1.《ネタバレ》 序盤はあまり乗れないのだが、メンバー間の不協和音が現れてくる中盤のロングテイクあたりからぐんぐんと良くなる。
主演二人が背中合わせに座る、夜の埠頭のショット。コンクール以降の、台詞省略の効いた画面による語り。
屋外から響いてくるホルンの音色に導かれて廊下へ飛び出した橋本環奈の全身に吹き付ける風。
『箱入り息子の恋』でもピアノを弾く夏帆の運指をきちんと撮っていたように、ここでも橋本を始めとする俳優ら本人の演奏を巧拙に係わらず
誠実に撮っているのがいい。フルートを懸命に吹く彼女の顔と手の表情などとても素晴らしい。
中盤で主演二人が屋上から中庭を覗くシーン。ふとここで思ってしまうのは、フェンスのない(現実的には)危険な屋上だなということだが
そこがラストの大団円の舞台装置となるに至ってそのフェンス(壁)の不在が映画的には必然であったことがわかる。
ラストの幸福感あふれる祝祭的な空間と運動。さわやかな笑顔を見せる橋本と佐藤の切り返しショットが気持ち良い。