35.《ネタバレ》 実に豪華な俳優陣。
メイン三人の「濃い顔」を見てるだけでもワクワクしちゃいましたね。
今となってはコメディ映画のイメージが強いヴィンス・ヴォーンが、悪人を演じているのも新鮮。
当時は「サイコ」(1998年)の印象が色濃く残っていたがゆえの配役かとも思えますが、元々彼って「エリートな気品」「どこか不気味で冷たい顔立ち」を備え持ってる人でもありますし、本作についても適役だったと思います。
スティーヴ・ブシェミも胡散臭くて、妙に憎めない「殺され役」を演じているし、ジョン・トラヴォルタ演じる「頼れるパパさん」っぷりも、文句無し。
子役のマット・オリアリーも可愛らしく、守ってあげたいと思えるような息子のダニーを好演してましたね。
こういったストーリーの場合、演じる「子供」の魅力如何で評価が変わってきますし、そこは文句無しに合格だったんじゃないかと。
BGMも雰囲気があって良かったし、89分と短く纏まってるのも好印象でした。
……ただ、脚本と演出は凡庸としか思えず、褒めるのが難しいです。
一応良い所もあって「ダニーは不良少年なので、周りが中々『殺人の目撃』を信じてくれない」って展開には説得力ありましたし、そんな中で、真っ先に信じてくれたのが父親のフランクっていうのも、グッと来るものはあったんですけどね。
父子の逃亡劇になるのかと思いきや、親権争いの裁判になったりするのも、意外な展開ではありました。
でも正直、それ以上に粗が目についちゃって……
「脚本と演出の不備を、演者の力で誤魔化してるだけ」って印象は拭えないです。
そもそもダニーから「人殺しが同じ家に住んでる」「しかもそれが、義理の父である」っていう恐怖や、緊迫感が伝わってこないのが致命的。
これに関しては、いくら子役が怖がった演技をしても「何も対抗手段を取らず義父の言いなりになってるだけのキャラクター」「だから追い詰められてる感じがしないし、恐怖が窺えない」って形になってる訳だから、脚本の責任だと思います。
フランクの現在の妻であるダイアンの影が薄いのや、ダニーの母が妊娠したのを活かせてない辺りも不満。
恐らくは「フランクの孤立感を高める」「ダニーの疎外感を強める」為の要素だったんでしょうけど、ダイアンは途中から出てこなくなるし、妊娠についても言及されなくなっちゃいますからね(一応、最後に流産したのが示唆されるけど、後味が悪くなっただけ)
この手の「必要無い人物、要素が多い脚本」って、どうしても評価が低くなっちゃいます。
極め付けは終盤における「ライター自爆着火」の間抜けさで、これには本当ガッカリしちゃいました。
ダニーの母が夫を疑うキッカケにしても「夫の衣類からガソリンの匂いがするのに気付き、彼が犯人と疑う」って流れでも成立したと思うし、もっと脚本を煮詰めて欲しかったですね。
たとえシンプルなストーリーでも、細部を丁寧に作れば良作、あるいは傑作と呼べる品に仕上がったのでしょうが……
残念ながら本作は、それに当てはまらない例に思えました。