6.主人公は元IRAのテロリスト。
かつて自らが犯した罪に苦しみ続けている。
この物語は、彼がその罪をどう受け止め、贖おうとするのかを静かに描き出していく。
主人公の内面の葛藤が率直に表現されており、信仰とは何か、救いとはどのような形をとるのかという問いが深く心に響いてくる。
単なるドラマを超えて、宗教的・哲学的なテーマが繊細に扱われている点が、この映画の大きな魅力。
ミッキー・ロークの抑制の効いた存在感が素晴らしく彼の頂点ではないかと思う。
微妙な表情や仕草から、苦悩に満ちた複雑な感情が滲み出る。
ボブ・ホスキンス、アラン・ベイツ、サミ・デイヴィス、そして若きリーアム・ニーソンらもそれぞれの役に説得力を与え、この物語の世界観を支ええう。
ビル・コンティが手がける音楽は、主人公の心情や場面ごとの雰囲気を見事に引き立てていく。
映像美も控えめながらも効果的で、静けさと緊張感が画面全体に漂い、作品全体のトーンをさらに豊かにしている。
この映画は、決して派手なアクションやスリルを期待するタイプではなく、静かに展開される人間ドラマが、観終わった後にも心に深い余韻を残してくれる。
丁寧に作られたキャラクター描写や、繊細なテーマへのアプローチが、本作を単なる犯罪映画以上のものにしていると感じた。
原作も読んだが、先に読んでなくてよかったと思う。
映画を観たシーンが小説を見た時に挿絵のように甦りますます小説の中に入り込む自分を感じてしまった。
素晴らしいストーリーがこの世の社会の葛藤に中に飲み込まれていく人の運命の儚さを伝えてくれるのだ。
素敵だったミッキーロークの時代と共に忘れられない名作。