42.この映画が製作された当時、フィンランドでは失業率が20%以上にも上り多くの人々が仕事を失ったという。フィンランドを愛するカウリスマキ監督にとっては、これは失業した人たちへの「めげずに頑張れ!」という応援のメッセージなのかもしれない・・・。最後に出てくる今は亡き俳優「マッティ・ペロンパーに捧ぐ」という文章も涙を誘う。 【かんたーた】さん 9点(2004-03-04 14:57:57) (良:2票) |
41.《ネタバレ》 バスター・キートンの無表情コメディを世紀末に蘇らせたアキ・カウリスマキの“敗者三部作”の代表作。主演はカウリスマキ御贔屓の“幸うす顔の女”カティ・オウティネン、知らない人からすれば「なんて無表情な演技なんだ」と思うかもしれないが、実は本作での彼女はそれまでのカウリスマキ作品の中では最も表情豊かだとファンからは驚かれたぐらいです。短いシークエンスを暗転でつないでゆく彼独特のストーリーテリングは、明らかに親交があるジム・ジャームッシュの影響でしょうね。 ソ連崩壊と世界的通貨危機に巻き込まれたフィンランド、ノキアですら経営危機に苦しむ経済不況の真っ只中でのささやかな庶民の暮らしを、独特のリズムで見せてくれます。カウリスマキの映画は小津安二郎の影響が有名ですけど、正直いって自分には構図も含めて小津色を感じることは少ない。だいいちセリフが極端に少ない作劇法は、小津とは正反対なんじゃないでしょうか。それでも“庶民のささやかな幸福”というある意味ミニマムなテーマは共通していると言えるでしょう。 この夫婦の悪戦苦闘は最後に妻の職場の前オーナーの善意で救われる結末ですが、給料未払いや銀行のゲス対応そしてカジノで夫が資金を溶かしてしまうなど、誰もがどれかは経験してそうな人生の躓きを淡々と見せてしまうところにはかえって思い切りの良さすら感じる脚本です。これは日本でよくいる私小説作家的な監督や脚本家ならドロドロで暗鬱なストーリーにする例が多く、ほんとに「カウリスマキの爪の垢でも煎じて飲め!」と説教したいところです。きっとラストに夫婦が見た空には、雲だけじゃなく綺麗な虹がかかっていたんだろうなと思います。でも原題も『浮き雲』なんだけど、『浮雲』は小津の映画じゃなく成瀬巳喜男の作品なんだけどな、まあ細かいことですけど。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-09 22:59:37) (良:1票) |
40.会話は少なくても実によくわかる展開だ。シェフのアル中事件から始まって、ムスッとした表情とは裏腹のコメディに思わず笑ってしまうおもしろさがある。そして元レストラン仲間のつながりも良い。職さがしがうまくいかないで苦労続きのなかで、ラストで店が大繁盛と上手すぎるようだけど、夢のある映画として見れば悪くない。音楽もまたすばらしくチャイコフスキーの「悲愴」が流れたかと思うとフィンランドを代表するような歌手の歌が聞けたりもする。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-03-12 21:50:14) (良:1票) |
39.2人が見上げた空は、雲が流れ行く澄んだ青空だったんだろう。 僕にも見えたよ。 【ピスタチオ】さん [映画館(字幕)] 9点(2014-12-13 02:37:49) (良:1票) |
38.《ネタバレ》 アキカウリスマキ、いいなぁ。リストラされた人の心にピタ~ッてくるね。中々この味、出せないよ~!? 【トント】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-05-08 19:40:26) (良:1票) |
37.ハリウッド映画の演出過剰、過激な映画を観慣れていると、この作品のようなあらゆる意味で抑制の効いた”つつましい”映画が新鮮に見えてくる。最小限の科白しかなく、表情は常に無表情、アクションも控えめで、これといった盛り上がりの無い日常を淡々と描く。結論を見せない演出も特徴のひとつ。職場をクビになったり、就職に失敗したり、賭けで負けたりする場面などは最後まで描かれず、次のシーンで結果が暗示される。顔の表情だったり、酒の飲み過ぎで倒れていたりと、笑える仕組み。省略の達人である。無表情キートンのように観客を突き放すのではなく、ほのぼのとした温かみが感じられるのも佳い。独特のセンスがひかります。どのジャンルにも当てはまらないような映画だが、しいて分類すればコメディ。それも大笑いや中笑いではなく、ペーソスの中に温かみのあるクスリ笑い。物悲しさと笑いの同居はチャップリンを彷彿させる。慣れてくると登場人物の飄々としたおとぼけぶりに笑いを禁じ得なくなってくる。味わいがあるんですね。あと意表を突く演出が多いのも特徴。例えば、アル中で包丁を振り回すシェフ。その存在だけでも笑えるのに、彼を取り押させるのに男性が失敗し、女性が殴って取り押さえる。その様子を一切見せない。科白もない。あっという間に何事もなかったかのように収まり、翌日シェフは怪我させた男に治療代を毎度の事のように払う。このシェフが失業してホームレスにまで落ち込むが、アル中更生施設を経て復帰するのも意表を突く。悪徳職業斡旋所で騙されたはずが職が見つかったり、結局そのオーナーがが悪徳経営者だったりと、どこまでもすっとぼけた脚本。これといった盛り上がりがないのに退屈しないのは”意表”の効用でしょう。この映画は監督の人生観や性格が強く反映されている思う。これだけユニークな映画はめったにないから。つつましく、引き籠り系の性格であることは想像がつく。物語は、共に失業して仲たがいした夫婦が絆を取り戻す話と、やむなく廃業したレストランを再開させる話。ハッピ・ーエンドで陽気な音楽がかかっても、あくまでも笑わない夫婦。感情を表に出さない国民性が下地にあると思いますよ。そんなことを考えてしまう奇妙な映画でした。この独特の世界観は癖になるかも。良作です。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-09-08 23:04:51) (良:1票) |
36.正しく、小津監督の世界だ!その人間の描き方、一つ一つのシーンの描き方から音楽まで何もかも小津監督を思わせる世界です。暗くなりがちな中にも時々、見えるユーモアと優しさとのバランスがほど良くて、観ていて気持ちが良い。ラストがこれまた良いんだなあ!正にタイトル通りに相応しいあのラストシーン!空を見上げる二人の表情がこの映画を物語っている。やたらめったらうるさい音楽を流し、CGばかりのめまぐるしい映像ばかりの今のハリウッド映画とは違って、人間味溢れる世界、じわりじわりと来る温かさ、こういう映画があるから私はミニシアター系の映画が好きです。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-02-10 21:55:02) (良:1票) |
35.《ネタバレ》 この映画の好きなところは、さりげないところだ。音楽も台詞にも大げさなところがない。大げさなのが悪いというのではなく、本当に伝え方が上手なのだ。人々の小さな動きの中から何かを発見した時少し嬉しくなる。どんな時でも、それが辛くても、悲しくても、悔しくても、あるいは飛び上がりたいほど嬉しくても主人公イロナの表情はさほど変わらない。いつもやんわりとした空気のなか、カウリスマキの持つ優しい目線と、なぜだか笑みが漏れる独特の「間」が色々な出来事を上手に伝えてくれる。夫婦して一気に職を失う結構悲惨な物語なのだ。「38歳?いつ倒れてもおかしくない。」なんてことを言う失敬な男まで出てくる。でも事の流れはいつも穏やかだ。老舗レストランの最後の夜の様子や、ローンで買ったテレビが運び出されるシーンなど、寂しさとおかしさと優しさが同居している。最後はハッピーエンドで、でもやはりさりげない表情の主人公を映す。しかしその後亡くなった友人へのメッセージで締めくくられており、切なさで胸がいっぱいになってしまった。 【のはら】さん 8点(2004-03-30 19:32:14) (良:1票) |
34.《ネタバレ》 バスの運転手にキス。フィンランドってどんな国だよ! と一人突っ込んでいると、この二人は夫婦であることが分かる。おいおい何プチドッキリやってるの、と監督の思惑にまんまとはまる。所々に可笑しさを誘うシーンがある。夫の解雇をトランプで決めるシーン(そんなアホな!)。映画館のもぎりのお姉ちゃんに悪態をつく夫(妹かよ! 又騙された)。回転資金をカジノで稼ごうとする(やめろって)。愛想の無いレストラン(「いらっしゃいませ」は日本の文化か?)。監督の掌で遊ばれながら、私はこの短いお話にぐいぐいのめりこんで行った。そしてラストの夫婦のカット。無表情なオウティネンが笑ってるようにみえる。かー、いい話だ。アホな日本人が海外旅行やブランドものや学歴でしか幸せを叶えられないのに反して、この貧乏の極地にいる二人はそれをしっかり掴んだ。見習わなくちゃいけないんじゃない、こういうの。それにしても支配人は銀行には金を払えず、なんで新規の回転資金は出せるの? こういう詮索は無粋か。 (ビデオ) 【komati】さん 9点(2004-03-09 21:59:57) (良:1票) |
33.《ネタバレ》 カウリスマキ監督の映画は二本目。「希望の灯り」以来。 「希望の灯り」もかなり動きの少ない演出だったけど、これはそれに輪をかけて大げさな演出はなし。 ドラマもそれなりにあるし、けっこう致命的な悲劇も迎えるんだけど、それを淡々と乗り越えて受け入れていく。 実生活と照らし合わせてみると、まあそんなもかものしれないなと。 互いに信頼して労わり合う夫婦の在り方も意外と嫌いじゃなかった。 まあ好き嫌いはあるだろうし、観る人を選ぶ映画かもしれないけど、私は嫌いじゃなかった。むしろ癖になるかも。 |
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32.評価が高いので頑張って最後まで観てみましたが、私には何がオモロいのかわからなかったですね?最初から最後まで誰からも笑顔が見てとれない、観てても重苦しい気分になる作品でした。 【SUPISUTA】さん [インターネット(字幕)] 3点(2023-02-11 13:36:48) |
31.《ネタバレ》 かなり厳しい状況なのに淡々とクールでユーモアもあり、全体的に優しさに溢れていると感じます。 どん底な状況でも人間関係が良いんですよね。仲間、信頼というものが確かにあって、やっぱり人間最後は人柄なのかなと思わされる。 室内の壁の色や配色が独特で、これも悲壮感をあまり感じない要因かもね。 オープニングは黒人がピアノでジャズ弾き語りだったんですが、レストラン閉店時は日本で言ったらムード歌謡曲って感じでして、 まだ小さかった頃の昭和を思い出した(笑)あんなような曲がよくTVから流れてきてたと思う。 あれ、ジャンルで言ったら何になるのかしら、タンゴ?ルンバ? 夫婦の部屋に子どもの写真が飾ってあってイロナが見つめるシーンがあるんですが、てっきり子どもを亡くした夫婦なのかと。ワンちゃんをすごく可愛がってるのもそんな経験があるからなのかと勝手に想像したんですが、あの写真は急死したマッティ・ペロンパーの子供の頃の写真だと鑑賞後に知りました。ラストにもクレジットが出ていましたね。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-10 12:00:11) |
30.《ネタバレ》 このレストランの名前、「どぶろく」でしょう? (笑) 私はアキ・カウリスマキ監督の、日本をネタにした茶目っ気が好きなんだ。 ストーリーはお馴染みです。平凡な暮らしの中に見つける、ささやかな幸せと人間賛歌。確かに、無職同然の夫婦二人の生活は慎ましい。でも部屋はお花や絵や写真を飾っていてキレイだし、二人とも服装にもこだわっています。そして、タバコも酒も映画も決して止めない。たとえ生活が苦しくとも、人生を楽しむ気概とゆとりは忘れるな。監督の映画からは、いつもこのメッセージを感じます。 最後、レストランの席がうまっていく光景は、まるで見ているこちらの心まで満たされていくようです。この展開、荻上直子監督の「かもめ食堂」を思い出しますね。そう、どちらも舞台はフィンランドのヘルシンキ。どうやら、小津監督と日本文化を敬愛するアキ・カウリスマキ監督のこころに、荻上監督はよいかたちで応えてくれました。 嬉しいかな、フィンランドと日本の関係は、映画を通じてすこぶる良好なようです。 【タケノコ】さん [DVD(字幕)] 8点(2020-02-16 22:12:42) |
29.本来はもっといろいろドラマを秘めているはずなのに、撮り方があまりにも平坦なので、狭い箱の中で登場人物がチマチマ動いているだけのように見えてしまうのです。計算が画面から透けて見える作品は、面白くありません。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 4点(2019-08-29 00:08:35) |
28.《ネタバレ》 失業した夫婦それぞれの求職過程でドツボにはまってゆく姿が身につまされる。二人と違ったのは戦力外通告を受けた事と一人であった事。ホッとした結末に、自分を憐れむ事無く山あり谷ありの毎日を過ごせば良いと思わされる。 余談ながら、カウリスマキ作品には接客という概念がないのかと常々感じるところで、本作でも他作よりほんの少しましと言う程度。こちらでは自動販売機でもお愛想を言ってくれるのに。 |
27.好きな人は好き、わからない人にはわからない。 |
26.カウリスマキ監督の作品は、シナリオがすごくシンプルでわかりやすい。映画は本来サイレントで、音楽や色彩はなかった。でも、それでも観客が楽しめる作品は作られていた。映画とはつまり、目で見て、考えれば、わかるものなのです。より物語が豊かに感じられる要素として、音楽や色彩は存在し、演技も演出も小道具も美術も、そして台詞も存在している。極端に言えば、それらの要素を限りなく低め、映画本来の面白みや可能性だけで勝負しようとしているのがカウリスマキ監督の作品だと思う。この作品もシンプルでわかりやすい物語と、分かりやすい人物の感情をしっかり理解して見ることができた。特にラスト、イロナとラウリが見上げる空が一体どんな空なのか凄く気になるけど、それを見せないところが憎い。でも、その空がどんな空なのかなんとなくわかってしまうから素敵。 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-08-13 19:40:33) |
25.《ネタバレ》 表情の変化が乏しい役が多いカティ・オウティネンにしては変化の多い映画でした。夫婦ともに失業してしまったあと、夫は諦め半分に、妻は精力的に仕事探しをしますが、どこでも何時の時代でも同じだなあと感心しました。相変らず淡々と進みますが気がつくと元気をもらっているような映画です。 【omut】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-08-04 19:36:57) |
24.普通だったら、失業した夫婦ががんばるというただの退屈な話で終わってしまうような、おおげさな所一切なしの何も面白くなさそうな映画なのに、何かこの監督には独特の雰囲気が魅力的で最後までボーっとみさせられてしまいます。なんなんでしょうかね。不思議です。 【すべから】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-03-19 18:28:25) |
23.アキ・カウリスマキ作品を観るのは、『10ミニッツ・オールダー』『過去のない男』『マッチ工場の少女』に次いで四作品目。 それらの作品と比較すると、「まあまあ」かなってところ。 カウリスマキ作品常連の、主人公を演じた女優、“カティ・オウティネン”の笑顔が見れたのも、なんか貴重なモノを見れた気がして有り難味があった。 何しろ、他の作品では笑顔がほとんど見れなかったので・・・ 前半、正直、眠気に襲われた。 何度も巻き戻した。 後半は意外にも好転。 楽しめた。 アキ・カウリスマキ。 嫌いな監督ではないが、かといって他人に推奨できる監督って感じでもない。 とにかく地味~な作品が多いからだ。 だけど、どの作品にも“温か味”が感じられる。 だから見終わった後、悪い感じが残らない。 これは映画において結構、大事だと思う要素だ。 いくら楽しい映画でも、見終えた後に後味の悪さが残ったら、よろしくない。 そういう意味では、いい映画を創る監督さんだと思う。 アキ・カウリスマキ。 言ってみれば、“佳作”創りの名人と言えるのかもしれない。 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 5点(2007-08-31 00:04:18) |