151.《ネタバレ》 意外な低評価に驚いたが、信頼するビグロー監督の作品なので、期待をこめて鑑賞。結論としては、オスカー受賞も納得の傑作だ(正直、『アバター』が受賞すると思ったが)。戦地での爆弾処理という精神崩壊ギリギリの状況で生き延びる唯一の方法は、「戦争中毒」になること。だからジェームズは、任務を終え帰国しても、また戦地に戻る。「子供たちが犠牲になっているから」などともっともらしいことを言っているが、それがただの詭弁であることは、人間爆弾にされた少年を知り合いの子供と勘違いし、ありもしない「犯人」を追跡したり、タンクローリーの爆破犯を独断で深追いし、仲間を負傷させたことからも明らかだ。彼は戦争をやめられないのだ。小便ちびりそうなほどヤバイ状況でしか生きていることを実感できない。ヘルメットを残して粉々に吹き飛ぶまで、彼は戦地を渡り歩くことだろう。そんな状況を作り出した「現代」、いつまで経っても殺し合うことをやめない「人類」。ここには、「反戦」などという言葉では片付けられないほどの逼迫した現実が描かれている。 【フライボーイ】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-03-08 21:06:55) (良:4票) |
150.《ネタバレ》 こりゃ、久しぶりに0点だ。何でって、画面がブレ過ぎて頭が痛くなり観賞どころじゃ無くなったから。それだけでマイナス点にしたいくらい。演出として手持ちカメラのブレを活かすのは流行かもしれないけど、これは明らかにやり過ぎ。比較的スクリーンの近くに座ったことも関係しているのだろうが、今回ほど早く終わってくれと願った映画は初めてだった。あえて、そのブレに関して言っておくと、アクション系のシーンだけでなく全編を通じて無理矢理に動かしている。しかも、被写体だけではなく、その背景をブラすことを狙って焦点距離の長いレンズを選択していた。まるで動体視力の訓練だ。臨場感の演出の前に、自分には拷問だった。かろうじてストーリーは追っていたが、そんな状態だったもので、どうしても感情的な意見になる。あんなイカレた奴は極々少数派だろうし、中味はパチンコ中毒と同じだぞ。足に重症を負ったエルドリッジ君と同じ気持ちだ。どうも、例のアメリカの賞は戦争で精神に変調を来たす映画に甘い点をつける傾向があるようだ。ひと昔前のベトナムものは理解できても、これはいただけない。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(字幕)] 0点(2010-04-11 02:02:57) (良:3票) |
149.《ネタバレ》 鍛え抜かれた軍人に一撃を入れたイラクのオバちゃんに驚きました。 【らんむ】さん [映画館(字幕)] 5点(2010-04-02 00:06:49) (笑:3票) |
148.《ネタバレ》 戦争映画の傑作と個人的に思っているのですがなんかいまいち日本での評価が低い。 アメリカの言い訳映画とか戦争中毒の男の映画とか、みんな勘違いしてますよ。 この映画を批判する人はだいたい反米思想という自分の主観で見ているように感じます。テロリストが仕掛けた爆弾を解除することのどこが戦争賛美なのでしょうか? これは主人公の成長の物語なんですよ。最初は中毒のようにゲーム感覚で爆弾処理をしていく主人公。「自分は何でもできる」という子供がもつ万能感をいまだに持っている。しかし、中盤から子供の死体にブービートラップをしかけるテロリストの残虐さ、自分よりインテリなイラク人がいることに気付く。つまりイラクの現状をまったく理解していないことに気づくんですよ。そして、イラクの不条理な現実に苦悩するなかで爆弾処理に失敗し、仲間を誤射し、爆弾を仕掛けられたイラク人を救えない。すべてが狂っていく。 任務を終え、アメリカに帰り平凡な日常をすごしていく中で幼い息子に言う「大人になれば本当に好きなものは1つか2つ。オレは、1つだ。」そして戦場に帰っていく。 戦争中毒だから戦場に帰ったのではなく、主人公は自分のできることを悟ったんですよ。失敗はしたが、それでも自分には爆弾処理しかない。それが最良のことだと思ったから、もう一度イラクに戻っていったんですよ。最初の表情とラストの表情は明らかに違う。 【のび太】さん [DVD(吹替)] 10点(2010-09-02 08:32:39) (良:2票) |
147.《ネタバレ》 何が伝えたかったのか?戦争は麻薬??麻薬と言うからには戦争を体験した人のほとんどが戦争に溺れるのではないのか?戦争を体験したことがないので正否のほどは分からないけど、そうではないのではないのか?狂気的な一部の人間と戦争により莫大な利益を得る一握りの権力者を除いては戦争に溺れるとは考えにくい。戦争を肯定する映画がアカデミー賞を受賞するとは思えないから反戦映画なんだろうとは思うけどアカデミー賞を受賞する映画ではないと個人的には思う。だからと言ってアバターがアカデミー賞に相応しいかと問われるとそうでもないのは事実。 【いっちぃ】さん [映画館(字幕)] 3点(2010-04-09 23:47:47) (良:2票) |
146.《ネタバレ》 いや~、いい映画を見せてもらいました。 さすがにアカデミー賞をとるだけの事はありますね。 映画を観てるというより自分自身も一緒に戦場で爆弾処理をしてるような緊張感がずっと続きました。いい意味で疲れましたけど。 3Dを使わずとも莫大な予算を使わずとも”ストーリーすらなくても”いい映画は作れる。 アバターではなくこちらだった事は、これからの映画の方向性としてとても意義があると感じる。 【Pea Shan】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-04-05 22:50:01) (良:2票) |
145.《ネタバレ》 私が2点を付けたアバターを下してアカデミーを取った作品と聞き『よくやった!』と歓喜しながら視聴・・・・・・・う~~む・・・。 中途半端な印象。銃撃戦に関しては『ブラックホークダウン』より劣り、戦場に赴いた兵士の精神状態に関しては『ジャーヘッド』の方が遥かに分かりやすく生々しかった。上記作品はお互い『兵士の精神状態』、『銃撃戦』を取り払い逆に『銃撃戦』と『兵士の精神状態』を徹底的に追及していた(だから面白かった)が、これは両方に手を出してしまい、結局どちらも描写不足で詰らない作品になり下がってしまった。てか両方やろうとしたら2時間じゃ短いって、それこそ『地獄の黙示録』みたいな(詰んないかどうかは置いといて)長い作品にしないと無理(プラトーン?あれは別格!!)だし、本作に関しては無駄なシーン(酒飲んで暴れる、爆弾処理の回数等)が多すぎ。 爆弾処理の描写も一切説明が無く、何がどうなっているのか理解不能。いちいち説明しろとまでは言わないが、せめて処理がわかりやすい爆弾を出してほしかった。 冒頭で『戦争は麻薬だ』みたいなこと言われるが。登場人物が『麻薬に取りつかれた者』と『そうでない者』しか出ないので『麻薬に侵されていく過程』が分からない。 唯一良かったのはラスト。『シリアル取ってきて』と言われるが、ズラッと並ぶ色々な種類のシリアルを見ながらイラつく主人公。戦場では(たぶん)『○○しろ!』と言われればそれに対する行動は一つしかない。そういったシンプルな世界に慣れた主人公に平和な世界(シンプルじゃない)は合わなかった、だから彼は戻った。私の中ではそう理解しており、ここは非常に面白かった。でもそこだけ。 あと音がうるさい、銃撃戦だからって耳が痛くなるほど大音量にする必要なし。 そんなワケで、突出したものが何一つない駄作とまではいかないが無味無臭(不味くもない)な作品。まぁアバターより短かったし、今日は暖かく帰りも苦じゃなかったので大甘の4点。 【ムラン】さん [映画館(字幕)] 4点(2010-03-21 02:28:23) (良:2票) |
144.《ネタバレ》 さすがアカデミー賞。見事にベタな映画。ストーリーのベタさではアバターと同じくらいだと思う。だからこそこの映画がアカデミー賞ってのが一番納得いく。アカデミー賞にひねった映画なんてない。 メッセージもほんとに予想を裏切らないつくりで、反戦でもなく戦争格好いいでもない。 でも、現場の兵士達にはどんなに命を賭けて頑張っても戦争を始めることも終わらすことも出来ない、ただただ麻薬みたいに抜け出せなくなっていく。 だから、どうにかするにはアメリカが変わらなきゃいけないっていう反戦的なメッセージも感じるなぁと思ったんだけど。あんまりみんなは感じてないみたいね…。。 戦争ってめっちゃ怖いよ→心臓ばくばくしちゃう→逆に病み付きになる→そこが唯一の居場所 主人公の人間臭さは確かにちょっともったいない感があった。それを抜きにしてもあれほどの緊迫感を演出できるのはベタな展開で観客を引き込んで映像、音、音楽がめちゃくちゃ効果的に使われているからで、映画として完全に出来上がっていると思う。 ぜひ、たくさんの映画好きに観てもらいたい映画。 |
143.リダクテッドが低評価でこちらがオスカー受賞になるのがむかつく。ほどんど被害がなかったのに壊滅的なダメージを受けたような演出のブラックホーク・ダウンでも高評価だからこれをきっかけにアメリカ人寄りの戦争映画が沢山作られそうな予感がするね 【hrkzhr】さん [映画館(字幕)] 3点(2010-03-09 21:10:24) (良:2票) |
142.ハッキリ言わせていただくが、これはれっきとしたエロ映画です。過剰なまでのオスの表現が最後までみっちり詰まってます。男の記号【無茶・無謀・大酒のみ・無意味な裸】が満載。個人的にはかなり萌えましたが、日本女子にはうっとうしいだけかもね。気になったのは全体にわたる手ブレ映像。ライブ感があるけれど、だんだん見るのに疲れてくる。それでもスクリーン全体から匂いたつようなオスの香りでチャラになります。なんていやらしい。 【ケルタ】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-03-08 11:35:14) (笑:2票) |
|
141.《ネタバレ》 主人公が「定年まで勤め上げて晴れて自由の身になったけど、家にいてもやることがなく奥さんに邪魔者扱いされる。ああ、こんなことなら仕事してた時のほうがよっぽどよかった」っていう、よくいるリタイア後のサラリーマンとダブって見える。戦争映画というより自分の中での仕事のウェイト(生きがい、存在価値)と、それを家庭と天秤にかけたときあなたはどうしますか…ってことを考えさせる映画なんじゃないのコレ。 戦場に嫌気がさしたサンボーンが息子が欲しいというシーンとか、爆弾を体に巻き付けられた男が家族のことを延々しゃべって命乞いしてるシーンなど、振り返ってみると「家族」というキーワードがあちこちで見られたように思える。主人公自体も、任期が終わって家に帰れば優しい夫や父親をちゃんとやれてるし、奥さんを侮辱されたらブチ切れるなど、家族に対して確かな愛情を持っていることは見受けられる。でも仕事とどちらを選ぶかとなると話は別。仕事場が戦場で死の危険がついて回る爆弾処理という仕事をしているから異常に見えるだけで、こういう人は割とどこにでもいるんじゃないか。金型職人とか調理師を主役にしても同じような話は作れたと思う(面白いかどうかは知らない)。 「仕事」っていう視点でみて面白かったのは、人間爆弾発見後に主人公のすることが何もかもうまくいかなくなるくだり。私もおぼえがあるけど、いい仕事ができる時って心の中は無、頭と体が勝手に動いて適切な行動をとってくれるような感覚がある。「お客様に最高の商品を」とか高尚なこと考えちゃうと100点満点中60点の仕事を量産することになってしまう。物語後半はあるあるネタとして楽しませていただきました。 【池田屋DIY】さん [DVD(字幕)] 8点(2017-07-19 08:09:42) (良:1票) |
140.《ネタバレ》 恐ろしいほどの緊迫感。砂漠での戦闘シーンはこれまで見た事がない演出、これってリアルなのか? この現実が余りにも自分たちの日常と違い過ぎるのでこれがリアル(この場合実際におこなわれている現実)なのかも想像もできない つまりどちらかの(アメリカ側かイラク側かの)立場に立っているフィクションであるという判断すらつかない、これがこの作品の一番の問題点ではなかろうか 戦争が身近な外国人ならば肌で感じられるのかもしれないが ただ、単純なアメリカ側に立ったイデオロギー賛美ではないことはわかる、ラストで主人公は自分の子供に戦争が好きだと告白している そして嬉々として又戦場に戻るシーンで終わる、これは少なくともアメリカの戦争好きをシニカルに描いていると思う 一部の人が言う様に、アメリカのプロパガンダ映画だとは思はないが、アメリカ側のイデオロギーを否定するものでも無い 女性監督らしい控えめな反戦映画じゃなかろうか 【にょろぞう】さん [ブルーレイ(字幕)] 8点(2014-01-02 16:19:52) (良:1票) |
139.《ネタバレ》 主人公が言う「皆、何かを恐れている」という台詞もあるように、僕はこの映画を「疑心暗鬼」の物語だと受け取りました。 爆弾解体モノでは、まず最初にその爆弾の威力を見せつけ、その後の緊張感を持たせるのが定番のパターン。この映画も例外ではなく定番通りの演出をしています。このシーンがあるから、芋づる式に爆弾が目の前に現れるシーンはゾッとするし、防護服を着ていたって安心できないハラハラを味わいます。しかし、冒頭で刷り込まれたのは爆弾への脅威だけではなく、他人に対する「疑心暗鬼」も含まれています。これ以後、米兵たちの人を疑う心がどんどん肥大化していくんですね。 どこからテロリストが仕掛けてくるか分からない。何の罪もない一般市民にでも銃を向けなければならない。味方であってもミスをするかもしれないし、裏切るかもしれない。装備は欠陥があるかもしれない。敵か味方かはもちろん、イラク人たちの顔の見分けも付かず、何を考えてるのかも分からない。 映画中盤では、爆弾の話がどっかにいってしまいますが(笑)、「疑心暗鬼」の物語だと思えば筋はしっかり通っていると思います。 「人を疑う心が、暗闇に鬼を見る」というように、何もない暗闇や、自分が理解できない人間の中に鬼を見いだし始めると、自分自身が鬼と化している。米兵が銃を構える度に、アメリカ自身が鬼と化しているように見えてきて、考えさせられます。 元軍人の方が「不正確」と言ったそうですが、多分リアリティを重視した作品ではなく、もっと観念的な作品なんじゃないかな、と思います。 「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。」 これは、この映画を観ている観客にも当てはまるんじゃないでしょうか。この映画の中にいる鬼を見ようとして、自分自身が鬼と化しているんじゃないかと、ちょっとゾっとします。まるで鏡を覗き込むような作品。賛否両論沸き起こるわけですね。 「ハートロッカー」というタイトルや、「戦争は麻薬だ」という序文からすると、この解釈はズレてるところがあるのかもしれませんが・・・。 ラストシーンは、何もない道(爆弾があるんでしょうが、映像では映っていません)を、主人公が黙々と向かっていく、そして「任務終了まで365日」のテロップ。答えも出ずに永遠と続く結末に、めまいがしました。 【ゆうろう】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-01-24 03:57:59) (良:1票) |
138.《ネタバレ》 冒頭、遠隔操作のロボットは頼りなく壊れ、連携のとれたチームから頼りになりそうなガイ・ピアースが直に爆弾処理に向かうが失敗し、彼は死ぬ。この仕事はチームの力量など関係なく常に死と隣合わせのなのだと物語っている説得力のあるシーンです。しかし、主人公のジェレミー・レナーが登場してからは物語もカメラも焦点がいささかブレているように見えます。 例えば、爆弾処理班の物語なのに狙撃戦闘の方が面白くなってしまっていたり、暗がりの追撃シーンはどこで何が起こっているのか良く分かりません。そして何より思うのは、これはまだ序章に過ぎないのではないかということです。極めて危険な仕事であると説明し、平和で退屈な日常に生き甲斐を失い虚無感に駆られ、戦場へ舞い戻っていく…。これは〝戦争とは麻薬〟と最初にわざわざ言ったことそのままであり、物語が始まっていません。防爆スーツに身をつつみ爆弾処理に向かうここからこそが、むしろ本題ではないのかと思うのです。 それからもう一つ、ガイ・ピアースやレイフ・ファインズが登場するにもかかわらず、彼らスターの命も無名の役者同様あっさり奪われるのは、おそらく戦場ではあらゆる者の命が同等であるということなのでしょう。しかしこれは現実を装っているだけで〝映画〟なのです。もちろんリアリティは必要ですが、例えばスピルバーグの「プライベート・ライアン」ではトム・ハンクスご一行の命の方が無名の兵士たちの命よりも重要なのは、映画が虚構であるからです。スターを敢えて退場させるのも一つの方法ではありますが、映画である以上、私はスピルバーグの方を支持します。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 6点(2012-01-17 18:42:46) (良:1票) |
137.《ネタバレ》 あの軍曹は戦地から帰ってくれば、オーラは消え、ただの凡人になってしまう理由は、彼が簿記の資格を持っていないことや、社労士の資格を持っていないことにも少しだけ関係があるのですが、ようするに戦地では優秀な軍曹が、ネクタイをして会社に出勤すれば、年下の大卒のガキから「仕事が遅いぞ!」と叱責されてしまうわけで、つまり軍人としてのスキルは最高のものを持っているが、サラリーマンとしてのスキルは雑魚に等しいということ、それだったら、もう一度、戦地に行き、栄光の軍曹さまとして、他人に尊敬されたいと思う気持ちが芽生えるのは自然な成り行きなのですね。特にアメリカのばあい、戦地から帰ってきた退役軍人の大半が、うつ病で苦しんでいる現状があるのですから、帰還した兵士の自殺が異常に多くて、その事実を知って欲しくて私が言いたいことは「戦争が麻薬」というキャッチコピーは少し誤解されやすいと思うことです。けっして彼らは戦争がしたいわけではなく、戦争しか自分の存在意義を見出せないという社会的な問題がそこに見え隠れするのです。それからこの映画をみていて日本の神風特攻を思い出しました。「イスラムの自爆テロと、神風を一緒にするなヨ!」と思うかもしれませんが、敗者の論理など、この際どうでも良いのです。アメリカの視点では、イラクも、日本も、自爆も、神風も、クソも、全部同じであり、率直に表現すれば、それはクレイジーなのである。そういえば日本には、男はつらいよ、という映画が昔ありましたね?さしずめ、この映画は「アメリカ人はつらいよ」というニュアンスが込められていました。すべての人間は相対的な悲劇を抱えている。これが世の法則なり。最後に爆弾を抱えて出てきたイラク人、彼は被害者でしょう。むしろ善人でしょう。しかしアメリカの視点では、彼は変人扱いなのです。突然、車で侵入してきたイラク人もしかり。映像のなかでイラク人が全員テロリストに見える、それはけっして客観性を排除した手法ではなく、あくまでも、アメリカの視点にたった、アメリカ兵の、消耗しきった心理状態を表現している。アメリカの病み具合がワカリマスカ?分からない?それならそれで良いです。この映画、けっこう難しいですよ。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-09-14 20:48:21) (良:1票) |
136.戦争に賛成とか反対とかどうでも良くて、ただ単に戦場での爆発物処理班の日常を淡々と描いた作品。ほとんどドキュメンタリーの域だが、主義主張のしっかりしたなかなか面白い「映画」だと思った。 主人公は危険も顧みず粛々と爆発物を処理していく。平和な国で暮らす人間から見ると、自分の命を驚くほど軽々しく扱うという意味で、彼の行動はどちらかというと狂人のそれに近い。ただし、この映画はそのような人間が存在するということを何ら特殊なこととして映し出さない。そして、観客はなんとなく彼の心理状態を推測し、その行動に納得してしまう。自分も戦場に送り込まれて、爆発物の処理が任務だとすればこういう風にやってしまうかもしれないと思う。そう思わせる主人公の描写がうまい。 爆発物処理班という眼の付け所も良い。テロとの戦いでは、突撃や狙撃などの戦闘行動よりもこのような分野こそがリアルでスリリングだろう。 【枕流】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-03-23 17:26:08) (良:1票) |
135.なぜか劇中、主人公に振り回される同僚サンボーンの気持ちになって見てました。こういう狂気スレスレの主人公というのは戦場ではたいへん優秀だったりするわけですが、これまでの戦争映画にありがちだったヒロイズムを徹底して廃した映像から、この主人公が戦場においても極めて迷惑な存在であることが伝わってきます。そんな主人公がヒーロー化しかける後半の展開がお見事。ヒーロー化したって結局は迷惑度倍増で部下に罵られる始末です。このあたりから、僕はひたすらサンボーンの無事の帰還を祈ってました。そんな私は、この作品の「真意」をつかみ損ねていると思いますが、映画的にちゃんと見せ場を作って盛り上げつつ、同じようなテーマを描いていた『地獄の黙示録』やら『プラトーン』のほうが断然よかったんじゃないかなと思いました。 【ころりさん】さん [DVD(字幕)] 6点(2011-01-16 00:45:52) (良:1票) |
134.《ネタバレ》 アクション好みの会社の同期が良かったというので名画で観にてきました。本作品だけではさして目新しさを感じない作品だったかもしれませんが、同時上映の『マイブラザー』を観たことにより、戦場に行くことを職業とする人々の感覚が胸に迫ってきました。イラク・バクダッドで爆弾処理班のチーフを務める主人公は、経験と勘にものをいわせて修羅場を乗り切り続けます。彼が死なないのは職業的能力の高さの現れであり優秀な兵士であることが伺えます。舞台となるイラクは、戦争は終結しているとはいえども、米兵は常に狙われているという緊張感と、爆弾がいつ炸裂するかというスリル、そこそこ迫力のあるアクションシーン(中盤の狙撃シーンは良い)で中だるみしません。印象的だったのは帰国し妻と行動を共にする場面です。シリアルを買っておくように伝えられた彼は、数多くのシリアルが並ぶ棚からひとつを選ぶことができません。自宅のキッチンで妻に職場(戦場)での出来事を話している際、にんじんを切るよう頼まれた際、実に不満気に、ぎこちなさそうに包丁を手に取る姿です。知悉している装備からひとつを選ぶこと、訓練と実戦で得た経験から命令を下すことはたやすくできても、日常生活における選択と実践ができない。狙撃シーンで新兵に飲み物を持ってくるよう指示するシーンとの対比が印象的です。命令することに慣れていても、命令されることはなく、職場(戦場)での有能さを軽くあしらう妻への苛立ちのようであり、制服(戦闘服)を着ていないことへの落ち着きの無さの現われのようでありました。再び職場(戦場)へ戻る彼は、仕事中毒でもなんでもなく、煩わしい家庭から遠ざかろうと仕事に逃げるサラリーマンの姿のようであり、某大国の姿と重なるようでもあります。『マイ・ブラザー』と続けて観たことによる+1点で、6点献上。 【さめがい】さん [映画館(字幕)] 6点(2010-12-26 23:19:30) (良:1票) |
133.うわ。つまらん。と言って済ませる訳にいかないんだろうね、こういう作品がオスカー獲っちゃうんだから。戦場の映像が逐一、これでもかこれでもかと流れてくるようになって、ホンモノの映像の持つリアリティに、すっかり圧倒されちまい、作り込んだ虚構であるところの「映画」に対する懐疑が生じた訳だ。アメリカ映画界が自信を失った訳だ。怖気づいた訳だ、とまで言ったら言い過ぎか? そういう一連の流れにおいて、つまるところ、3Dに挑戦した『アバター』と本作とのオスカーレースってのは、「作る」立場と、「壊す」立場との、一騎討ちだったのね。そして結局、「壊す」方に軍配は上がった。でも、「壊す」だけじゃあしょうがない訳で。それとも、映画をいったん解体した上で、映像美学を再構築してみよう、ってか。「これは実際の映像です」的な映像の持つ力。もっとも、「ホンモノの映像のリアリティ」って、あくまでホントにホンモノであるからこそリアルなんだけど・・・。そういや対抗馬の『アバター』ですら、同様の手法を用いたシーンがあったっけ。でも、それに頼り切らない賢明さを持っていた分、『アバター』には救いがあった。本作は、映画を壊し、壊しただけで評価を受けてしまった。勿論本作にも作為はある、あるけど・・・面白くない(スーパーマーケットで立ち尽くすシーンなど、本気でアホかと思った)。これでいいのか、アメリカ映画。 【鱗歌】さん [DVD(字幕)] 5点(2010-12-20 22:52:07) (良:1票) |
132.《ネタバレ》 妻投稿■この映画の主人公は戦争に狂ってしまった・・・・のではなく、戦争に適応したのだと思う。この映画の主人公は決して狂ったわけではない事を私は主張したい。そのうえで評価すると。■私の友達の強姦被害者の言葉を、映画を見て私はずっと思い出していた。「私たちが戦わなければいけない感情は、怒りでも憎しみでもない。無力感だ」という言葉だった。暴力、虐待など圧倒的かつ予想不可能な力による死の恐怖に向かい合わざるを得ない状況下で、人間は無力感に押しつぶされやすい。実は人間の愚行、自分を傷つける、他人を傷つける、人生をダメにするという様々な悲劇のかなりの割合が「無力感」によって生まれているのではないかと私は思う。主人公は人間の生存、自己保護本能によって戦争に適応した。しかしそんな中でも彼は予想だにしない死の恐怖を、その果てにある無力感と戦っているのだ。この映画は、そういう極めて普通の人間の当たり前の姿、しかし平和のなかでは異端視されやすい姿を直視した映画であり、それ以上でも以下でもないのではと私は思う。■ただしそういう映像を表現するのに必要以上のカメラのブレはいただけない。私はカメラのブレは「カメラがその場に存在する」という現実味を与える事は出来ると思うが、「観客がその場の空気を感じる臨場感」を与える事は出来ず、むしろ逆効果だと思う。観客の人間の目って、日常生活でブレを意識したりしないでしょ? 【はち-ご=】さん [DVD(吹替)] 8点(2010-11-15 22:25:17) (良:1票) |