78.《ネタバレ》 文字通りうだるようなレイ・チャールズの主題歌を冒頭に、都会からやってきた敏腕刑事が片田舎で起こった殺人事件を、地元警察と悶着を起こしながら一緒に解決していくというストーリーは今の時代からすれば常套的なものです。 しかし、今よりも黒人差別が顕著だった60年代、しかも保守的な南部という地域設定も手伝ってか、普通であればコメディにでもなり得そうな題材がとてもシリアスなものになっております。 事件そのものは大したものではないですが、あからさまな人種差別に耐える主人公、そして彼の手を借りなければならないながらも存在を煙たがっている警察署長の2人の衝突は普通の犯罪映画の刑事たちの関係とは少し違う、もう少し深い葛藤を感じます。 物語が進むにつれて、二人の心境も徐々に変わっていますが、完璧な友情ではなく、あくまで若干の好感、というところで止めておいたのも、作品全体のバランスとして良いと思います。もっとも、時代的なこともあるでしょうが… 【クリムゾン・キング】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-02-23 01:59:15) (良:1票) |
77.《ネタバレ》 この映画、吹き替えが最高にハマっているんです。昔は土曜の洋画劇場で頻繁に放送されていました。署長さんの嫌味ったらしい「バ~ジルぅ」の言い方が最高なんです。 けど、DVDには吹き替えが収録されていないのでガッカリ…。メーカーには是非吹き替え収録版の発売を切望します。 先日、久しぶりにテレビで吹き替え放送されたのですが、やっぱり最高なんです。 初の黒人オスカー俳優、シドニー・ポワチエ、ルックスも含めて全てめっちゃカッコいい。 白人署長が自分を見失って熱くなる黒人刑事に「バ~ジル、お前も人間なんだなぁ」と言う嫌味なセリフに加えて、反対に黒人刑事が署長に「アンタも淋しいんだな…」と同情され、逆切れする署長に、人間は皆一緒なんだと痛感します。 スパイク・リーの人種差別映画とはまた違うメッセージを受ける映画です。 主題歌のレイ・チャールズのナンバーも最高です。 でも、デンゼル・ワシントン主演のリメイクは観たいとは思わない。あの役者は、なんか偽善的なイメージがあって、オリジナルの本作を台無しにしそうです。 オバマさんが主演なら興味は湧きます。 【クロエ】さん [地上波(吹替)] 10点(2009-07-18 03:48:47) (笑:1票) |
76.第二次世界大戦前から北部が工業化し、ミシシッピーをはじめとする南部からシカゴを代表とする北部に黒人労働者が大挙して移住し、安価な労働力を奪われた南部は急速に凋落してゆく。その結果、北部と南部の貧富の差が広がる。「黒人でありながら」北部で知的労働に従事して高い給料を取るシドニーポワチエ。南部でくすぶっている白人にとって、シドニーポワチエは南部を捨てた(そして自分達を貧しくした)黒人を象徴するのでしょう。人種差別だけでなく、そういう米国内の南北問題が巧みに織り込まれた奥深い作品だと思います。 【とり】さん 10点(2003-03-31 23:28:55) (良:1票) |
75.「先生よゥ!」「元気でな。負けんなよな。」テレビの吹き替え版の方が、なぜか感動的でした。私が見た時は、シドニー・ポワチエが田中信夫、ロッド・スタイガーが内海賢二だったと思います。このラストシーンは、その後『パピヨン』『戦場のメリークリスマス』に脈々とつながってゆく歴史的ラストシーンですね。 【新加坡指令】さん 8点(2002-12-14 22:20:33) (良:1票) |
74.こんなに古い映画でワシ的には知名度の低い作品がDVDにまでなっている??きっと何かあるに違いない!と思ってピックアップしてみた。ちょうどこの時代はハリウッドにとって経営難の時代のはず。「え?そんな時代があったの?」っと思う若い世代の方もいると思う。テレビがどの家庭にもあり、映画館に足を運ばなくなった時代である。スタジオ側はさまざまな試みをした。【ワイド・スクリーン】【立体音響】など当時テレビでは不可能な技術を見せつけて客寄せに必死になっていた時代で、そんな時期に今回の映画は製作されている。[ベン・ハー] [ドクトル・ジバゴ] [クレオパトラ] [アラビアのロレンス]などの大型映画はそれなりに成功したが、観客はあまりにも自分の人生とかけ離れた夢物語に飽きてきた時期でもあり、スタジオ側も客離れ復帰に疲れてきた頃。1969年に製作された[イージー・ライダー]はそんな中で生まれた。何の飾りっけも無い等身大の主人公に観客は魅了された。アメリカン・ニューシネマの金字塔である。1962年から始まったベトナム戦争、68年のキング牧師暗殺、ケネディの弟ロバートの暗殺など壁にぶち当たりまくっていたアメリカ。そんな激動の時代とシンクロして沈んでいくハリウッド界に位置する今回の映画はさまざまな意味で見る価値はあった。ミシシッピーで黒人と白人といえば今でも映画になる素材はたくさんあるが、この時代にさらりと白人をアホ扱いしていて面白かった。公民権法が制定された直後の作品であることも覚えておかないといけない。アホ扱いといってもどちらの人種にも気を配った脚本で、人種問題を前面に出してはいない。どちらかというとテーマは別にあり、肌の色を超えた友情のようなものを感じ、観ていて清々しかった。まあ、人種問題があるから友情が映えて見えるのかもしれないが。主役のシドニー・ポワチエは59年の[ベン・ハー]ではキリストの十字架を一緒に背負う役を友情出演?したり、63年度のアカデミーで黒人は初の最優秀主演男優賞を得ている。近年の作品[ジャッカル]でも渋い演技を見せている。この映画でも素晴らしい演技を見せている。今で言うとデンゼル・ワシントンのような貴重な黒人俳優だったことが分かる。当時のポワチエが出演している他の映画を探したくなるほど魅力的な俳優である。[評決のとき] や [ミシシッピー・バーニング] のような作品も面白いが、こんなミシシッピーものもあるんだなぁっといった感じ。ちなみにこの作品は作品賞、主演男優賞、脚色賞、音響賞、編集賞でオスカーを取っている。 【マヒコ】さん 8点(2002-02-15 21:07:22) (良:1票) |
73.《ネタバレ》 夏の夜の暑さが画面からにじみでる作風に、超露骨な差別を全く隠しもしないのは、監督のキャラなのでしょうね。1967年当時【50年以上前!)はこんな雰囲気だったんでしょうか。まぁなんとなく南部のほうはそんな感じなイメージはありますが。静かな始まりからの後半への展開はこのテの映画のお手本のようで 俗にいう「バディムービー」の元祖ですかね。 ちょっと荒い展開ながら最後の別れのシーンがいいですね。7点。 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-05-15 22:08:08) |
72.《ネタバレ》 バージルは刑事としては疑いようのない凄腕。でもこの時代、白人たちから黒人の存在は軽視されていて、例え能力があってもそれは妬みや警戒の対象でした。その信頼を勝ち取るまでには、そもそものスタート地点が大きなマイナス点からというハンディキャップがあるのです。それでも彼は不屈の精神で立ち向かい、やがて真の力で事件を解決に導いた。S・ポワチエという名優が演じた、バージルという男のしなやかな佇まいと瞳の強さに僕は圧倒されて、最後は彼とR・スタイガー(警察署長)の友情に胸が熱くなりました。本作の"夜"とは、黒人にとって混沌とした暗黒の時代という、もう一つの意味合いも含んでいると思います。だから事件の解決とともに迎えた夜明け、それは長かった暗黒の時代の夜明けでもあると思うのです。負の歴史を鑑みれば、本作一作を以て手打ちにしようというには都合がよすぎますが、これはあくまでそれにつながる第一歩。これからの明るい未来、そして人種を越えた力が手を取りあう大きな可能性を予感しました。 【タケノコ】さん [DVD(字幕)] 8点(2017-09-23 21:37:57) |
71.《ネタバレ》 初見。ロッド・スタイガーが絶品。曲折を経た末に見せた別れの際の笑顔と「元気でな」の一言はこの先も忘れることはないでしょう。1967年に本作を世に送り出した製作者の気概に脱帽。 |
70.この時代に作られたことに価値がある映画だと思うが、今観てもそれなりに面白い。 緊迫するよりも、落ち着いて観られるところが多い。よく出来ている。 【simple】さん [地上波(吹替)] 7点(2017-03-26 17:33:50) |
69.当時としては斬新で、その後のお手本となるような要素がたっぷり。 アカデミー賞受賞も納得の出来栄えで、いろんな作品にも影響を与えていることがうかがえる。 【飛鳥】さん [CS・衛星(吹替)] 8点(2017-01-23 22:09:08) |
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68.《ネタバレ》 南部の片田舎の殺人事件が発端となり、北部から来た通りすがりのすご腕黒人刑事とステレオタイプの白人警察署長を中心に繰りひろげられる人種偏見ドラマ。屈辱的な偏見や生命の危険に晒されながらも踏ん張りきる主人公のモチベーションや真犯人逮捕に至る一連の流れがちょっとぎこちないけど、50年前の古き悪しきアメリカ南部の空気を感じるには十分です。多くの人の意識が本音の部分で変るのは半世紀位ではまだまだ無理なのでしょう。 【ProPace】さん [CS・衛星(吹替)] 7点(2016-11-26 21:20:11) |
67.《ネタバレ》 黒人がエリートで白人はクズという、当時の観客からすると意表を突いた設定。思い込みだけで逮捕したり街の有力者の言いなりだったりという腐った田舎の警察署長(白人)と都会からきた敏腕刑事(黒人)の二人を軸に展開する、いわゆる「バディ・ムービー」である。最初は反発しあっていた二人が事件を通じて協力関係になり、いつしか友情を築くというパターンだ。この手のものだと二人の関係がドラマチックに変わり最後は無二の親友みたいになるみたいなベタベタな展開も多いが、さすがにこれはアメリカン・ニュー・シネマだけあって、そこは苦く抑えられていて胸焼けしない。ちなみにこの作品、スパイク・リーによる「映画制作者になりたい人は必ず見ておいたほうがいい映画」のひとつに数えられている。作品を見てからプロットを書き出してみたのだが、導入でのさりげない伏線、主人公二人の対比、豊かな個性の脇役、巧みなミスリード的展開、中だるみさせないタイミングのよいアクションシーンの挿入、主人公たちの和解と別れにおけるカタルシスなど、まさにプロットのお手本とも言っていい要素が豊かに詰まっている。オフビートで苦い雰囲気の映画だが、つくりは実にまともなのである。 【こころはタマゴ】さん [DVD(字幕)] 9点(2015-04-11 07:00:57) |
66.エリートで身分や権力があるからこそ、被差別者でも堂々と戦えるってのはあるよな。ある種の自信というか余裕というか。だから差別する側も一目置かなきゃいけない。決して公民権に目覚めたわけじゃない。この署長の葛藤が中々よかった。まずは能力からスタートして対等に渡り合う事により差別は撤廃していくしかないのか?という限界を思い知った。 |
65.《ネタバレ》 刑事モノの犯人探しとしては終盤拍子抜けだったけど、この時代の黒人差別を描いた作品としては佳作だと思う。 レイ・チャールズの歌も見事にマッチしていた。 私事ですが、昔港町の某ファミレスでバイトしてた時、同僚に米国人のバイト(奥さんは日本人)が居て、客で黒人とかも来るので何となしに黒人差別の事を訊いたら、黒人の友人も居るし黒人一人一人を毛嫌いする訳じゃないけど、心の奥底では“このニガー”って思いはあると仰ってて、やはり根深い問題なんだなと思ったりしていました。 だからこそのラストの微妙な距離感の微笑み合いは実にリアルで名シーンだなと感じました。 更には、それを考えると今現在のオバマ大統領ってのは、とんでもなく凄いことなんだな思ったりする次第です。 【ぐうたらパパ】さん [映画館(字幕)] 7点(2013-07-21 10:27:28) |
64.《ネタバレ》 ロッドスタイガー署長に尽きる。あの憎たらしい顔が、次第に親しみを感じてきて、最後の方になると完全に署長に釘付けである。署長の家での独白シーン(誰も訪ねてこない、酒しかない、とか言うところ)では、「もうやめて!!悲しすぎる!!身につまされる!!」と思った。他人事ではないのである。 【わんたん】さん [映画館(字幕)] 6点(2013-03-22 01:06:22) |
63.《ネタバレ》 ポワチエもスタイガーも両者相譲らぬ存在感なんだけど、私は僅差でR・スタイガーに一票。このおやじが自らの内面のひだを上手く演じていて唸る。上手い、上手すぎる。黒人に対する偏見をことごとく覆されて、ポワチエに一目置くようになってる自分への戸惑い、しかし“黒人ごとき”に同情されたくない、というプライド。声はでかいけど威張りちらすわけではなく、誤認逮捕もしぶしぶ認める。危ないから逃がしてやりたいのに言う事聞かない黒人の若造。イライラしているスタイガー親父が人間味をざぶざぶ溢れさせて目が離せません。ナイスな小物ぶりを見せる脇役サムや電話番の彼も良いです。そしてなによりも、立ち上る夏の夜の空気、匂い、蒸し暑さ。こんなにも画面から感じた映画はこれが初めてでした。 【tottoko】さん [地上波(字幕)] 9点(2012-11-01 00:57:25) |
62.60年代のアメリカ、そして当時の南部の風土を今に感じさせてくれる作品です。 北部からやって来た黒人の敏腕エリート刑事と、南部の白人の田舎警察の署長。様々な対立軸が存在する2人が時に静かに時に激しく対立の火花を散らす。 スタイガーとポワチエの演技合戦も非常に見応えがありました。 特にスタイガー。黒人への差別意識を持つ典型的南部人であり、その意識は払拭できないものの少しずつ北部の黒人エリート刑事を認めざるを得ないという複雑な心境を見事に演じた。 最後は駅で抱き合い別れを惜しむこともなく、軽く握手するのみですが、小さく微笑みあう2人の表情、特にスタイガーの微笑みが良かったですね。 この頃には考えられなかったことだと思いますが、今のアメリカはついに黒人大統領の時代となった。この小さな微笑に少しずつですが変化が感じられるいいラストでした。 【とらや】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-06-02 21:21:37) |
61.《ネタバレ》 シドニー・ポワチエとロッド・スタイガーの距離感が絶妙にいい。ヘタに友情が芽生えるよりも、お互い理解し合えないところは残しつつ、言葉は交わさずニヤッと笑いあうくらいのが好きだ。 【ゆうろう】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-05-13 00:54:25) |
60.基本刑事ものではあるが、とてもシナリオのよく出来た作品。 サスペンスと友情を核に、人種差別をテーマに織り込み、人間ドラマとのバランスがとてもいい。 決して堅苦しさや重たい印象はなく、昔のテレビ映画のような雰囲気なので、さらってしていて、 とても観やすいかと。主人公の黒人刑事と地元の警察署長のキャラも個性的でよかったが、 嫌みのないラストシーンも心地いい余韻を残してくれる。派手さや映像的な見栄えはないけど、 満足感は十分に与えてくれる佳作。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 6点(2012-03-23 02:48:10) |
59.《ネタバレ》 いまだに良く分からないのが米国白人社会の黒人に対する差別意識の内実。表面上は、そんなものは無いという装い。最近の映画を観ていても、白人と黒人は仲良くやっている。でも、米国に留学した友人の話を聞くと、黒人と云うより黄色を含む有色人種に対する差別的態度は残っていると言う。南北戦争は1861-1865年、リンカーンによる奴隷解放宣言は1862年、そして、本作の製作年度が1967年。つまりこの作品は、南北戦争の終結からちょうど100年後に製作された。今から45年前である。本作の見どころははっきり言って「差別表現」だと思う。南部の警官や住人たちの黒人に対するあからさまな差別態度や言葉の端々に挿入されるに差別的な言い回し。それが絶え間なく続く。現代の学校や会社における「イジメ」とは違い、白人たちが発する「自分たちより劣った種類の人間」といった表現に隔世の感が強い。身の程を知らない者に「お仕置き」してあげるって口調だ。南北戦争から100年も経過しているのだから、世代も3つ以上は変わっているはず。なぜそんな習慣が続くのか。綿花農園で多くの黒人が働いているシーンを見て、「農園労働者=奴隷」的な空気が差別風習を残している理由じゃないかと思った。ラストシーン、警察署長と黒人刑事は本作の中で初めて笑顔を交わして別れる。でも、あれは本当に分かり合ったとか、差別が無くなったということじゃない。あくまで個人的に「こいつは見どころがある」くらいの関係です。同時に、根強い差別観はそんなところから溶かして行く以外に手段が無いとも取れるエンディングでした。約30年ぶりの鑑賞でした。サスペンスとしての出来栄えは特筆するほどではないが、これは歴史的な意義を持つ作品だと思います。余談ですが、初見は地上波放送で、某家電メーカーの提供で深夜に「ノーカット・CMなし・字幕放送」という形態で放送していました。CSやレンタルが無い時代に、とても有難かった記憶があります。 【アンドレ・タカシ】さん [地上波(字幕)] 6点(2012-01-14 14:52:11) |