12.《ネタバレ》 ラスト、辛辣な運命に導かれるままに、ついに望まぬ“椅子”に収まった主人公。“新しき世界”を眼下に見下ろし、彼は何を思ったのだろう。
一見、彼の表情は自らの運命に対しての苦悩に苛まれているように見える。
しかし、その先のシークエンスで、彼の中にはそういった苦悩とはまったく別の感情が巡っていたのだろうことが分かる。
ラストのラスト、この映画で主人公が唯一見せる或る“表情”。
観客も、主人公自身もはたと気づく。
彼にとっての“新しき世界”は、とうの昔に始まっていたことに。
いやあ素晴らしい。毎度のことながら、韓国映画には新鮮に感服させられる。
監督の巧さ、俳優の巧さ、撮影技術の巧さ、すべてが高水準であることは間違いなく、総じて「映画づくりが巧い!」と言わざるをえない。
特に個人的に思うのは、ラストシーンの絶対的な巧さだ。
今作においても、ラストシーンの映画的巧さによって、作品自体の質を格段に上げている。
韓国映画のつくり手たちは、本当に映画という“娯楽”をよく理解していると思う。
そして、俳優たちが演じるキャラクターの“実在感”がまた凄い。
一人ひとりの顔つきに、各人物の人生模様が如実に現れていて、細かい人物描写がシーンとして無くとも、彼らがどういう人生を歩んできたのかが見えてくる。
嘘で塗り固められた人生を歩んできた主人公は、「真実」という“偽り”をすべて捨て去り新世界の支配者となる。
その彼の表情が苦悩に満ち溢れていたとしたならば、それはやはり、新世界の景色を共に見下ろすべき存在が誰であったかということに、ようやく気付いたからだろう。
その「孤独」に心が揺さぶられる。