45.「名作」と評される往年のハリウッドの娯楽映画には、「物足りなさ」を感じることが多々あり、満足した覚えが少ない。 しかし、この映画には確固たる完成度の高さが見られた。 それは、トマス・ハリスの原作の確かさが大きく影響していると思う。 原作は未読だけれど、展開されるストーリーの端々に並の娯楽映画にはない“深み”があり、各シーンと人物の背景が見えてくる。 テロリストとそれを追う秘密警察それぞれの立場と、各キャラクターの抱える心情を平等に描いているので、追う者と追われる者の関係性に説得力があった。 クライマックスの顛末には少々ご都合主義が含まれていたようにも思うが、巨大な飛行船がスタジアムに突入していくシーンには、娯楽映画史に残り得る迫力があった。 この映画は日本では未公開だったそう。テロリストの攻防において当時の世界情勢が大いに絡んでいることがその理由かもしれないが、もっと広く認知されるべき映画だと思う。 【鉄腕麗人】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-08-01 19:05:43) (良:2票) |
44.《ネタバレ》 イスラエルとパレスチナの関係を簡単に説明しているがその説明があきれるくらい単純化されてて、かえって天晴れというか、娯楽に徹した映画なのだなと。シリアスにテロリストとイスラエルのエージェントの戦いが描かれるんだけど、思想だとか政治的背景はほとんど無視。そのぶん目的のテロ行為へと準備を整えてゆくテロリストたちとそれを阻止すべく行動するエージェントの攻防に見るサスペンスを単純に楽しむことができる。加えて街中の銃撃戦、ヘリと飛行船の空中バトル、スタジアムに大接近する飛行船と大観衆のパニック描写等々見所満載の娯楽作。テロリスト側の男女のドラマが若干冗長か。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-10-18 17:22:30) (良:1票) |
43.《ネタバレ》 殺人という任務に疲れきったイスラエル諜報部の主人公と、彼らの国による暴虐のために生まれた美しい女テロリスト、そしてベトナムで精神を病んで母国に裏切られたかつての英雄。この影のある正義の味方と人間味のある悪役たちの造形が、わかりやすい娯楽作と一線を画す深みを与えている。犯罪者側に肩入れしてしまうという点では『ジャッカルの日』以上で、作戦に失敗の兆しが見えると思わず歯噛みをしてしまったくらいだ。 トマス・ハリスは荒唐無稽にならないぎりぎりのリアルに踏みとどまるのが上手な作家だが、その長所は本作でも最大限に発揮されている。とくにあのダーツを利用した究極兵器は奇妙だが、なさそうでありそうな不思議な現実味を持って観るものの記憶に刻みつけられる。 ベキム・フェーミュ演じるテロリストたちのボスとの銃撃戦は本筋とは直接関係していないのだが、この場面が本作を傑作たらしめているのだと思う。カットしても本筋には影響のないエピソードが入ることで世界観に奥行きが出ているし、圧倒的に不利な状況に置かれても不屈の意志と天才的な技術で捜査側に壊滅的なダメージを与えるテロリストの存在感は強烈だ。捜査側の不手際と敵側の有能さが対照的に描かれ、ここでもまた単純なヒーロー対テロリストの図式を微妙に崩している。この点、現在のハリウッド映画の幼稚なアメリカンヒーローとは別物だ。 唯一惜しいのはクライマックスで、急激に動的になる映像に興奮できればよかったのだが、現在ではありがちなアクションに感じてしまった(たぶん公開当時であれば楽しめただろう)。おまけに爽快なラストシーンがそれまでの展開とはちょっと不釣合いで、なぜこんなふうに料理したのかと疑問が残った。結末にもう少し苦味があれば(たとえばテロリストたちの生き様を偲ばせる場面を入れるとか…)『ジャッカルの日』にも負けない大傑作になっていたと思う。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-03-03 13:28:18) (良:1票) |
42.腹に重い拳を喰らってしまい足が止まってダウン寸前の憂き目にあわされた見ごたえの塊のごときシリアス・アクション。動揺したマルト・ケラーがダーンをなじるシーンが異常にリアルで印象的でありました。それにしても復員病院でぞんざいな扱いを受けるダーンが忍びないのぉ。まったくあの受付はなんじゃあ!?あれはいけんのぉ、だめじゃのぉ、ネバーハプンじゃっ!!byナンバーワン・バンド。 【モートルの玉】さん 8点(2003-12-06 01:07:14) (笑:1票) |
41.公開一週間前に突然中止となるという(当時、新聞にも大々的に報道された)前代未聞の曰くつきの作品である。それはドラマの背景にイスラムとアラブとの問題が絡んでいて、ストーリーとしてはイスラエルへのアメリカの武器援助に抗議する為、アラブのテロリストが満員のフットボール会場を襲うというもの。で、中止の直接の原因となったのは、「イスラエル問題を支援する会」と名乗る過激派グループによる、アジビラが各所に撒かれたことに端を発し、その後、脅迫状が上映予定館に送られた為である。このJ・フランケンハイマー監督作品は、エキソチズム、ドキュメンタリータッチ、バイオレンス、国際諜報もの、パニック、空中アクション、そしてチェイスといったヒット要因を取り入れ、見事に一本の作品に仕上げている。特に無数のダーツが一瞬のうちに四方に発射される、創作の大量殺戮兵器を砂漠での実験を克明に描くシーンや、主人公3人が根本的に生きる事の執着がなく、社会からはみだし、死も暴力も恐れず繰り広げる戦いがもの凄い迫力でせまってくる。公開されていれば大ヒット間違いなし、ベストテンにも入っていたであろうこの作品、今ではビデオでしか見れない事に苦々しい思いをしてる人も多いと思います。 【ドラえもん】さん 9点(2000-10-01 23:34:26) (良:1票) |
40.《ネタバレ》 期待していなかったけど面白かった。 テロリスト側の視点が多く描かれていたためだんだんテロ側を応援してしまっている自分に驚いた。 テロリスト二人に感情移入してしまって観ていて複雑な気分にさせられる。 ただ後半の銃撃戦のチープさがもったいない。 ラストの飛行船爆発もジェームスボンドばりのアクションでちょっと興覚めした。 【Dry-man】さん [インターネット(字幕)] 7点(2021-04-17 23:27:00) |
39.《ネタバレ》 レクター博士シリーズの猟奇犯罪もののイメージが強いトマス・ハリスだが、緻密な取材と膨大な資料の数々で積み重ねたリアリティに、ジャーナリスト出身ならではの原作力が光る。その素材を余すことなく活かし、イスラエル諜報員vsテロリストの攻防を公平な目線で緊迫感たっぷりに描写したフランケンハイマーの職人技も負けていない。普通なら盛り込むだろう幼稚なメロドラマを排除し、余計な後日談をバッサリ切り捨てる潔さを買う。30数年経って、まさか911が起きるとは誰もが思わなかっただろう。午前十時の映画館で見たかった。 |
38.《ネタバレ》 観客8万人皆殺し計画に向けて一歩一歩前進する過程に、作戦は不成功なんだろうと解っていても、復讐の負の連鎖の遣る瀬無さに引き込まれ肩に力が入る。嗚呼それなのに! 飛行場に引き返してからラストまで、それまでの緻密さがウソのようなヤケッパチ感満載の突撃模様に唖然とし、味わいも木端微塵に吹き飛ばされてしまった。「大列車作戦」の監督だっただけに残念さがひとしおつのる。 |
37.あそこにいきなり警察ヘリは都合よすぎじゃね。 【マー君】さん [DVD(字幕)] 6点(2017-02-04 11:29:52) |
36.《ネタバレ》 本来なら追い詰めるロバートショウがヒーローで、テロの二人が悪役なはずですが、平等な視点というより、ややテロリスト側の視点で描かれているところが面白かった。 気がつくと80000人を殺そうとしているテロリストを応援している自分に戸惑いました。 ただ、ブルースダーン演じるランダーがなぜテロに加担することになったのかをもう少し掘り下げて欲しかった。そうすればさらにテロリストを応援したくなったと思うけど。 【仁】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-01-15 19:36:50) |
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35.《ネタバレ》 それにしてもトマス・ハリス。すみません、もはや「ハンニバル・ライジング」は読んでないし読む気もない(「ハンニバル」で、こりゃダメだと。そりゃ思うわな)。最初の作品「ブラック・サンデー」はやっぱりイイですよね、面白い。面白いったって、どっちかというと不愛想で淡々とした内容、ジワジワとクライマックスの盛り上がりへ進んでいく。この点は、映画化作品である本作も同じ。 ですが、原作小説と映画とでは、受ける印象がやや異なります。これは多分、犯人側と捜査側を並行して描きつつも、原作の方がより、犯人側の描写が濃いような気がいたします。犯人の来歴・人となり・行動が詳しく描かれた結果、犯人像や犯行動機にリアリティを持たせ作品に厚みが生まれるということもあるのだろうけれど、それ以上に、クライマックスでいよいよ決行されるテロが、それまでの綿密さをかなぐり捨てるような、破れかぶれの「もうどうにでもなれ」という破滅感を感じさせるんですね。 いやまあ、映画のクライマックスは、別の意味で破れかぶれかも知れませんが(笑)・・・。この突然の荒唐無稽なアクション、実に捨てがたいオモシロさがあります。ヒーロー面とは言い難いロバート・ショウが演じるカバコフが、着々と進める捜査、まさかその先にこんな曲芸アクションが待っているとはねえ。意表を突かれます。 ジョン・ウィリアムズの音楽も、目立ち過ぎずしかし手堅い仕事で、好感が持てます。 【鱗歌】さん [DVD(字幕)] 8点(2016-01-31 08:02:25) |
【ケンジ】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-04-05 16:29:04) |
33.テロは絶対にいけないことだが、だからといって撃ち殺せばいいという考え方ではいつまでたってもテロはなくならない。テロが起こるのは深い理由があるはずなのだが、この映画ではほとんど示されてないし終盤はアクション娯楽映画になってしまっている。映画だから個人プレーになるのかもしれないがもう少し組織だったチームプレーでないと・・・。パレスチナ問題が出てきたのでそれを考える映画かと間違ってしまった。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 3点(2015-02-14 21:22:25) |
32.《ネタバレ》 飛行船がスタジアムに飛び込むシーンは、今ならCGで小器用に映像にするんだろうけど、むしろ神様の視点のような俯瞰した映像無い方が、かえって臨場感あるんだね。演出によっては、もっと面白くなったかも・・。スピルバーグあたりにやらせたら、もっと傑作になったかもね。 【トント】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2014-02-01 07:08:40) |
31.《ネタバレ》 不謹慎ではありますが、いつの間にかテロリスト側の作戦成功を心のどこかで願っている自分に驚きです。この映画の最大のポイントは、テロリスト側を完全な「悪」と断じていないことでしょう。テロリストの主犯の二人は、まるで被害者のような描かれかたなんです。戦争の被害者です。ダーリアが黒い9月に所属するまでの経緯や、マイケルが戦後味わった苦汁を考えれば、一心不乱にテロ計画を進める二人に同情の念と共感を覚えてしまうのです。 ただし、テロ行為そのものは、やはり「悪」なのでしょう。どんな境遇であっても、無差別殺人が許されるはずがありません。だからこその、あの結末なのだと思います。 また、あれだけ作戦決行までの準備に時間を費やす場面を映しながらも、映画が冗長になっていないところも素晴らしいです。電話爆弾。身代わりになって殺される友人。テロ計画の実験。街中の銃撃戦。いちいち目が離せません。そして各エピソードが挿入されることで、この計画自体がいかに困難なものであるかということをいちいち実感します。するとほーら、いつの間にかテロリストの二人を応援しちゃうんですよ~。反省。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-11-16 03:28:23) |
30.《ネタバレ》 サスペンスを期待していたので、アクション要素が多くて期待外れ。後に調べたら、アクションで有名な監督らしいので仕方ないが。 ラストの導火線、どう考えても火が付くの遅すぎだろ(笑) 火がゆっくり上がっていく間に民衆も少佐も助かる、ってご都合主義すぎた。 |
29.《ネタバレ》 なーんも考えず観た映画だが、、、これは面白いね~。静かで淡々と進みつつも、熱いお互いの攻防戦はなかなか見応えがありました。巨大なスタジアムの撮影とかどーやって人集めたの?と思わせるシーンやヘリから人ぶらさがりのとこなど、スゴイよね(感心)。でも惜しいなと思うのは、最後辺りが大味な展開で、つか導火線に火をつけるのにあのライターは無いよなぁ(もう少し確実なものを使おうよ…)。しかしなんのかんの言いながら最後まで一気に観てしまうほどの惹きつけるものは大いにあった次第でゴザイマス 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-09-20 21:52:58) |
28.《ネタバレ》 プロットやドキュメンタリー調の映像を使っているところなど、『ジャッカルの日』に雰囲気が似ているなと感じました。『ジャッカルの日』ではターゲットはひとりなのと対照的に狙いは8万人の観衆を皆殺しとグレードアップさせていますが、クライマックスが大群衆の集まる場所で、そこに向けてサスペンスを盛り上げるというあたりはそっくりです。まあT・ハリスの原作自体がF・フォーサイスの『ジャッカルの日』をパクった様なものなので、こうなるのは当然と言えば当然でしょう。 でも映画の出来自体は、F・ジンネマンの『ジャッカルの日』には到底及ばなかったと言えるでしょう。まずスーパーボウルの会場をねらってテロを企む動機が良く理解できない。現在のアル・カイダじゃないんだから、アラブゲリラがイスラエルではなくアメリカ国内であんな大規模な無差別テロを計画するなんてちょっと不自然です。そのテロ自体にしても、しょせんは飛行船なんだからヘリから船体に銃撃されればあっという間に撃墜ですよ。でもなぜか誰も撃たない。この映画の脚本にはこの種のサスペンスに不可欠な緻密さが欠けていて、ちょっと荒っぽすぎます。ラストで飛行船が爆発するシーンも、あまりにチープな映像だったのはがっかりでした。 余談ですが、M・ケラーが看護婦に化けてR・ショーの病室に入りこもうとするシーン、思わずニヤリとさせられました。『キル・ビル』でD・ハンナがアイパッチを付けた看護婦コスプレをするシーンとしてタランティーノが見事にこれを再現しているからです。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-05-11 20:59:36) |
27.素晴らしい。 傑作です。 でも、今見ると、やっぱり古臭さは否めません。 畳み掛けるようなカット割りや、ドキュメンタリータッチの進行具合でグイグイ引き付けますねえ。 正直なところ、最後のロバート・ショーの活劇ぶりには、ちょっとがっかりです。 ロバート・ショーはアクションよりもシブイ演技のほうが似合いますわ。 【ミスプロ】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-09-19 22:04:42) |
26.《ネタバレ》 全編渋くてストイック。ドキュメンタリーな手触りのせいもあって人の死がリアルで恐ろしい。ダーツ爆弾をテストする場面、あれが一番恐ろしかった。人の狂気も蜂の巣のように穿たれた無数の壁穴から差し込む光線も、もう強烈で忘れがたい印象を残しました。あ そしてこの年代の映画には珍しく、女をピンナップ・ガール扱いしていないのが斬新。きゃーという顔ひとつせず、さくさくと任務を遂行する彼女もまた美しいけど恐ろしい。 【tottoko】さん [ビデオ(吹替)] 7点(2012-05-29 23:50:19) |