2.《ネタバレ》 題名のカタカナ英語がよくわからない。これだけでは何の映画かわからないので日本でも副題を付けているが、Internet Movie Databaseで見ると世界各国でそれぞれ好き勝手な題名を付けていたようで、国によって映画の受け取り方が違うということかも知れない(かなり可笑しいのがある)。ちなみにRare Exportsの意味は映画の最後にならないとわからない。
クリスマスの映画といっても映像的には汚く見えるところが多いが、周囲の自然景観はさすがに見栄えがする。設定上の舞台は、フィンランドでサンタクロースの本拠地とされるラップランドのコルヴァトゥントゥリ(Korvatunturi, 486 m)という山の周辺だが、実際の撮影地はノルウェーのトロムソTromsøとのことで、本物よりも周囲の山が険しく見えていると思われる。ちなみに昼の時間が極めて短いのは北極圏の冬の表現だろうが、12月下旬なら実際はほとんど真っ暗ではないか。
物語としては大昔のサーミが封印した悪魔のようなものを、外国資本が蘇らせてしまったために破滅の危機が迫るといった体裁で、一応ホラーのように見えなくはない。サンタの使い魔?(原語でtonttuと言っている)が集団で迫るのはけっこう不気味で、真冬なのに全裸で股間にぼかしが入っているのは子どもに見せるものとも思われない。
ところで一般的には、サンタクロースといえば言葉の意味からしてもキリスト教の聖人と思うのが普通だろうが、この映画では独自の発想で“サンタクロース異説”を作ったように見える。
しかし必ずしも常識外れなものをでっち上げたわけではなく、もともと現地のサンタクロースとはこういうものだったとも考えられる。フィンランド語でサンタクロースをいうJoulupukkiは“ユールのヤギ”であるから、サンタの親玉が角を生やしていたのも変ではない。また死人が出たのは大殺戮の予兆にも見えたが、実はドイツの黒いサンタや日本のナマハゲ(アマハゲ、アマメハギなど)のように、悪い子を懲らしめればそれで終わりだった可能性もある。古書の挿絵は主人公のようなクソガキに脅しをかけるための誇張に違いない。
そのように本来は子どもに恐れられる存在だったものを、お仕置き確定のクソガキが妙な行動力を発揮して撃退した物語だとすれば、痛快かも知れないがかなりふざけている。あるいは商業主義にまみれたクリスマスへの皮肉を込めた社会派映画かも知れないが、それにしてもふざけた映画というしかない。家族でクリスマスを祝う善良なフィンランド人のイメージは破砕されてしまうが、ユニークなのは間違いないので少し好意的な点数にしておく。
余談として、劇中に出ていたようにコルヴァトゥントゥリはフィンランドとロシアの国境にあるが、妻のヘアドライヤーが何者かに盗まれたと思い込んだ住民が「ここではローテクでもロシアでは最新器機だ」(字幕)と決めつけていたのは笑った。辺境の国境管理は大変だ。