9.《ネタバレ》 「続きが気になる」「結末が知りたい」と観客に感じさせるのは、良い映画の条件の一つだと思います。
その点に関して、本作は文句無しの出来栄えでしたね。
ただ、面白かったかというと……ちょっと微妙です。
「続きが気になる」って感情と「面白い」って感情とは、本来別種の代物なんだなって、この映画に教えてもらったような気分。
やっぱり、タイムループの期間が二分っていうのが短過ぎて、主人公が階段を登る姿なんかを何度も何度も見せられるもんだから、流石に(もう良いよ……)って気持ちになっちゃうんですよね。
一つのループ期間を、一回の長回しで見せるって手法も、アイディアとしては面白いんだけど、実際に観た限りでは「手ブレで酔う」「アングルがワンパターンで退屈」っていう、デメリットの方が際立っていた気がします。
劇中の人物達もタイムループで気が狂いそうになってたけど、観客まで同じ気持ちにさせられるっていうのは、正直辛いです。
冒頭に出てきた白服の女性が全然出てこない(途中で出てくるけど、タイムループに巻き込まれているのに、妙に冷静だったりする)のが気になっていたら、それが伏線だったとか、タイムループ中のはずなのに雪が降り出して(いや、駄目だろ。ロケやり直せよ)と思っていたら、それに対しても台詞上のフォローが有ったりとか、丁寧に作られているので、映画としての完成度は高いんですけどね。
「面白い映画」っていうよりは「良く出来た映画」っていう、そんな誉め言葉が似合いそうな感じ。
「ループするのが二分間だなんて短過ぎる」って点を逆手に取ったような「たった二分間のデートでも、色んな事が出来る」って示す終盤の展開も、独特な魅力が有って良かったです。
個人的には、タイムマシンを直す件よりも、あそこのデート場面の方が、本作のクライマックスと呼べるんじゃないかなって気がしました。
そんなデート場面での、雪化粧した旅館や山の景色が、本当に美しくて……
あれって、最初から計算尽くで「この場面には、雪が必要だから」と、天気を狙い定めた上で撮影したのか、それとも偶然雪が降ってしまっただけなのかと、気になっちゃいますね。
もし前者だとしたら、作り手の拘りに「粋」を感じて嬉しくなるし、後者だとしたら、まるで映画の神様からの贈り物のような「素敵な偶然」だよなって、そんな風に思えました。