55.《ネタバレ》 ディズニーのアベンジャーズ、ワーナーのジャスティス・リーグなど、アメコミのクロスオーバーは最近のトレンド。そんな中FOXはX-MEN以外のヒーローものがことごとく失敗(新F4も散々だった)したため、アメコミタイトルの多彩さでは他スタジオの後手に回っている状態だ。
しかしX-MENの性質上、ヒーローの数では全く引けをとっておらず、また各ヒーローの人気も絶大なため、X-MENの世界観でアメコミ大作枠を充実させることができる。本作もその一つだ。色んな理由でコロッサスと学校くらいしか出せなかったものの、「X-MEN」の世界を広げることに貢献している。
興行的に大成功を収めた「ウルヴァリン」のラスボスとして映画デビューを飾ったデッドプールだが、原作とかけ離れた設定で描かれたため、ファンから好意的には受け入れられなかった。さらには演じるライアン・レイノルズも、H・ジャックマンのバルキーな肉体の前に、見た目の迫力でも完敗を喫したこともあり、このデッドプールは「ダメなデッドプール」の烙印を押されてしまった。
ライアンはルックスも良いし、演技も起用にこなせる(が大抵、共演者の好演に喰われる)。アメコミ物の経歴も豊富だ。しかしながら、どこか残念な雰囲気が付きまとう映画スターでもある。思えば上述の「ウルヴァリン」意外のアメコミ原作映画「グリーン・ランタン」「R.I.P.D」「ブレイド3」では、全て興行的に惨敗し、何度も苦い経験をしているのだ。
しかし「デッドプール」ではこれらの悲惨な経験が、まるでライアンが仕掛けた複線であるかのように回収されているから救いがある。今作で再びデッドプールを演じるにあたり、自らが最もイジリがいのある最強のネタ人間になっているとは、本人も嬉しいんだか悲しいんだか。
「ブレイド2観て楽しめよ!」ライアンには悪いが確かに2はアンタの出ている3の100倍面白かった。
さて映画としては意外に堅実な出来。ぶっ飛んだヒーロー像を提示しているが、脚本自体はオーソドックスな「ヒーローになるまで」の物語である。
ヒーローものでは避けては通れない「誕生」エピソードだからこそ、デッドプールのような強烈キャラで既視感やマンネリを打破できるというワケだ。ストーリーテリングにしても、一風変わった回想形式をとり、客を楽しませようとする姿勢にあふれていて好感が持てる。
惜しい点としてはアクションシーンの見せ方が単調な部分か。カーチェイスや格闘などのバリエーションはあるが、舞台が全て似たような市街地のため、メリハリが薄くなりスケール感も欠いてしまった。デッドプールについては、フザケたようでブルータルな戦闘スタイルが確立されていただけに、色々なシチュエーションでのアクションが見られないのが惜しいと感じる。
惜しい部分もあるが「デッドプール」として押さえるべき点は押さえていると思う。以前の失敗に学んだか、ファンが望むデッドプールを上手く表現し、キャラで魅せることに主眼を置いているのが分かる作りだ。
第4の壁を飛び越える口の減らないセクシーなマザファカ。OPの「Angel of the morning」から、エンドロール後のアベンジャーズいじりまで、デップーらしさがブレることなく貫かれ本作は、間違いなく本来あるべき「デッドプール」の姿だろう。