17.《ネタバレ》 「元祖ワニ映画」というよりも「ジョーズの便乗映画」という印象の方が強い一本ですね。
襲い掛かる時のBGMまで似ているし「怪物に襲われたと思ったら、人間による悪戯だった」と判明する場面なども踏襲している形。
これだけ書くと、如何にも粗悪な劣化コピーのようにも思えちゃうのですが、然にあらず。
中々面白く、しかも「JAWS/ジョーズ」には無い本作独自の魅力まで感じられたのだから、嬉しかったです。
主人公が頭髪の薄さをネタにされる件なんて、最初はクスリともしなかったのに、その後も繰り返しネタにしてくるもんだから、つい笑っちゃう。
とうとうワニを倒した後のハッピーエンドの場面でさえ「ママもハゲが好きなのよ。家系らしいわ」とヒロインに言わせて終わるんだから、本当に徹底していましたね。
この主人公のキャラ造形って「真面目な刑事」「過去に相棒を死なせたトラウマがある」「動物好きで優しい」といった具合に、かなり王道なもんだから、ともすれば印象が薄くなりそうなものなのに、この「ハゲ」弄り効果によって、色濃く記憶に残ってくれました。
特撮も現代基準だと結構拙いんですが、頑張って巨大に見せようと撮っているのが伝わってくる為、憎めなかったですね。
小さな車や街の模型を作り、そこを普通のワニに歩かせるシーンなんて(あぁ、こういうの好きだなぁ……)と、しみじみ感じちゃったくらい。
ワニの巨大な眼も不気味に描かれていたと思いますし、子供相手でも容赦無く殺す残忍さも良い。
マンホールの下からワニが飛び出し、咆哮するシーンなんかも「怪獣映画かよ!」とツッコませてくれて楽しかったです。
昔の映画らしく、全体的にノンビリした展開なのですが、そんな中「新しい相棒になるかと思われた若い警官」「鳴り物入りで登場したワニ退治の専門家」などの重要キャラが、あっさり殺されるサプライズも用意しており、観客を飽きさせない作りになっているのですよね。
特に後者は、ワニの糞を見つけ「これはでかい」と大喜びするシーンがコミカルで印象深かっただけに(こりゃあ最後まで殺されないで生き残る立ち位置だな)と予想していたところを、裏切られた形。
あえて欠点を挙げるなら、冒頭にて赤ん坊時代の「ラモン」を飼っていた子が成長してヒロインになった訳だから、人を殺しまくっている巨大ワニが「ラモン」であると、彼女が覚るシーンがあっても良かったかも知れませんが、気になったのはそれくらいでした。
クライマックスにて「爆弾のカウントダウン」と「マンホールから脱出する主人公の姿」を一秒毎に交差させつつ描くシーンなんかは、特に素晴らしかったですね。
ここで気分を最高潮に盛り上げてもらい、そのまま爆発によってワニ退治成功→「悲劇は再び繰り返す」な下水道のワニの赤ちゃんを映してエンドロール突入という、実に綺麗な終わり方。
ラスト五分ほどで、一気に作品の印象を良くしてくれた気がします。
正直あまり期待していなかっただけに、意外な掘り出し物でした。