1.《ネタバレ》 背後から父親(ヘンリー・B・ウォルソール)の目隠しをする娘(ウィンストン・ミラー)。
手と手が触れ合い、静かな沈黙の時間が流れる。
その手の感触で、それが長く別れて暮らしていた娘であることを父は悟る。
別離と再会のドラマ自体もそうだが、触れ合う指先が喚起する情緒という細部の
モチーフからしても、なるほどこれはスピルバーグ『戦火の馬』のルーツだ。
離れ離れとなっていたかつての主人であることに馬(フューチャー)が気づくのも、自分に触れる手の感触によってだ。
前足の蹄を鳴らして何とか気づいてもらおうとする彼女の身振りが何ともいじらしい。
牧場を、競馬場を、自動車で混み合う街路を、疾走する馬の猛々しく美しい躍動感が
望遠や縦移動によって余すところなく捉えられていているのは勿論、
再会した母馬と娘馬が躰を寄せ合って喜び合うショットでは、
その身体表現の素朴な豊かさによって、立派に主役を張っている。
発砲の瞬間、厩舎の影から流れ出る白煙。競馬場の歓声。殴り合いの喧嘩に、乱れ飛ぶ白い皿。
音を意識させる演出やユーモアの数々によって、映画は賑やかで楽しい。
タキシードを着たJ・ファレル・マクドナルドが茶目っ気一杯の仕草で記念写真に収まり、
騎手の息子と恋仲になった娘が仲睦まじくツーショットを決める大団円は幸せ一杯で
屈託が無く、実に気持ちいい。