1.《ネタバレ》 中米パナマのブラック・コメディである。汚い虫関係が嫌いな人や犬好きの人は見ない方がいい。
物語としては富裕層に虐げられた家政婦2人が反乱を起こす話になっている。復讐劇として期待するとすっきりしない終わり方だが、とりあえずの現状打破により、反乱を起こした側にも起こされた側にもそれなりの解放感があったということか(よくわからない)。
現地の実情として富裕層と貧困層の格差は大きいだろうが、それぞれにいいことも悪いことも起きるので、貧困層でもいいことが全くないわけではない。ただし一攫千金というより好機をつかんで生かすことが大事であって、そのために政治的自由や教育面での機会平等が確保された社会であってもらいたい、ということならわからなくはなかった。
以下その他雑記
・撮影場所は主に首都パナマ市らしい。DVDと携帯電話があるので劇中年代は製作時点そのままと思われる。今どき白黒テレビかと思ったのは家政婦用(厨房に設置)であって、他は貧民街も含めて全部カラーのようだった。
・原語ポスターでは「LOS TRAPOS SUCIOS SE LAVAN EN CASA」と副題のように書いてあるが、これは「汚いぼろは家で洗う=内輪の恥は人目にさらすな」という意味であり、日本でいう「家政婦は見た」的な性質もあったらしい。
・夫の実父は貧困層から軍人として成りあがったが、米軍のパナマ侵攻(1989~90)の結果として軍隊が解散させられて失職したらしい。現在のパナマは隣国コスタリカと並んで軍隊のない国ということになっているが、政治面では軍事独裁から民政に移行したので夫も選挙に出られたということだ。
・パキータという人物は隣国コロンビアからの出稼ぎらしい(演者もコロンビア人)。息子がゲリラ兵にされるというのが、当時まだ活動中だった「コロンビア革命軍」のせいだったとすれば、給料をもらうために大げさな話を作ったわけでもない。なお終盤に出ていたダリエンDARIENという地名は、現在はコロンビア方面から来る不法移民が通過していく国境地域として有名である。
・「キャンディ」の末路はダニと同じだったという皮肉のようで、個人的には失笑させられた(うわーやりやがったーという感じ)。ちゃんとみんなで埋葬もしていたので心ない映画でもない。エンディングの最後には「この映画の製作中、動物は一切傷つけられませんでした。ダニを除いて。」(Ningún animal fue lastimado durante la realización de esta Pelicula, excepto las garrapatas.)と書いてあったので一応良心的だ。