2.《ネタバレ》 「痴呆になると、知能のレベルは落ちる。しかし情緒のレベルはそのままである」
「心を大切にする介護を続ければ痴呆は治らないが、症状は軽減できる」
(作中における病院長室伏医師の話より)
ドキュメンタリー作家として女性の視点から数多くの作品を
手掛けられている羽田監督。ジャンルとしては芸術・福祉
、あと(女性の)人権問題等に秀作が多いが、個人的に
印象深かったのは岩波ホールで鑑賞したこの作品。
痴呆症患者=人格を失った者であり、他者への迷惑を
防止する為に行動制限を徹底して行う事が最適な対処方法
として行政や世情世論がまかり通っていた80年代。そんな中
「あくまでも人間として尊重し、残りの人生を実りある様にする」
「患者に寄り添い、失った人格をも肯定してゆく」事を
方針とした国立病院内の痴呆症施設を2年間に
渡って描いたドキュメンタリー。
「個人の尊厳を尊重する」「QOLの質を高める」事を
介護上教えられる流れは現代では当たり前のこと。
なので昨今の認知症を取り扱う映画に比べ、
目新しさや啓蒙させられる点は薄いのは否めない。
ただこの映画が優れてるのは認知症に関する知識が
少なった当時、フィルムに映し出された不安・焦燥感は
ドキュメンタリーとは言え劇場用映画よりも印象強い。
そしてこの映画に出てくる彼女らはもしかしたら
未来の自分達なのかもしれない、という点で
後世に与えたインパクトは大きかったのではないか。
(但、私自身はこのラストに関しては「正しい知識をもって
認知症に対応すればきっと社会はより良くなる」という
希望を感じさせて好きです)
どうすればよいか、皆それぞれ考えてみよう。
機会があれば是非。長文失礼しました。