2.《ネタバレ》 思えば警官は映画史を通じてもっとも古くからの登場人物であった。野良犬を追いかけて道を複数の警官が追っていくところなどキートンの時代をほうふつとさせる。しかしサイレント時代は追いかけられる側からもっぱら見ていたが、これは追いかける側の話。『警察日記』的なほのぼのとした体裁を取りながら、変にとげとげしいものも現われてくる。『警察日記』と違うのは、庶民の暮らしがきれいにカットされていて、あくまで警官そのものの話というとこ。野犬を追いかけて毎日くたくたになり、妻には嫌味言われ、ケツには狂犬病予防の注射をうたれ、犬を取り上げて子どもにはジワッと泣かれ、ほんとに自分はやりがいのある仕事をしてるんだろうか、という気分。その“やれやれ”が“むしゃくしゃ”へと膨張し、取調べ中の暴行へとつながっていく。そういう主人公への同情もなくはないが、描写はけっこう突き放していて、そこらへんにとげとげしさがある。体制批判にまではなってないが、体制PRではない。日々の中のささやかな不満やささやかな徒労感、こういうものを映画の対象にするまでに、この頃の中国映画は進化したんだな。