6.《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。すこぶる痛快で面白かった。ただし、パガニーニの伝記的な半生を知る目的で観ると、ちょっとアテがはずれますが。
これはあくまでイギリス人の監督がロンドンを舞台にして、英国のロックスターに類型的な破滅型の人生を19世紀のイタリアの音楽家に投影してケン・ラッセルに捧げた、きわめて現代的かつ英国的な英語の映画です(製作はドイツで主演もドイツ人だけど)。主人公に群がる女の子たちにもロック全盛時代のグルーピーの姿が投影されていると思う。
たしかに史実からエピソードを引いたところはあるでしょうが、ここに描かれている話はまったくの創作というべきだし、19世紀のイタリアらしい雰囲気はどこにも感じられないし、パガニーニの音楽に特有の異教的な感覚にも乏しい。
とはいえ、敏腕マネージャーが無名の演奏家の才能を引き出しつつ、社会規範を逆撫でするような悪魔的演出と炎上商法によって全欧的スターにまで育てたのだという解釈は、いわゆる「パガニーニ伝説」を理解する上で合点が行くところもあるし、第4コンチェルトの二楽章を扇情的なテーマ曲に仕立てたアイディアもなかなかだと思います。