36.毛皮の女の長回し、まるで水が静かに流れているかの様な躍動。 そしてただただバイクが疾走するだけの躍動。 それらがスクリーンに投影されている。 それを観ているだけで思わず涙しそうになる。 もうそれだけで、この映画は充分に素晴らしいだろうと。 映画とはそういうものだと思うからだ。 なんだか久し振りにこんなにも映画を観ながら熱を帯びて痺れてしまったもので、何よりも最高の光をフィルムに定着させている。あの絶妙な薄暮の中を走る船であるとか、本当に見事なまでに豊かな映画であったと思う。 そして、何よりも、ホアキン・フェニックスがフィリップ・シーモア・ホフマンを睨むように見つめ微笑むあの顔の美しさったらない。彼の熱や精気が徐々に失われ、顔面の脂も抜けて、ただの骨と肉と魂の塊へと姿を変えていく美しさよ。そんな骨と肉と魂の塊が彷徨い、両の眼を涙でギラつかせ、口許を歪ませているだけのクローズアップ、そしてその陰影。 映画は、物語などを超えて、観るという体験として身体に刻み込まれるものだ。 【すぺるま】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-04-22 01:16:46) (良:2票) |
35.《ネタバレ》 心に傷を負った男の魂の彷徨。 フレディが入信したのはマスターのカリスマ性ないし父親の面影に惹かれたのであって、宗教は二の次だ。 逆もまた然り。 マスターは自由奔放なフレディに憧れを抱き、お互いに足りない部分を補い合う共同体の関係を匂わせる。 しかし、それは双方が未完成の存在であることと密着し、フレディの余りある力が、 マスターの王国を破壊しかねない危うさも持つ。 だからこそ、黒幕的存在の妻が王国の存続のために男二人を操ろうとする画策が垣間見える。 最終的に二人は袖を分かつ。 残りたくても己の本能が拒否する矛盾、引き留めようにも手の届かない焦燥感、 それぞれが完全になりかけた瞬間、臓器移植の拒否反応のように共同体でなくなってしまった。 "救い"から見放されたフレディは、これからもダンスする相手を変えるように、 現実に存在しない"砂の女"を求めて彷徨い歩くのだろう。 いや、他者承認されずとも生きられるありのままの自分=ニーチェの提唱する"超人"と見るべきかもしれない。 ホアキン・フェニックスの"動"の怪演、フィリップ・シーモア・ホフマンの"静"の怪演の摩擦が恐ろしくも凄い。 重厚な画作りが不安と翳りの50年代アメリカを更に浮き彫りにさせる。 【Cinecdocke】さん [映画館(字幕)] 8点(2015-11-28 01:41:33) (良:1票) |
34.《ネタバレ》 どこかの批評で「PTAは映画に愛されてる」「映画を撮るために生まれてきたような監督」という論を読みましたが、正にその通りだと思います。とにかく各シーンが強烈なインパクトを有していて上映後も何度も反芻してしまう。この辺りの感覚はキューブリックの映画に近いと個人的には思っていて、全体的にシンメトリックな画作りに拘っている点が両者に共通しているのも面白い。 本作では特に前半部の長回しが強烈で、フレディの働く写真屋(ブティック?)をコートを纏った女が歩き回る場面や、"マスター"ことトッドがフレディに催眠(あえてそう呼びます)をかけフレディが過去を吐露する場面は、計算され尽くされた画と役者の卓越した演技力に目を釘付けにされます。 前作の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と同様に役者の狂ったような暴れっぷりも本作の魅力の一つで、特にホアキン・フェニックスのリビドーが溢れ出した様な演技は圧倒されつつもついつい笑ってしまう名演だったと思います。 ストーリーは獣の様に生きていた男、フレディを新興宗教の教祖であるトッドが治療しようとするという話で、そのお話自体もフレディが最終的に宗教と決別する展開などは実に良いのですが、この映画のストーリーはある種現代社会の縮図として作られていると思います。何時も猿のようにセックスのことしか頭にないフレディは大衆(愚衆)の象徴で、それを自らの道に導こうとするトッドは所謂近代的国家の象徴。だから彼は説法で「人はこう生きるべきだ」と明確に人の価値観を定義する。そこにトッドの奥さんが絡んでくる。トッドの奥さんは鏡の前で彼のアレを処理する場面で分かる通り彼の手綱を握っている。トッドと奥さんは二人で一つの国家を象徴しており、自分の宗教に難癖をつけてくる男に「誰もがそれぞれの考え方を尊重すれば良い」と言うトッドは所謂ハト派、「難癖をつける奴は戦って叩きのめせば良い」と言う奥さんは所謂タカ派。だから奥さんが次第に大衆を象徴しているフレディを得体の知れない理解不能な存在として疎み追放しようとトッドに進言する点も合点がいく。 映画の最後でトッドはフレディに「君は誰にも支配されずに生きる初めての人間になる」と言い彼を送り出しますが、大衆を象徴するフレディの成長(アル中の時と顔つきが全く違う)を"支配から逃れ自由に生きること"としているのも素晴らしいと思います。 【民朗】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-06-09 16:19:34) (良:1票) |
33.「ブギーナイツ」「マグノリア」が好きです。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」も理解できます。しかし、この「ザ・マスター」は難しい。誰でもマスターは必要だし、それを求める人間、そこに救いを求める人間の心理も理解できます。けれど、それを素直に描いたら映画としてのエンタテイメントは無いですね。いい映画だけど、楽しめない、感動もできない、そういう映画です。ホアキン・フェニックスはものスゴい! 【カワウソの聞耳】さん [映画館(字幕)] 7点(2013-03-28 21:56:03) (良:1票) |
32.《ネタバレ》 初めに述べておくと、これは傑作である。しかしどうにもつかみどころがなく、この映画を映画に即して観て考えることは非常に困難だ。様々な観点からのこの映画の批評を期待するところである。私は二つの表面的な点だけを指摘しておきたい。まずオープニングから、海。元はふかい青、緑のような色であった海に、船の立てた泡が白く混ざり、何ともいえぬ淡い青になっているオープニングから心をつかまれる。これはオープニングだけでなく、劇中で三度ほど出てきているので、恐らく重要なシーンであろう。船も何度か出てくる。そして被写界深度の浅さである。非常に浅い。特にフレディが最初にコーズの船に乗り込むシーンは、まず手前のフレディ、そしてフレディがぼやけて船、そしてまたフレディ、というように被写界深度の浅さが効果的に使われており、意図を感じる。後半はそれほど浅さを感じることはなかったのも一つのポイントだろうか。全体として、この映画はなんだかよくわからない。宗教団体コーズを描いているが、この映画から宗教的な香りはしない。では世俗的な人間ドラマなのだろうか。恐らくそれも違う。事態はもっと複雑で、恐らくこれは宗教的ならざる神秘性のようなものを描いているのではないだろうか。これは振り返ると「マグノリア」のテーマであったようにも思う。そしてこの映画におけるその神秘は、フィリップシーモアホフマンでも空から降ってくる大量のカエルでもなく、フレディ自身なのである。 【Balrog】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-03-28 19:06:54) (良:1票) |
31.《ネタバレ》 フィリップ・シーモア・ホフマン扮する新興宗教の教祖ランカスターは、ホアキン・フェニックス演じる主人公フレディを“息子”として自分のものにしたかった。フレディもまたランカスターに“父親”を見出した。…そう、『ブギーナイツ』や『マグノリア』、前作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などがそうだったように、ポール・トーマス・アンダーソン監督の作品はここでも「父と息子」、「(疑似)家族」をめぐる愛憎劇を繰り広げる。 だが、ある一点において本作は、これまでのPTA作品と根底的に異なる“貌”をみせるだろう。そう、この映画におけるフレディは、もはや誰の“息子”にもなれない男だった。ーーアル中で女に目がない、一見すると単なる負け犬の流れ者。しかし一方で彼は、どこまでも自由で束縛(=家庭)から逃走し続ける、常に「移動する者」でもあるのだ。 常にその肉体と魂を彷徨のなかに起き続ける、フレディ。何という空虚さと孤独。だが彼は、それでも生きていける。これまでも、これからも空虚で孤独でありながら「独り」で生きていける男なのだ。その意味で、すでに彼は師であり“父親”であるランカスターすらをも“超えた”存在なのである。 ランカスターはフレディに、「もし“師”なしで生きられる方法が見つかったら、ぜひまた会いに来て教えてほしい」という。そして「来世で出会ったなら、お前は私の最大の敵となるだろう」とも。ランカスターもまた、フレディが自分“息子”どころか自分すら超越した存在だということを覚っていた。それでも、というかそれだからこそ実はフレディを手放したくなかったホフマンが口ずさむ「中国行きのスロウボート」と、それに対するフェニックスのゆがんだ笑顔。その対比の、何という美しさだ・・・ フレディ、このこのアル中で情緒不安定で暴力的だが、どこか愛さずにはいられない“1950年代のハックルベリィ・フィン”。この真の意味で「自由」な人物像を造型し得ただけでも、この作品と主演のホアキン・フェニックスは映画史上のものだ。彷徨する魂と肉体にこそ己の存在理由を見出す「アメリカ(人)」の心象風景をここまで鮮やかに映像化した作品など、ほとんど空前絶後ではあるまいか。ともあれこれは、21世紀に入ってから今に至る最高の「アメリカ映画」だと、ぼくは確信している。 【やましんの巻】さん [映画館(字幕)] 10点(2013-03-25 11:35:50) (良:1票) |
30.《ネタバレ》 ホアキン・フェニックスのシワだらけの顔貌が強烈なキャラクターを成り立たせている。 教祖のジジイにはあまりカリスマ性を感じず、ホアキン・フェニックスの独壇場であった。 第二次世界大戦で心に傷を負った男はアルコールに溺れるが、教祖と出会い一時はその宗教に没頭するも、洗脳されきれず見放される。 とても寂しく孤独な男を演じたホアキン・フェニックスのカメレオン俳優っぷりが凄い。 【にじばぶ】さん [インターネット(字幕)] 5点(2024-08-17 11:53:17) |
29.《ネタバレ》 孤独なフレディを見守る、ちょっといかがわしそうな(?)集団。 独特の心の癒し法で、多くの共感を生んでいく。 教祖の化けの皮がはがれる映画かなと思って観てたら、 フレディが新たな幸せをつかむとこで、映画は幕。 支えだった女友達が、実は既に結婚していた。 でも喪失感におぼれるフレディを、怪優シーモア演じる教祖は、 見捨てなかった。 ラストのエンドロールで流れる、運命の出会いを祝福するかのような やさしいメロディに泣けてしまう。 【トント】さん [DVD(字幕)] 7点(2021-03-28 21:54:34) |
28.《ネタバレ》 あらすじを見て結構自分好みの題材で期待していたんだけど、実際は想像していたよりこじんまりとしたお話でした。面白くない。ただ面白くはないけど内容は素晴らしいと思う。2時間近くおっさん二人の濃厚な関係性を描くだけ。最後のエンディングを迎えて、あぁ、これはフレディの魂の救済に向かう彷徨をを描きたかったのだなということが分かった。おそらくだけど最初の内は新興宗教という設定も物語上は機能はしているが撮っているうちに孤独な男の救いがどうすれば得られるのかという監督の思いが強く前面に出てしまった様な気がする。フィリップ・シーモア・ホフマンの教祖様っぷりもすばらしいのだが、やはりフレディという主役の人物造形がリアルでそれを見事に演じきったホアキン・フェニックスの演技が素晴らしかった。銀獅子賞受賞と聞いてなるほどねとは思う。 【エリア加算】さん [インターネット(字幕)] 6点(2021-02-11 23:19:34) |
27.ストーリーはあってなきがごとし。ほとんど、監督の脳内二重人格会話を延々と聞かされているような感じ。本来は達者な役者陣に対しては、「こんな苦行によく立ち向かって耐えているなあ」という感心は起こりますが、これでは芝居の鑑賞はできません。 【Olias】さん [ブルーレイ(字幕)] 4点(2018-12-23 01:24:48) |
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26.《ネタバレ》 PTA監督、またまた恐ろしい映画を作ったなあ。新興宗教モノの定番で主人公が教祖にハマっていく展開かと思いきや、ホアキン・フェニックス扮するフレディは、フィリップ・シーモア・ホフマン扮する「マスター」のランカスターに心酔してるようでいても、彼自身の根本的なキャラは最後までブレないまま終幕。ある意味、これまで完全な社会不適応者だったフレディに唯一向き合うことで、これまでの思想や理論を、よりトンデモな方向へと深めて、変わっていくのはランカスターのほうだ。「深く関わっているのに平行線」という数学的にはあり得ないのだけれど、人間関係においては、ある種の「本質」を突いている。それにしても、PTAの作風は、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以来、変わってしまったなあ。個人的には、カタルシスもドラマもある『マグノリア』風のほうが好きだけれど、こうゆう重厚で演技も映像もキレまくっているのも、なんだか脳のいつもと違うところが刺激されるようで悪くない。贅沢をいえば、いまの「一見さんお断り」な雰囲気は少し和らげてほしいなあとは思うけど。 【ころりさん】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-04-02 23:23:05) |
25.《ネタバレ》 相変わらずP・S・ホフマンは凄い芝居をするなあ。この作品でもほれぼれ。新興宗教の教祖様であるこの役、催眠術を使ったイカサマ師に見えなくもない。けれど人を引きつける包容力があったり、批判意見にはかっとなったり、ヨメの尻に敷かれてたりなど人間臭さが実にリアルな教祖っぷりだ。 で、ホフマンの独壇場になるかと思いきや、P・フェニックスがこれまた堂々と渡り合ってる。社会生活はアルコールが原因で破綻しちゃってるダメ男。しかしなんと彼は精神の自由といった部分だけは生命力が強くて、さしもの洗脳教祖も飛び立つフレディを止められなかった。フレディの、ぐだぐだでいながらも自己決定力が強いというキャラクターは演じるのがとても難しいと思う。身体全体からささくれた空気を発散し、目の据わった演技は見事だった。 役者二人はすごい仕事をしてるんだけども、お話はいかんせんおっさん二人とやり手ばばあの三すくみが陰気にだらだら続くばかりなので正直面白くはなかったっす。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-05-26 00:07:33) |
24.ストーリーはなんだかよくわからなかったですがホアキンフェニックスの野性味というかワイルドさが印象的でした。 【珈琲時間】さん [ブルーレイ(字幕)] 5点(2015-05-08 08:19:23) |
23.《ネタバレ》 予告編がものすごく面白そうだったのだが、実際見てみると思っていた内容とちょっと違ったという印象だ。 予告編では宗教にはまっていき、最後は信じられなくなり、だまされるなというような内容かと思ったのだが、実際はどちらかというと新興宗教に肯定的な内容だった。ホアキンの演技力が素晴らしく、それだけでも必見ではあるが、内容を期待してみるとあれ?っという映画だった。 【シネマファン55号】さん [ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-01-19 11:27:13) |
22.会話が多く、演技力が問われる映画。 互いに孤独でどことなく惹かれ合ってしまう「男の友情」とでもいう内容だが、ドラマティックな展開が多くあるわけでもないので、人によっては退屈だと思う。 もう少し深められる可能性があったので、惜しいともいえるか。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-10-26 10:45:54) |
21.役者の演技力はすばらしい。人の心が、どのように変化するか、惹かれあうか、洗脳されるか、などを観るのには面白い映画。でも、多くの人には勧められない。 【cogito】さん [DVD(字幕)] 4点(2014-10-11 09:12:39) |
20.とても続々する映像がいくつもあり、上質な映画ではあったけれど 残念ながらストーリーが面白くなかった。 |
19.《ネタバレ》 どういう類の話なのか分からないままレンタルしました。子供がいない時に観て本当に良かった。のっけから品性のない映像。で、結局はそのファーストシーンに戻る作品でしたが、いったい何を描きたかったのかよく分かりません。壁と窓を往復する作業だったり罵倒されて無反応でいるなどは、とってもやばい洗脳にしか見えないし、これで何か大きな事件へ発展して行くのか思ったら全くそういう話ではなく、あのしつこい洗脳的作業を通して描かれていたのは、主人公が実はちっとも変わらない感情を隠し持っているシーン。要は、主人公は表向き順応してみせるがマスターにも飼いならせないってことでした。「目標を決めて走るんだ」のシーンは笑ってしまいました。出来の悪い犬ですか? で、ろくに描かれもしなかった元恋人に会いに行き、会えず…。教祖の誘いも断りふわりふわり。結局、大好きだった女性と離れてしまって彷徨った魂の落ち着け場所が見つからない男が、現世で一緒になるのを諦めて、来世で再び巡り合うことを願って…っていう話し?(ラストの歌の歌詞からすると、そういうことですよね) それをストレートに男女の姿で描かず、男2人の物語にして見せるという技というのは巧いと思いますが、だからどうなんだという気も…。監督さんゲイなんじゃないでしょうか? この作品でホアキンが見せる涙は印象的でした。 【だみお】さん [DVD(吹替)] 3点(2014-07-29 17:37:25) |
18.《ネタバレ》 なんとも不思議な映画だ。けど分かる。これはマスター(教祖)と呼ばれる男と主人公との友情の物語だ。偶然、マスターのもとに転がり込むが、戦争で受けた傷を治せず、マスターの教えにも染まらないまま、憑かず離れずにいる主人公。いったい何を考えていっしょにいるのか、初めから終わりまで(正確には終わり近くまで)分からないまま映画は続く。二人の関係について考えてみた。およそあらゆる宗教の教祖や、なんらかのイデオロギー団体でそれなりの地位を保っているほどの男なら、心のどこかで、もちろん無意識にだが、自分のかかげる教義が嘘であること、言わば人の心を救う作り話であり、そういう理論装置でしかないことを知っているのではないだろうか。だから「マスター」は、この男を見限れないし、信頼もしている。簡単に主従関係に入ることで心の安定を求めようとしないこの男の自由さに友情さえ感じている。主人公の自由で、自分になびかない、訳のわからない魂に、自分と合い通じるものがあることを感じ取っているのだ。さて、ほとんど何を考えているかわからないままの、そしてどこか異常なままの主人公は、マスターが最後に、もう一度戻って来い、一緒にやろうと提案した時、初めて苦しい選択に迫られた表情を見せる。これ一回だけだ。しかし男は自由な生き方を選ぶ。どんなに貧しく惨めな孤独でも、一人で生きる…自由に生る…、そんなつぶやきが最後に甘い歌に乗って響いてくる。終わる直前まで、暗く憂鬱なだけの映画だったが、かすかにかすかに…おかしみのような哀しさが伝わってくる。(ちなみにカルトの話というと敬遠しがちな方のために一言述べておくと、マスターの教義はけっして狂信的なものではなく、一言でいえば輪廻転生みたいなもので、どこかにこんなのが一つや二つ現われてもいいなあ…と思う程度のものです)。 【柚】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-07-27 18:55:40) |
17.《ネタバレ》 ○どことなく深夜に見たい映画。○長回しの会話シーンが多くある今作において俳優の演技力が試される部分もあるが、特にホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマンはそれに余る活躍をされた。素晴らしかった。フィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなられたのは本当に残念だ。 【TOSHI】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-05-06 18:57:32) |