20.《ネタバレ》 内容としてはかなりタブー的なものに挑んでいる作品。人間が、まさに「人間」になるがゆえに苦しみ、そしてその罪と犠牲の中で葛藤する。アシュラはその只中を経験し、人間になりかけているところですれ違いを繰り返す。 ■若狭はアシュラの人肉を拒み「食べるぐらいなら死んだ方がいい」と言う。しかし、彼の恋人もまた若狭のために盗みという罪を犯そうとする。もし盗みがうまくいったとしたらどうなったのであろうか。恋人の持ってきた食べ物を若狭が食べるのだとしたら、それは結局「罪と汚れを他の者に被せることによって、自らの汚れなき状態を安心している」だけになってしまうのではないか。アシュラはその取りつくろいが極めて下手であり、恋人は恐らく上手くやれる。しかしそれは本質的には違いはない。「私は罪なく生きる」ではなく「いかに汚れなき生き方だと思っていても、私も罪の中にいる」と自覚し葛藤することが必要なのであろう。それが最後の法師の一言に表されている 【θ】さん [DVD(邦画)] 9点(2013-04-18 01:00:15) (良:1票) |
19.《ネタバレ》 人間の残忍さと尊厳を同時に描いた傑作。上映後に暫く席を立てなかった映画は久しぶりです。それほど深い感動を覚えた気が致します。 『生まれてこないほうがよかったのに』― この台詞は原作漫画で度々繰り返される主題です。アシュラは自分がなぜ生まれたのか、自分の人生に生きる意味はあるのかと自問し続けます。確かに観客もそう共感してしまうほどにアシュラの人生は畜生道に塗れているといっていい。実の母親に焼かれ喰われそうになり、母の愛を村娘に求めるも"人でなし"と蔑まれ、生きるために人肉を喰らい、その結果殺戮を繰り返す。 それでも乞食法師はアシュラに人の道を示す。助け合って生きるのが人間と。誰しも獣(ケダモノ)を己の中に抱えているが、それと戦ってこそ人間であると。人を憎まず、己の中の獣を憎めと。 これ以上拙文を書き連ねるよりも、ラストの法師の言葉を以ってレビューを締めたいと思います。 『私はお前(アシュラ)に教えられた。それはあらゆる命を奪い生きているという人の性(サガ)だ。それでも命ある限り足掻き生きていく。だからこそ、この世は美しい』 最高の人間賛歌。 【民朗】さん [映画館(邦画)] 9点(2012-10-12 23:47:48) (良:1票) |
18.《ネタバレ》 久々に映画で涙しました。原作は未読ですが、原作者は好きなのと絵のタッチが独特で興味を持ったので鑑賞。本当に見てよかった。 とにかく壮絶です。人食いという現代、特に日本では扱いづらい題材を惜しげもなく前面に押し出し、一人の少年の「獣」から「人間」への変化を見事に描いています。 その様子はまさに悲劇。 主人公のアシュラは愛も幸せも知らず、生きる事だけを必死にやってきました。そんな彼が人と触れ合う事で初めて手にした温もり。戸惑う事は当然のことでしょう。 その事によって産まれてしまった孤独に対する恐怖…そういった小さなすれ違いが段々と大きくなり、最終的にアシュラは再び人を傷つけてしまいます。 人でなしと呼ばれ、蔑まされ、自分自身でも産まれてこなければよかったと叫ぶアシュラの姿を見て涙が止まりませんでした。 それでも彼は自分の大切な人の為に頑張るのです。しかし、それも誤解から認めてもらう事ができませんでした。 これは人の肉ではない、馬の肉だから食ってくれ、死なないでくれと叫ぶ彼に再び涙。とことん救いがありません。 でもこれがリアルなのです、ご都合主義ではないのです。 昨今、幸せに溢れる中で、こういった作品もやはり必要なのだと感じました。 人によって受ける印象、感想は違うと思います。それでも必ず何か受け取ることができると思います。 豪華な声優陣の素晴らしい演技、新しいアニメーションの可能性を生み出した本作に感謝。 【HIGE】さん [映画館(邦画)] 9点(2012-10-11 16:55:09) (良:1票) |
17.原作は残酷描写と人肉食のシーンがあったために、有害図書指定を受けたことでも有名でな作品です。 自分はこの原作は未読でしたが、映画は発禁処分を受けたとは思えないほど、道徳的な作品に仕上がっていると思います。 飢饉に見舞われた世の中で、10歳にも満たない子どものアシュラは生きるために人を殺し、その肉を喰らいます。 それは食べるものがなく、生きていかなければならないためなのです。 そして描かれるのは、アシュラが人喰いから「人間」へと成長していく物語であり、この上のないほどの悲劇でもあります。 アシュラの想いが痛いほどわかるので、涙を流してしまうシーンが多くありました。 声優を務めた野沢雅子さんが、(原作を)発禁にするなんてとんでもない、世界中の人に観て欲しいと宣ったことに完全に同意します。 流血シーンが多いのであまり小さい子には薦めませんが、子どもにも是非観て欲しい作品です(直接的な表現は少ないので、レーティングは全年齢指定です)。 今の飽食の時代では、こうして飢え、苦しむことのない幸せを忘れています。 この映画で描かれる飢饉、そして主人公が人を喰らうシーンは本当に気が滅入るものですが、作品には必要なものです。 そのことを、決して「綺麗事」ですまさずに教えてくれる本作は、確かな説得力を持っているのです。 本作の上映時間は短く、わずか75分です。 しかし下手に長い映画よりも、はるかに価値があると思わせる素晴らしさがあります。 本当に多くの人に観てもらいたい作品です。 アニメが好きな人だけでなく、映画からメッセージを感じたい方、心に残る映画を観たい人に是非おすすめします。 エンドロール後にも1シーンあるので、お見逃しなく。 【ヒナタカ】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-10-07 16:58:09) (良:1票) |
16.尊いね。 残酷な描写で心が削られてたので、若狭の優しさが心に沁みました。 でも、その後の展開でもっと心が削られました。 法師の説法はありがたいけど、最初に出会ったときにもっと面倒見てやって欲しかった。 【もとや】さん [インターネット(邦画)] 7点(2020-06-09 11:40:42) |
15.映画ファンの人から勧められて鑑賞したんですけど、だめでした。 若狭のアシュラを助けて、飯も与えてるところがリアリティないです。 【へまち】さん [DVD(邦画)] 3点(2017-11-05 23:58:02) |
14.《ネタバレ》 評価の高い本作..映画として、言いたいこと、伝えたいことは、理解できるが..物語のディテールが、あまりにも、浅く、稚拙..そこが気になり、説得力がない..心に刺さらない..上辺だけのペラペラの子供だまし.. ・若狭はなぜ、アシュラを助ける? 裕福とは言えない貧乏百姓の娘なのに..(偽善的すぎる) ・アシュラが七郎を傷付けようとすると、若狭が豹変..変わりすぎだろ~ がっかり.. ・法師が腕を切り落としてみせる..やりすぎ..(理解に苦しむ) ・水害の後、生き残った村人は何もしようとしない..復興のために畑を作るとか、あきらめて村を捨て出て行くとか.. ・七郎たちは、飢えることなく生き延びている..食い物は? 最初にしわ寄せがくるのは七郎たちでは.. ・地頭は、村が水害に遭おうが、村人が餓死しようが、我関せず..領主として何もしないのか? 1人だけいい暮らしをしているようだが..普通なら暴動(一揆)が起きるだろ.. ・アシュラを捕まえるために、山狩りをするが、どこからあんなにたくさん人が集まってきた? 飢餓で苦しんでるのに、みんな元気やな~ ・アシュラが赤子から育った過程が謎..言葉がしゃべれないところをみると、人に育てられた感じではない..自力で育ったとしたら、あり得ない.. ・アシュラの身体能力、高すぎ..野生児だとしても、やりすぎだろ..(手にしている斧、そうとう重いぞ) ・七郎と子供数人で、あの大木は運べんだろ~ しかも転(ころ)なしで、引きずって.. ・アシュラがかくまわれていた山小屋..小屋の中が広すぎ、何に使う小屋?(リアリティーなし、「アルプスの少女ハイジ」を見て出直してこい!) ・吊り橋に火をかけるシーン、あんな燃え方しないし..あの状況なら、真ん中まで火がまわる前に、端から燃えて落ちるでしょ.. 演出、場面設定、物理的現象が、ダメダメ..アニメだからこそ、ちゃんと描かないと嘘になる..物語が物語だけに、もっとリアリティーを追究してほしかった..残念... 【コナンが一番】さん [DVD(邦画)] 3点(2017-08-05 12:11:33) |
13.《ネタバレ》 東映アニメーションが原点回帰を掲げて製作した作品で、社会的に物議を醸し、発禁本となった漫画が原作となっている。こう書くと話題性だけの映画かと思ってしまいそうなのだが、まったくそうではなくきちんとしたメッセージ性のある社会派映画になっていてとても見ごたえがあった。けだもの同然の主人公 アシュラが生きるために人を食う描写はかなりリアルなのだが、同時にアシュラの悲しさもうまく表現されていて、ここに手抜きがないからこそ本作の重いテーマがぐいぐいとこちらに伝わってきて、東映アニメーションといえば子供向けの企画ものアニメというイメージを覆すにじゅうぶん。切ないシーンも多いが、アシュラが初めて心を許した存在である若狭の恋人を傷つけたことで彼女から遠ざけられるシーンは思わずアシュラに感情移入して見ていた。若狭たちに飢餓がきてアシュラと立場が逆になるという展開もうまく、普通の人間であってもひとたび極限状態に陥ればアシュラと同じようなけだものになるという人間の本質をリアルに描いている。アシュラが馬の肉だから食べてと差し出した肉を人肉と疑い、食べようとしない若狭に対してアシュラが必死に説得するシーンは胸が痛くなるほどの切なさで、このシーンが本作の中でいちばん重く感じた。アシュラの声を担当する野沢雅子はまさに名演技で、どうしても自分の世代だと悟空のイメージが強いのだが、あらためて名優の一人だと思うし、また本作は彼女の晩年の代表作になると言っていいほどだ。75分と短い(ところどころ端折られている感があったのでもう少し長くても良かった気はするのだが。)映画だが、見る価値はじゅうぶんにある映画だと感じた。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2017-08-04 00:06:11) |
12.まわりの評価が高いことにつられて見てみたが、あまり好みじゃない。 無理に極限状態の設定にしているように感じてしまう。 |
11.重いテーマに挑んだ骨太の力作ですね。食べ物に溢れている現代は本当に良い時代のはずなのに、その幸せを実感している人はどれくらいいるのでしょうか。もっと多くの人に見て欲しい作品です。 【川本知佳】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-06-08 07:45:38) |
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10.《ネタバレ》 とてもせつなくて、いとおしい。こんなにもどっぷりと感情移入できるとは。画の迫力も十分。若狭に肉を食わせようとしているシーンは心を揺さぶられる。 【ラグ】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-03-30 23:31:23) |
9.意外でしたが要所要所にあるアクションがすごいですね。見たことのないような躍動感と力強い動きの映像でシビれました。上映時間は短いですが監督のこの映画を作る執念のようなものが全編から感じられ、なんとなく企画で映画化したようなチンケな映画とは別次元の高尚な映画に仕上がっています。残念な点は若狭がちょっと美人過ぎてしまい、あれだけの美人ならいろんな縁談も来てもう少しどうにかなるだろうと違和感を感じてしまいました。秋山ジョージの原作は昔好きで読んだことがありますがTVドラマの銭ゲバといい、この二つの作品がまさかこの現代に映像化されるとはw (TVドラマの銭ゲバもオススメです。マカロンマカロン) 【映画大好きっ子】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2013-12-29 21:07:16) |
8.《ネタバレ》 75分と短いわりに途中が長く感じる ストーリーに起伏が無いので中だるみしている 人が生きる事の意味や人間の業を問いかける重いテーマだが 今ひとつピンとこない、余りにもテーマが身近じゃないせいか ヒロインの若狭がアシュラを疎んじて行く過程がちゃんと描かれていないので若狭の悲惨さが伝わらない 若狭の追いつめられ方が弱い 原作では若狭さえ徹底的に追いつめられて人肉を食う所までいくのに 正しい人すら追いつめられると偽善者になるとかまでは描かれない だらだらした中盤をカットすればある程度は描けたはずなのに残念だ 悲しいけど切なさが皆無なのが問題だ 泣けるシーンが無い、ただ悲惨なだけ 絵は美しいがちょっと暗いシーンが多く見にくい エンディングでアシュラが僧になるラストはホッとする感じでよいが、アシュラを導いた法師のモノローグ(命あるがゆえにあがく。だからこの世は美しい みたいな)がめちゃ軽くてしらけた そんな事俺だって言えるわい! そんな安易なテーマだったのかよ! 都の俯瞰の絵で終わるのも意味不明 エンディングのテーマ曲にいたってはかなりヒドい 作り手が「アシュラ」の世界観をちゃんと理解してたかが疑問である 期待したせいか今ひとつ面白くなかった 【にょろぞう】さん [ブルーレイ(邦画)] 6点(2013-12-16 16:18:54) |
7.《ネタバレ》 <原作未読>鬼太郎、風大左衛門、ひろし、ガンバ、鉄郎、悟空、悟飯、ギルモン… 多くの有名キャラクターに声を吹き込んできた野沢雅子に、もう一つ代表作が加わったと言っても過言ではないだろう。アシュラが持ってきた肉を人肉と疑い、食べようとしない若狭に対し「生きてほしいぎゃ。死んじゃイヤだぎゃ。だから生きなきゃダメだぎゃ」と涙を流す場面で改めてこの人はスゴイ声優なのだと思い知らされた。もちろん演技の素晴らしさだけではない。凄まじい場面の連続で人間そのものに迫ったこの映画はわずか75分の作品ではあるが強烈なインパクトを残した。人と獣には「心」という決定的な違いがある。しかし心があるからこそ苦しい。アシュラがその苦しみに耐えられなくなった時、法師がとった信じられない行動。獣のように生きてきたアシュラが心を持って、今まさに苦しんでいる。何を成さなくとも、その事実だけで腕一本を仏に捧げるほどの価値があるのだと…。人間賛歌ここに極まれり。 【リーム555】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-12-05 00:52:14) |
6.《ネタバレ》 75分と短いがとても中身が詰まっていてずっと集中していられた。 原作は知らないので原作を読めばたぶん理解できるのだと思うが、 坊さんが腕を切り落とすのだけがちょっといきなりすぎて理由がわからなかった。 アシュラが腹が減っている時ならまだわかるが、そうでもないように見えるアシュラに対して腕を切り落とし食えと言うのが謎だった。 もうこれで終わり?という感じで終わってしまうが、橋から落ちてからの話が是非観たいのだが・・・・ 【虎王】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-06-12 18:17:16) |
5.銭ゲバはアリでも、こっちの映像化は無理だろうと思っていたアシュラがまさかの登場。70数分の短編だが本当に面白かった。今年見た映画で一番だ。主人公アシュラの愛と憤り哀しみが全編に満ちている。青少年にこそ見せたいものだ。あと、オノを背負ったビジュアルがインパクトあり過ぎ。若狭美人過ぎ。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 10点(2013-05-03 01:49:39) |
4.圧倒的な露悪さの裏に隠された、慈愛。 ただのキワモノアニメなんかでは、決してない。残酷なジュブナイルでもあり、悲しいラブストーリーでもあり、そしてその地金にあるのは眩い黄金のような人間賛歌である。 観ていて何度も鳥肌が立ち、何度も嗚咽した。傑作。 【aksweet】さん [DVD(字幕)] 9点(2013-04-26 08:13:07) |
3.《ネタバレ》 原作未読です。 『飢え』をテーマに人間の狂気を描く、と言えばこの手のドラマ系の作品にはたまに見かけるが、主人公とその他理性ある人間がある時を境に入れ替わる瞬間の演出が良い(野性児ゆえに主人公は飢えずにすんでいる描写が挿入されており説得力もある。) グロとエグい演出こそあれ、『成長』や『恋(?)』等を含んだ一種のジュブナイル作品として見れなくもない。 ただ内容は区切りこそ付いているが『序章』感が強く(火の鳥で言うと鳳凰編で我王の子供時代か、大きくなって村から逃げ出すあたり)、面白いだけに『え、終わり?』と言うあっけなさもあった。 【ムラン】さん [映画館(邦画)] 7点(2013-04-06 22:51:21) |
2.《ネタバレ》 この原作がまさか映像化されるとは思っていませんでした、ジョージ秋山という異色の漫画家の渾身の作ですが、漫画すら完結するのかと思われていたのですから、感慨ひとしおです。極限時、そして、人として生きるとは何か、人の本質にあるものとは何かをひたすら描かれています。人はすべなく獣を持っていると、獣ですから他者は獲物にすぎず、生きる為の糧なのです、この下りは観るに残酷です。しかし、身をもって教えてくれる法師に出会い、優しい娘に死ぬところを助けられ、心を持っていきますが、生半可に心を付けた為に、娘を慕うが接し方を間違え「人でなし」と、このあとのアシュラの「うまれてこなければよかったギャ」、この言葉がぐっときます、ええ、この言葉がこの漫画のテーマですかね。原作と、違いがあり、省略されていますが、自分の心の本質に迫る、圧倒的な問いかけは凄いものがありました。アニメで、ここまで衝撃を受けたものは少ないです。素場らしい作品を観ることができて良かったと思います。 【min】さん [ブルーレイ(邦画)] 9点(2013-04-02 20:26:29) |
【黒ネコ】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-04-01 20:28:29) |