一度迎えてしまった人々は(夫も含め)、その辱めを辱めと感じなくとも受け入れていかなければならない。敬礼して佇立する。農家の嫁はけっきょく、おしっこの処理と性欲の処理と、もっぱら下半身の処理のための存在だったことを如実に示したあとでの復讐。もちろんそこには強姦された中国女性たちの亡霊もかぶさってきているだろう。いくさは日本と中国の間で起こるより前に、男と女の間で起こっていたのだ。それを踏まえた上で「歴史の被害者」としての夫が、もっとクッキリ出ても良かったのではないか。 【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 5点(2012-02-04 10:18:39) (良:1票) |
24.暗すぎる。鬱映画の代表格ダンサー・イン・ザ・ダークとは違った、救えなさがある。なぜ筆談をしなかったのか不思議だ。あとモザイク。2011年現在と当時の状況を比べると、戦争=福島原発事故、大本営発表の事実隠蔽=東電、マスコミの隠匿、竹ヤリ=ガイガーカウンター。日本は進化したのだろうか。 【カップリ】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-11-12 23:49:54) |
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《改行表示》23.《ネタバレ》 寺島しのぶの鬼気迫る演技は、やはり印象に残った。 その迫力に、この映画の持つ「反戦」であったり、「愛憎」であったり、「悲劇」「狂気」etc・・・、実はいろんなテーマを根底に持っていながらも、それを少し忘れてしまうほどに。 それにしても、これほどテーマを詰め込んでも作品のバランスが崩れてないのは監督の手腕はもっと評価されて良い。 ストーリーも寺島しのぶに全部持っていかれちゃうじゃんって思っていたら、丁度良い頃合に幕を閉じた。尺も申し分なし。 【バニーボーイ】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-09-05 00:08:41) |
《改行表示》22.《ネタバレ》 第二次世界大戦中、徴兵された旦那が四肢を失った状態で生還し、その畏怖を覚える容貌から彼は誰からともなく軍神と奉られるようになる。これはそんな彼と彼を介護することになった妻との物語である。 こういう歴史ものの映画やドラマを見るとき、登場人物の考え方や容姿・仕草が現在のそれっぽくて、不自然に感じることがよくあります。この映画を観てても、シゲ子(=寺島しのぶさん)の考え方はとても現代的で、いきなりだんなの介護をすることになった妻のストレスや葛藤がよく描かれているのですが、対照的にその周りにいる人間は「大日本帝国」のことで頭がいっぱいの典型的な当時の人というイメージで、その両者の雰囲気のギャップが妙に気になりました。シゲ子が特殊だったのか、周囲が特殊だったのかというところが最後まで判然とせず、観てるほうとしてはそれ以上思考が先に進まなかったのが少し行き詰まりを覚えました。あくまで私は、ですが。 【TANTO】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-08-31 16:26:23) |
《改行表示》21.《ネタバレ》 冒頭の寺島の田圃での発狂と、その後の夫への思いとが一致しない。 戦争への憎悪を描こうとしているのだろうけども、それがどうにも直接的で恥ずかしくなってしまう。 手足と言葉を失った夫に対する歪んだ復讐の物語なのであれば、たとえば素っ裸にしてリヤカーに乗せて村を練り歩き、村人ドンビキしながらも手を合わせる様子をほくそ笑むとか、食事を与えないとか、目の前で別の男とヤって見せるとか、いろいろ方法はあったはず。「軍神」を弄び辱めることによって反戦を訴えればいい。 寺島が裸で大本営ラジオを聞くシーン、寺島が慟哭し卵の殻まみれになるシーンが心に残った。 |
20.反戦映画。今後日本全体を覆うであろう老々介護が思い出された。軍神って響きだけはよいね。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-08-22 18:11:23) |
19.《ネタバレ》 本筋のストーリー、反戦のメッセージ、最後のED曲、三つが全然うまく絡んでなくて、結局何が言いたいのか分からなかった。設定と材料は申し分ないはずだし、もっとうまくやれなかったものか。扱うテーマに監督の腕が追いついてない印象。寺島しのぶの演技しか評価できない。 【eureka】さん [DVD(邦画)] 4点(2011-08-22 02:18:48) |
18.悪趣味、最初から最後まで、とことん悪趣味。この左翼の映画作家は、前作『連合赤軍』もそうだったけれども、結局近現代史にかこつけて、要は悪趣味の美学をつきつめたいだけじゃないのだろうか。そう疑問に感じるほど、悪趣味に徹したキワモノ。私はうんざりだ。 【goro】さん [DVD(邦画)] 3点(2011-07-26 03:38:25) |
《改行表示》17.《ネタバレ》 本筋に関しては原作に忠実であると思うが、個人的には浮き世えらしさがないのが残念であった。照明や撮影も決して良いとは言えないが、安い映画なりにセンスでなんとかならなかったのか。もう少しエロチシズムを感じさせてくれると期待していたが、変な意味で生々しく、興ざめしてしまう。時代背景にしてもけっこう適当な感じなのでは?全体的な安っぽさからなのかフレーム内からは読み取りにくいと思う。 戦況を伝えるテロップも読ませたいのか聞かせたいのかはっきりしない。手法に疑問。 演技に関しては、絶賛してるレビュアーの方も多く、確かに受賞も納得の出来栄え。あと黒川さんだけど、本来であれば同情すべきなのだが、自殺するに至るまでそういった感情は逆に皆無であったのが原作と違う思い入れだったかな。 【シネマブルク】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-07-15 22:08:17) |
16.原作未読。 映画全体を通して反戦のメッセージが表面に出ているのはストーリーを考えると違和感を感じた。 しかし、子供の頃から戦争の悲惨さを親から聞き、メディアで目にしてきたことを照らし合わせると監督がどうしてもそれを表現したかったのだろう、とは推察できる。 映画としては俳優の演技力に救われている感あり。 戦場の回想シーンとかもう少しわかりやすいように力を入れて欲しかった。 【ゆたろ】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-07-03 06:06:28) |
15.《ネタバレ》 前作「連合赤軍」も、これでもか!これでもか!って感じで描いた作品でしたけど、これもそうですね。途中から、もういいよって感じになります。戦争で下半身が麻痺してしまった兵士と女性との恋を描いた「帰郷」を観てたので、これも女性映画かな?と、どこか救いを求めて観たのですが、この監督はそんなに甘くはなかった。もうとことんです。寺島しのぶの演技も「どうよ!」とこちらにぶつけてくるような演技で、どう思えばいいんだ!と思っちゃいました。彼女が、軍神である夫がセックスを怖がりはじめたところで、戦場で何があったのかに気づくという展開もあったのではないでしょうか?そこから寺島しのぶ演じる女性がどうふるまうのか、その辺の演技を観たかったです。反戦のメッセージは大事なので、こういう映画が賞をとったのは良いことだと思います。学生たちが「都の西北~」を歌っている部分はほっとしました。 【トント】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-06-17 01:43:03) |
《改行表示》14.《ネタバレ》 「お国のため」「軍神」というキレイな言葉で、醜い傷やドロドロとした感情・トラウマ、そして己を現在の姿にしたものへの疑問・恨み等々が外に溢れ出ないよう包み隠し、泣き寝入りを強いる全体主義的な社会の恐ろしさを描いた作品です。 非常に考えさせられる作品でした。 【TM】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-06-17 00:27:33) (良:1票) |