8.《ネタバレ》 戦争の記憶がまだ癒えぬ、終戦後八年経過したこの時期でなければできなかった秀作だと思います。鶴田浩二さんが亡くなられた時、自分はまだ十代でしたが、葬儀の際、軍歌が延々と流れる模様がワイドショーで中継され、少々「奇異」に感じたことをよく憶えています。鶴田さんが特攻隊くずれだったとか、いや特攻隊員を見送る整備兵だったとか、映画の宣伝でそういう事実をでっち上げただけとか色々な説があるみたいです。御本人はすべての説を否定も肯定もしなかったとの事。でも彼がこの映画で、空の彼方に消えゆく一特攻隊員を、決して英雄化する事無く真摯な態度で演じられたのは事実。それは誰も否定できないはず。黄門様西村晃はじめ、この映画に出演された役者さん達は、きっと敬虔な気持ちと使命感で撮影に臨まれたことと思う。独立プロ勃興の時期だから出演料も安かっただろうし。ラストシーンのナレーション、それまで感傷を極力排して描いていたせいか、一気にいろんな感情が噴き上がってくる効果を上げています。『よっちゃん、リンゴのほっぺただ』泣けました。ただただ、泣けました。もう一人の主役、繊細キャラの木村功も良かった。『ひめゆり』は結局何度も再映画化されて質が落ちていったけど、願わくばこの作品だけは安易にドラマ化やリメイクはしないでもらいたい、強く心からそう願います。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 8点(2022-08-15 21:21:10) |
7.《ネタバレ》 GHQの占領統治が終結、これが1953年=その前後から各メディアへの情報統制/規制も解除されつつあり、それは映画界にも影響を及ぼした。メジャー会社より独立した「独立プロダクション」の隆盛もこの頃から。山本薩夫/新藤兼人/今井正などが有名だが、家城巳代治もその一人。...すみません、説明が長かったですね。で現在でもよく上映される「太平洋戦争における特攻作戦」の先駆けになったのがこの作品。私も久方ぶりに映画館で見て印象をもったのは、軍上層部の特攻兵に対する見方=徹底して「兵器」としての感覚で表現している、その点にありました。平成~令和の戦争映画はその点、まだ人間としてあつかわれてる気がします。とうちゃんかあちゃんと号泣した特攻兵が国のためにと飛び立っていったその後で、更なる「兵器」の投入を示唆する軍上層部の非情さ。 あとは鶴田浩二。19歳で徴兵され海軍航空隊に所属していた彼は整備兵として、間近で特攻隊を見続けた体験をしております。私財を投じ戦没者の遺骨を収集し続け、戦争に対する講演活動をその俳優人生において積極的に行っていた彼にとってこの作品はたぶん忘れられない一本であったでしょう。そういった点を考慮してこの点数。 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 7点(2019-08-11 07:51:41) |
6.特攻出撃前の躁状態にリアリティを感じた。無理にでも気持ちをそう持っていかねばならない。木村功が鶴田浩二に「本当に悠久の大義のためなら死ねるのか」と言っていたのに対する否定的な見解が、この躁だ。学徒兵に対して「役立たず」と罵っておいてから、軍神に祭り上げていこうとする軍上層部のたくらみ。何か役に立ちたい、自分の存在(死)に意義を見つけたい、という若者の気持ちをうまくつかむわけだ。特攻というアイデアを生んだ者の眼には、観覧車から地上を見下ろすO・ウェルズのように、兵士たちが見えたのだろう。ましてみんなが同じ軍服を着ていれば、それは数でしかなくなるし、軍服を着せられた兵士の側からも、役に立ちたいという衝動が湧き上がってくる。「また美談が一つ増えましたな」とか「今日は二割ぐらい当たるかな」といったいささか露悪的な発言も、こういう異常な戦法の異常さを際立たせてくれていた。あの傷ましい躁を経てまで散らされていった彼らを、後世の私たちは美談にしてしまう無礼だけはしてはならない、と思う。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-08-30 10:03:22) |
5.《ネタバレ》 特攻隊員たちが皆人間臭い。そのぶん尊さが募る。軍国主義の世界で養われた思想を持ち、自爆攻撃を誇りにすら思う主人公でさえ、独りになれば子供のように泣く。家族に会いたい。怖い。死にたくない。そしてけして自らが特攻隊として出撃するはずのない上官たちのあまりな態度に、国家の犠牲となる個人という図式を明確にし、反戦のメッセージとしている。隊員たちがとうとう出撃して映画が終わるのではない。たいした戦果をあげられなかったことが報告される。そして上官たちの「なに、特攻隊はまだまだいるよ」という非情なセリフが放たれ、次のカットに子供たちが歌う姿が映し出される。ここは強烈。 【R&A】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2009-08-07 13:53:59) |
《改行表示》4.《ネタバレ》 “カミカゼ特攻隊”の特攻までの数日をドキュメンタリー・タッチで描いた本作。 戦争の悲惨に関わる史実を、忠実に描いたことに関しては賞賛に値するし、何より反戦的な訴えも見事に表現されている。 しかしながら、そもそもお国の為に命を捧げるということ、それ自体に嫌悪感を持っている私は、最後まで感情移入できなかった。 こういう悲惨な事実が戦争中にはあった。 それはよく伝わるが、個人的好みとして、感情移入しがたい戦時中の「天皇万歳」的な悪しき風潮は、観ていて不快感が募りっぱなしであった。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 5点(2008-03-02 23:44:50) |
3.悲しい。悲し過ぎる映画です。戦争の不条理などという生易しいことばなんかでは、とうてい言い表わせられない。この決して忘れてはならない歴史的事実を、家城巳代治監督はヒューマンタッチな演出で見事描き切っている。「雨降って今日一日を生きのびる」一刻も早くお国の為に散って奇跡を起こしたい…否、生きたい。生と死の間で揺れ動く様子が、この一句で端的に表わされている。ラストの鶴田浩二演じる大滝のナレーション。「ぼくの大好きなすべての人、なつかしい山河、そして平和な日本、それを思い浮べながら死んでゆきます」は、悲し過ぎて生涯忘れられそうにありませんよ。本当に。 【光りやまねこ】さん 10点(2003-12-05 21:24:23) (良:3票) |
2.泣けました。「嗚咽…」って感じでせうか。泣き声をおさえるのに苦労しました。肩をふるわせて泣いたゾ。すばらしい映画だと思います。 【あさこ】さん 10点(2002-08-04 20:49:25) |
【死亀隆信】さん 10点(2002-03-12 22:51:48) |