2.《ネタバレ》 映画序盤のウエイトレスの女とのラブシーンが綺麗だったので、撮影は誰かと調べてみたらフランツ・プラナーという「ローマの休日」や「大いなる西部」を撮った人だと知って、流石だなぁと思いました。
特にシルエットのキスシーンが芸術的に美しく彼女との愛に“本物”を感じたのですが、中盤に差し掛かった頃になると幾度となく他の女に目移りしてしまっていて、マネージャーを乗り替えたり兄貴と喧嘩したりといったストーリー上の展開はもちろん、映像における象徴的なシーンを裏切るところからも、カーク・ダグラス演じるリッジの人となりが伺えると思いますし、またそういったシーンを敢えて作ることで映像面においても落差を出すように描いた監督の手腕には脱帽させられます。
全体的なストーリーは、教科書通り一人の単純男のサクセスストーリーで、こいつならここで乗り替えるだろうなとか、試合にも勝っちゃうんだろうなとか、電報の内容が母親の病気か何かだろうなとか、特に大きなサプライズもないままエンディングに向かうのですが、最後に劣勢だった試合を逆転して勝ってしまったり、試合後に倒れてしまったりという軽いどんでん返しが2回あったのが良かったと思いますが、逆に、序盤辺りの会話で殴り殺してしまうかもとかいう話が出てきていたので、兄貴がラストで死んでしまうことで伏線の回収をするのかと思っていたらそうではなかったのですが、トータル的には楽しんで観ることができたと思います。
ボクシングの映画ではなくあくまで人間ドラマを描いた映画なので、素人からチャンピオンになるまでのトレーニングなどが程よく端折られていたのも良かったですし、それでいて、リング上ではしっかりと迫力のあるボクシングのシーンが描かれていて、ツボを心得ているなぁと思いました。