1.《ネタバレ》 チャン・イーモウが久しぶりにかつてのパートナーであるコン・リーと組んだ作品は、
「活きる」や、前作「サンザシの樹の下で」でも描いてきた、文革を下地にした作品です。
本作では文革の時代そのものは序盤のほんの短いだけで、作品の大半の時間は文革後の家族の物語となっています。
文革の終結が宣言され、名誉を回復すると紙一枚で通知を受けても、多くの家族にとってはそれで終わりではない。
夫の帰りをひたすら待ち続ける妻と、妻の記憶が戻るのをひたすら待ち続ける夫。
そんな両親を傍で見つめる一人娘。まだ文革が終わっていない、あまりにも辛い家族のドラマ。
妻を演じた化粧っけが無いコン・リーは老けて見えますが、大女優の貫禄を随所に感じさせます。
夫を演じたチェン・ダオミンの繊細な演技に、娘役の女優さんの透明感も光ります。
歴史的には文革は過去のこととなり、終結してもう何年も経つというのに、夫婦はまだ駅で夫の帰りを待ち続けている。
この家族にとっては、文革はまだ終わっていないことを思い知らされます。
普遍的な夫婦愛と家族のドラマの形を取りながらも、チャン・イーモウの変わらない批判精神を感じさせます。