6.《ネタバレ》 前作はピクサー作品の中でも最も好きな映画だったけれど、今回も楽しませて貰ったわ。
思春期を迎えたライリーに訪れる感情の嵐を描いた2作目。人格を形成してゆく上でライリーの内部はかなり複雑になって、シンパイを始めとする新たな感情の影響によってこれまでの様々な経験がヨロコビの思惑から外れて混沌を生み出し・・・そうね、人生は複雑で厄介だわ。ライリーとヨロコビを通して単純な善悪、正邪の二元的世界から重層的に絡み合った世界へと成長してゆく過程を描くお話。
前作に比べるとちょっと色々とひっかかってしまうところはあるのね。
追い出されてしまった感情たちが指令室を目指す展開は前作の焼き直し感があるし、前作はそれが旅のような道程に感じられたのだけど今回は要所要所が点で描かれて、あまり長い道のりを移動してゆく感覚はないのね。
シンパイは悪役みたいなポジションになっちゃってるし(彼女の判断もまた重要な筈なのだけれども)、前作が産まれたばかりのライリーの中にヨロコビが生まれてからの10年以上が描かれ、そこに誰にも当てはまってゆく普遍性が描かれているのに対して、今回は主な物語がたった3日間の出来事なのでライリーのごくごくパーソナルな、生活のちょっとした一部を切り取ったような感覚。外側の舞台もほぼ合宿先の高校という閉塞した空間ゆえ、かなり閉ざされた感覚のする映画なのね。
でも今回はライリーが本当に人間クサいキャラへと成長してる事を実感させてくれるの。何しろ見ていて共感性羞恥が刺激されてギャー!ってなっちゃうシーンが続出。『私ときどきレッサーパンダ』もギャー!って映画だったけれどアレって前半の方だけだったでしょ、でもこの映画はほぼ全編。「ライリー、いた、いたたたた」みたいなシーンに悶絶必至、って。個性的な感情たちによってライリーに人としての魅力が備わってゆく流れ、それは作品創りにもシンクロしているみたいで、それって映画的だわね。
個人的には推しなムカムカの出番が多かったのと、イイナーが可愛かったのが良かったわ。あとジアッキーノ先生の音楽が前作を踏襲して心地よかったのも。エンディングの日本語版独自主題歌(お得意の既成曲流用パターン)はちょっとアレ。