18. 95年に行われた教団への強制捜査にて、警察は毒ガス攻撃に備えてカナリアが入った鳥篭を持って施設に潜入したのだという。カナリアは有毒なガスなどにとても敏感で微量なガスでもすぐに死んでしまうからだとか。そのカナリアはまさにこの物語の少年と少女を表していると言えよう。厳しい現実社会に無防備なまま立たされた少年少女が、反発しあいながらも時に協力して必死で生きていこうとする姿は感動的だった。たしかに、一瞬で頭髪が白髪になる(科学的にありえない)など、わざとらしい演出もあったが、現実の宗教団体をモデルにしたと思しき教団のリアルな描き方や、少年少女のロードムービー的な面白さもあって、あくまでエンターテインメントとして昇華させているので、すごくこの物語に引き込まれたのです。 また、俳優たちの演技も素晴らしかった。とくに主演の石田法嗣と谷村美月の演技には圧倒されました。いつでも遠くを見つめているような眼差しが印象的で、それは自分たちを取り巻く社会への不安と明日を見つめる希望に満ちていたのではないでしょうか。 【ヴレア】さん [映画館(邦画)] 8点(2006-10-29 21:32:17) (良:1票) |
17.過剰な言葉。ハンディカメラを多用して疾走する子どもを追う。現実には口に出さないような弁論的な言葉を発し続ける人物たちが現実とは違うもう一つの世界へと連れて行く。それはどこなのか、と聞かれたら「別の世界」と言うしかない。もう少し具体的に言うなら、「もっともらしい場所で、もっともらしいことを喋り、もっともらしい行動を取る世界」つまり非現実の世界だろう。映画が虚構であるという事実は、ここまでしないともはや伝えることができないのかもしれない。塩田監督が創り出した世界はラストの向井秀徳の自問自答に至るまで素晴らしかった。それは新興宗教に顕著にみられる組織と教条とを、国家の相似形として表現した世界だ。宗教集団の白のイメージやとめどない緑色の流出といった色彩感覚がその世界をさらに極端にする。徹底してフィクションを作ることに努めた彼の方向性こそ大正解だと思いたい。過剰な言葉の森を抜けるのに必要なものは言葉にはならない「何か」だろう。この「何か」は、「繋がれた手」と「疾走」が全てを表している。主人公の光一がバットで車を壊す。由希が男に手錠をかけて車から出る。二人は殴りあう。後ろからクラクションが聞こえたと同時に二人は手をつなぎ走って画面から消える。このシーンこそ「カナリア」をよく象徴している。手が繋がれた瞬間だけ、異様でグロテスクな教義に包まれた世界は消失する。それでもまた離れて・・・・でも最後は繋がる。あらゆる悲しみを受け入れて劇的な変化をした少年を前に、もはや言葉も言葉をなくす。全ては「生きてく」に辿りつく為。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-04-03 02:32:45) (良:1票) |
16.《ネタバレ》 わからなかったです。光一もいわゆる2世信者なのだと思うのだが、それであればあんな環境に落とし込んだ母親(道子)のことを、その死により白髪になるほど慕い続けるとは思えない。ガチ信者の光一を引き取らず、朝子だけでも教団から引き剥がした祖父の判断が、そのことに関しては間違ってたとは思わない。祖父は道子の犯行により、住む家までも追われているのだ。祖父の横暴が道子を宗教に追いやったような描写があるものの、光一が満足に道子を扶養できると思えず、子ども3人でサバイバルに挑もうとしている終幕には、なんのカタルシスも覚えない。ただ不安なだけなんだ。 【なたね】さん [DVD(字幕)] 2点(2022-10-12 21:49:44) |
15.《ネタバレ》 どこか是枝風味。 つまり、自分には合わない。 新興宗教を題材にしてるならば、もっと奇妙な世界を描いてほしかったし、少年少女のロマンスを描くならば、もっと甘酸っぱくしてほしかった。 なんとなく流れるままに適当に撮った感じで、どこに感銘し感情移入していいか分からないまま、退屈なまま終わってしまった。 【にじばぶ】さん [インターネット(邦画)] 4点(2021-11-28 19:04:19) |
14.《ネタバレ》 12歳の女の子が、大人のロマンスをしてる。 そこにドキドキがある。 自分の慕う信者の改宗。 そもそもが出家したのは、母と一緒だったから。 その母を失い、絶望の中、由希の「私が一緒に死んだる」の一言。 こんなラブストーリーを12歳の少年少女が経験することの どこか心のツボにストレートに刺さる話。 塩田監督の映画は、どこか心の琴線に響く話が多いですね。 【トント】さん [DVD(邦画)] 7点(2020-02-29 12:36:38) |
13.本編の長さを感じさせない程重厚なドラマだった。 最初、自己中心的なヒロインにどうしても感情移入できなかったが、ラストに向けて彼女のキャラクターも成長していき、終盤では彼女にも感情移入することができた。 シビアな現実を受け止め乗り越えていく少年少女の姿に、心動かされた。 ラストでやはり自分は塩田監督が好きなんだなと感じさせられた作品。 |
12.《ネタバレ》 ラストの光一の「全て許す」の言葉に、ただただ感動してしまった。鬱屈とした全ての事を、肯定も否定もすることなく、その一言で救い、認めてくれた。 自分にとって、忘れられない作品の一つとなった。 【あした】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-10-22 19:41:37) |
11.鑑賞して、再認識したこと。 「残された家族が可哀そうだ、という発想で子供を巻き込むな!!」 日本人は家族を事件に巻き込むことに対して、最も罪悪感を感じない民族なのでは? ここのところ、親殺し、子殺し、無理心中と慙愧に絶えない事件が、以前よりも多くなっている気がする。 残される苦労よりも、近しい人間に殺されるほうがどんなに不幸なことか。 この作品は、殺していないが「可哀そうだから」という発想で、子供が自由に生きる可能性を奪った点では同罪。 さて、いろいろ書いてしまったが、肝心の作品の出来は、塩田監督の中では一番だと思う。 オウム事件からインスピを得たのだと思うが、あの事件を風化させないためにも見ておきたい作品でもある。 【なおてぃー】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-04-13 19:20:48) |
10.《ネタバレ》 何かにつけて「お金、お金」と出てくる(餞別を貰うシーンが3回あり、売春、万引き、他多数)ことに少し嫌気を感じました。テーマは、某教団からの社会問題であるはずなので、あまりふれないほうがよいのでは?? 【ぱんこ】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-01-26 23:08:09) |
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9.《ネタバレ》 太鼓の音とともに走り出す。これだけでこの映画が只者じゃないことがわかる。『害虫』でも思ったが「走る」シーン、そしてそこにかぶされる音楽が絶妙です。私は『害虫』のレビューで主人公の家庭を『どこまでもいこう』のプラモ少年と同じと書いた。この『カナリア』の主人公の家庭環境も『どこまでもいこう』の主人公の親友にそっくりである。父の不在、そして親に代わって小さな妹の面倒をみる兄。つまり『害虫』も『カナリア』も監督のデビュー作『どこまでもいこう』から派生した作品と捉えることが出来る。『どこまでもいこう』は子供の健全な成長が描かれていたと言っていいと思う。『害虫』は健全な成長をし損なった母に育てられた子供の、成長できない姿を描いていたのだと思う。そして『カナリア』は成長に必要な様々な経験を特殊なカタチで通過しイビツな成長を遂げようとする少年が、自らの、そして道連れの少女の、あるいは少年を想う大人たちの作り出す新たな経験によって、超越した成長を遂げる物語。ラストは所謂「解脱」の領域にまで達したということでしょう。スーパーサイヤ人みたいなもんです。この超越した成長をもって「成長3部作」(勝手に命名)は完結する。 【R&A】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-04-13 14:20:49) |
8.主演の二人が良く頑張っています。柳楽の「誰も知らない」っていう作品に近い印象 がします。主演二人の好演を観られただけでも満足です。なかなかに最後まで緊張感あり、切ない場面ありで映画として良くできていると思います。 【たかちゃん】さん [DVD(邦画)] 7点(2006-07-10 20:54:25) |
7.現代の日本人(に限られませんが)の課題が山積みで、いろいろ考えさせられる内容でした。ただし、一本の映画としてみた場合、残念ながら娯楽性に乏しく、共感もできませんでした。やはりこういう分野はドキュウメンタリーにかなわないのかなぁ? 【くらけん】さん [DVD(邦画)] 5点(2006-04-30 14:03:21) |
6.《ネタバレ》 自分が自分であることに負けるな、と突然語りだしたり、髪が白くなってしまったり、子供だけで生きていくと決意したり…、胡散臭かったです。おばあちゃんが羽ばたく鳥を折る場面はとても素敵でしたが… 【サイレン】さん [DVD(邦画)] 5点(2006-04-20 00:46:14) |
5.《ネタバレ》 あざとい。 俗世間から身を守る象徴としてのドライバー。 母親を失くしたショックで白髪になるラストシーン。 これが監督が言う「フィクションとしての強度」だろうか? あざとく、説明的な映像と演出にみえた。 主役の石田法嗣は泣き叫んだり、何かと走るシーンよりも 感情を抑えた演技の方が集中力があってよかった。 『月光の囁き』で注目していた塩田監督だけど どうやらこの監督は、倒錯した性というジャンルにおいて 力を発揮するようだ。 【michell】さん [DVD(邦画)] 4点(2006-04-07 12:32:42) |
4.現実は常に目の前にある。しかしそれに目を向けようとせず、自分たちの住みやすい架空の世界を作り上げた大人たちがいた。それに一度すがりついた大人(人間)はなかなかそこから抜け出すことができない。目を向けようとしない大人によって勝手に連れ込まれた世界に依存してしまった一人の少年は、現実への戻り方を完全に見失っていた。そんな少年の前に現れた現実世界の一人の少女。二人は一つの目的のために歩き始めた。そんな現実の世界を歩く二人の姿と行動に、現代社会への痛烈な批判を見て取ることができた。一人で生きていくことのできない二人の子どもが、大人と同じレベルで現実に立ち向かい、生きていくことの難しさや生きることの重みを訴えていた。そして二人は最後に現実の中の現実にぶつかり、答えを見つけ出した。大人でもそうそう出すことの出来ない答えを見つけた。二人は現実から目をそらさず、「生きる」と言った。今まで観てきたどんな映画よりも「生きる」ことの重みを感じた。重い内容の作品だったのに、見終わった後の爽快感があまりにも清清しく、全体の印象をとても綺麗にした。この映画を社会的に子どもと呼ばれる間に観ることが出来てよかった。 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-02-22 22:56:54) |
3.何も解らないまま母親と共に新興宗教に入団し、淋しく苦しい思いをしている2人の子供を見ていたら、親となるべき一番の資質は、強くあること(もしくは、そうあろうと努力すること)なのではないかとひしひしと感じた。そんな弱い母親も、ひとりの娘として自分の父親(主人公の祖父)になんらかの痛みを与えられていたようだったし......。これもひとつの因果応報なのかな。生きていくって本当に辛い。でもあの兄弟とゆきは進んでいくだろう。銀色のはるかな道を。苦しいのは自分だけじゃない。それが解った今なら、きっとやっていけるさ。 PS 主人公の走り方が本当に美しい! 彼の全力疾走が明るい未来を予感させてくれました。 【showrio】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-08-08 14:54:49) |
2.カルト教団や、その信者、信者の子供を描いており、まあ面白い。主人公に同行する由希はなかなかパワーのある子供ですごかったが、12歳という設定の割にはやたら考え方がしっかりしていて、子供っぽさがあまり感じられなかったように思う。主人公が白髪になるシーンは意味がよく分からなかった。最後の音楽がラップなのもいまいちなところ。最後のシーンも良く分からなかったけど、子供達だけで生きて行く道を選択したということだったのだろうか?あの後はどうなるの?うーん、よくわからなかった・・。 【yoshiaki】さん [映画館(字幕)] 6点(2005-04-16 23:42:50) |
1.《ネタバレ》 ロードムービーとしてよい映画だったと思うし、疎外された子供の気持ちをストレートに出したところが気持ちよかったと思います。たしかに10年前の事件をふまえてるわけですから、見る側がそれに引きずられるのはしょうがないでしょうけど、後の世に残った場合それはエピソードとしか認識されないわけですから、ドラマとして訴えるものがあるかってことだと思います。そういった意味で「子供と肉親」「子供と世間」という普遍的な命題を正面に見据えた作品だと私は感じましたね。特に由希役の谷村美月はすばらしかった。身近にそんな過去を持ってる人がいますから、実感として彼女のすばらしさが伝わってきました。母親の自殺を知ってからの展開をどうとらえるかが子供の心をいまだに有しているかどうかの分岐点ではないでしょうか? 個人的にあのラストとエンディングは支持します。一瞬で白髪になるというあざとさも「あり」だと感じますけど… ヘタクソな「銀色の道」も素敵だったし。観終わったあと幸せな気持ちでした、パッチギにつづいて10点。最近の日本映画、侮れなくなってきたと感じております。 【shintax】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-04-01 23:38:51) |