66.《ネタバレ》 ストーリーはいたって平凡。ですが平凡だからこそ、恐怖と緊迫感、そして危機感をリアルに感じ取れるのかもしれません。 ブラッド・レンフロのトッド・ボウデンと、イアン・マッケランのドゥ・サンダーが非常に良く、二人の心理戦だけでも見ごたえがあります。時には手を組み、時には火花を散らす、二人の独特な間合いとそこから生まれる緊張感が面白い。 今までスティーブン・キングの原作は一度も読んだことがなく、だから逆にキング原作の映画を面白いと感じるのかもしれません。今作に関しても、小説を読んでいるかのような雰囲気、リズムが大変良いです。音楽もマッチしています。 ドゥ・サンダーの狂気をトッド・ボウデンが継承したことを窺わせるラスト。ですがやはりインパクトは足りないですね。それに、始めから『悪』を内包しているかのような少年でしたので、それが表面に顕在化されただけとも思えます。どうとでもとれるラストが、すごく良いようで、何か惜しい作品でした。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-03-14 12:43:57) (良:1票) |
65.《ネタバレ》 アメリカで遁世している元ナチスの高官である老人と頭脳明晰な男子高校生との交流と駆け引きを描いた「裏グラン・トリノ」的なサスペンス映画。老人を通じてホロコーストの真実を探ろうとする主人公がその狂気を呼び覚ましてしまい、やがて自らもその狂気に染まっていくという話はそこそこスリリングではあるのだが、ナチスやホロコーストをある意味オカルト的事物として扱っている姿勢に若干の違和感を感じた。そもそも収容所の昔話やSSのコスプレをした程度で芽生えてしまう狂気に、『ひっとらぁ伯父サン』並のデフォルメ感を覚えてしまったのは自分だけだろうか。その片鱗に触れただけで気が狂ってしまう様な禍々しい呪物としてホロコーストを描きたいのは分かるが、別にナチスは特別に頭のおかしな人達だけが集まって出来た組織ではないはずである。おそらくナチスの末端でユダヤ人狩りをしていた人間の多くは、命令に従っただけの小心な役人に過ぎなかったに違いない。つまりそれは、誰だって条件さえ揃えばホロコーストの当事者になり得る可能性があるという事である。現に戦後の日本でも小規模なホロコーストと思わしき事象はいくつも発生している。連合赤軍山岳ベース事件・女子高生コンクリート詰め殺人事件・一連のオウム事件、まだ記憶に新しい尼崎の連続変死事件だってそうだ。ホロコーストはオカルト現象ではなく現実に起こった出来事だし、これからもいくらでも起こり得る可能性のある事象である。この映画の様にホロコーストを記号化・特別視して忌諱の対象にしてしまうのは、否定はしないが個人的には余り感心しない。むしろ、もし身近に横暴な独裁者がいるなら、その価値観を徹底的に相対化させて鼻で笑ってやるべきだろう。 【オルタナ野郎】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-04-09 19:04:12) (良:1票) |
64.原作はキングの著書の中でも好きなほうです。少年が大人に成長する過程で潜在的に持っている闇の部分が少しずつ開眼してゆく様の緊迫感がたまらない傑作です。キング原作の映画化作品には期待を大きく裏切る作品が多々あることを知っている私としては、当然落胆することを覚悟してこの作品に臨んだわけですが、それが良かったのか、けっこう楽しめました。少年の闇を形あるものとして見せない展開にもっていったのはプロモーター上の問題でしょうか?かと言って闇が全く描かれていないわけでもないので、けっきょく焦点が少年の闇なのか老人の闇なのか、はたまた二人の主導権の取り合いにおける心理戦なのかが曖昧で中途半端なところが不満に残りました。サスペンスとしては無難に仕上がっていると思います。 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 5点(2005-09-30 14:12:52) (良:1票) |
63.《ネタバレ》 何がゴールデンボーイなのかさっぱり分からなかったけど、内容は怖くて素直に良い作品だったと思えました。はじめは少年がじいさんの方を脅して戦争の話をさせたりいろいろ言うことを聞かせてたと思ったら、そこはやはり修羅場を潜り抜けたじいさん。少年の心情の小さな隙を掴んで一気に立場を同等の物にしてしまった。いやそれ以上か・・まあ立場が最初と全然変わってくる訳なんだけど、その隠れていた狂気と頭脳が次第に露わになっていく場面なんて、もう必見でございます。それとじいさんが少年に浮浪者を殺させるシーンは、ちょっと考えさせられるシーンで、じいさんが浮浪者の背中を刺した時点で、ほっとけば死んでたんだろうに、何でわざわざあんなことをさせたんだろうかと。単純に罪を着せたかったという意図もあるかもしれないけど、重要なことは人を殺す時というのはどういう事でどういう気持ちなのかという事を、戦争というものに対して興味はあるのだけど、それがどういうものかイマイチ重く考えてなく、それを無責任にも質問する少年に対して、人を殺すという事がどういうことか分からせたかったのだと思う。だと思うのだけど、殺人を犯した時の少年の心情や、その後の言動の変化があまり描かれてなかったのが残念。その後をもうちょっと観てみたい作品だよなあ。 【ホーラン℃】さん 7点(2004-10-03 15:15:01) (良:1票) |
62.《ネタバレ》 <原作未見・映画版のみの評価> 原作を知らないので、それなりに楽しめた。ナチズムへの傾倒の危険性を通して、狭義の意味から、人種、年齢を問わず、人間全般に普遍的に当てはまる、「他者より優れていたい」という本能の危うさを説いている作品だろう。 トッドの罪が表沙汰にならず、「選民意識」のみが継承されていくというラストこそが、永続的に受け継がれていく人間の業の深さを強調している。 ただどうせなら、もう少し突っ込んで、戦争犯罪やホロコーストを糾弾していくうちに、はまり込みやすい「他者を糾弾する事の目的化」という危険性を追求して欲しかった。 【FSS】さん 6点(2004-09-14 23:55:47) (良:1票) |
61.《ネタバレ》 キングの原作は、多分最初から映画化を念頭に置いて書かれていたと思う。超常現象とサイコサスペンス抜きで「心の闇」というテーマに正面からぶつかっている。かつてのナチ収容所長ドゥサンダーは原作と同じように虐殺の《職人》として描かれる。仕事でやってたんだから猟奇殺人者のように精神が蝕まれないかと、言うとそんな事は全くなくて、ちょっと機会があればナチの異常性を取り戻してしまう。キングが描いた物語を中盤まで忠実になぞったおかげで、映画版も「悪」「犯罪」という分けづらいモノの分離に成功しているようだ。惜しいのは画が季節感に乏しく、また実際に物語の最初から終わりまで、原作のように数年かかったわけではなさそうだという点。原作で、最初にドゥサンダーの元を訪れたトッドは14歳だからね(最終的に18歳で自滅)。この、子供の無邪気さが残る微妙な年齢設定を活かしてほしかった。クライマックス以降は予定調和なので、正直どうでもいい。むしろ原作版よりこちらの方が恐ろしかった。これから、ナチ将校から譲り受けた心の闇を抱えて生きていかにゃ~ならん! という重圧感が重く圧し掛かってくる(でもラストの画はもうちょっと何とかならんのかね)。ラストに大量殺人を持ってきてR指定になるのを避けたかった、というのが製作側の本音だろうけどねえ。もっとも昨今の映画はDVD化を当て込めるわけで「原作通りのラストも一応撮っておいて、特典に収録」みたいな技を使ってもよかったかも(足元には箱入りの弾薬。高速道路を遠目に見ながら、ライフルを掲げて「俺は世界の王様だぁ~っ!」と叫ぶトッドを後ろから撮って、後の展開は字幕で…エキストラなしの一発ロケ。安くて済むよ、シンガーさん)。 【エスねこ】さん [DVD(字幕)] 6点(2004-05-04 08:24:50) (良:1票) |
60.互いに心に闇を持った少年と老人のどろどろしい心理攻防に息を呑む。最近のサスペンス映画にはめずらしいスピード感に頼らないじっとりとした展開が秀逸だった。陰影際立つ映像美も良く気持ちを途切らさない。生まれたばかりの心の闇を表現したブラッド・レンフロも良かったが、奥深い年輪さえ感じさせる心の闇を持つ老人を演じたイアン・マッケランの鬼気迫る存在感が凄かった。ラストに盛り下がってしまうのは残念だが、作品としては高いクオリティを見せる。 【鉄腕麗人】さん 7点(2004-01-30 22:09:37) (良:1票) |
59.すごく好きな原作なのでかなり期待して見た。 上流家庭の青年が、かつてナチスの強制収容所で暴挙を繰り広げていた戦争犯罪者である老人を偶然に街で見つける。 青年は以前からホロコーストに興味を持っていて、その老人が隠れ住んでいる家をつきとめる。 「収容所での話を偽り無く全て聞かせろ!」。老人をゆすって、ユダヤ人虐殺という残忍な殺戮の話を聞きだそうとする。毎日老人の家に通い、話しを聞くにつれて青年自身も除々に精神に異常をきたすようになってしまう。成績は落ち込み、スポーツに見も入らず、更には浮浪者を殴り殺してしまう(原作のみのエピソード)という暴挙に出る。ゴールデンボーイと言われる青年の転落は加速度的に始まった・・・。 原作でのジワジワと洗脳されていく青年の描写が好きなのだが、映画では足早に表現されていて物足りない。収容所での表現が全然足りていないのが原因だと思う。 少年が“行き着くところまで落ちてしまう”衝撃のラストシーンも原作と異る。その結果、見事に失敗している。 【おはようジングル】さん 2点(2003-11-26 18:24:39) (良:1票) |
58.非常に心理的な恐怖に満ちた映画だった。相手を支配しようとする少年と老人の攻防は鳥肌がたつくらい異常で恐ろしい。全編通して陰影が鮮やかで秀逸な映像美で画面に引き付けてくる。ブラッド・レンフロも良かったが、老人役のイアン・マッケランの怪演が実に見事で、ナチス軍人の冷酷さを取り戻していく様は狂気に満ちていた。しかし、非常に緊迫感溢れるストーリー展開だったのにラストにかけて極端に盛り下がってしまった。ラストに更に衝撃的なものを期待させる展開だっただけに、少年が自分の学校の教師を脅して終わりでは拍子抜けせずにはいられなかった。まあそれにしても全体的な出来は非常に良いのでもっと世間的に知られていてもいいと思った。 【スマイル・ペコ】さん 7点(2003-06-07 18:30:04) (良:1票) |
57.これは怖い。何が怖いかというと、どんな人間も悪に染まる可能性があると暗示していること。↓後半からラストにかけての展開に不満の人もいるみたいだが、自分は逆に良かったと思う。何食わぬ顔で明日からまた普通の生活を始めるであろう少年。そこに何ともいえない恐怖を感じる。どんなラストよりも恐ろしい。主演二人も文句無く素晴らしかった。あの少年の役はブラッド・レンフロしか考えられない。端正だがどこと無く寂しげで、どこと無く冷たい顔。見事に少年の奥に潜む残虐性を体現してくれた。イアン・マッケランも見事。ナチスの制服を着て行進するマッケランの表情は凄まじい。完全に狂気に取り付かれた表情だ。『ゴールデンボーイ』は自分にとって忘れられない作品になるだろう。 【T・O】さん 8点(2002-03-06 09:31:27) (良:1票) |
|
56.《ネタバレ》 年老いた元ナチとアメリカ人の高校生男子。実に距離のありそうな二人が奇妙な関係性でえぐい心理戦を展開します。手にいやな汗をかきました。この関係は何だろうね。友情とはとうてい呼べない。でも互いに自分の一部を依存しあっているような。 わたしは初めのうち、小僧が年寄りに命令して従わせるのが不快でなんとなくじいさんサイドに寄って鑑賞していたのですが、衝撃のネコエピソードによって監督に超甘な考えを破壊されました。 元収容所副所長ですもんね、十代の子どもなんぞに手玉に取られるタマではなかった。次々と少年より先んじて手を打って出る老獪なこと。只者じゃないそのオーラ、イアン・マッケランの鬼気迫る演技に震えました。 対するブラッド・レンフロも青臭さと若い反骨心で見事に対抗しています。心の奥に性悪説の根っこを抱えているやばい十代。ラストの‶成長”ぶりの鮮やかなどす黒さったら、心胆を寒からしむるに十分すぎました。 主演二人に目を奪われがちだけど、脇のキャスティングもぴったりで話が締まりました。トッドの両親の見るからに凡庸なこと、生活指導教師のとんちんかんな熱血ぶり。皆すごく良い仕事してます。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-03-26 17:56:00) |
55.《ネタバレ》 ブライアン・シンガーが『ユージュアル・サスペクツ』の次回作として製作した作品であり、主演は当時人気絶頂だったブラッド・レンフロ、おまけにスティーブン・キング原作と話題性には事欠かない企画だったのですが、シャワールームの撮影においてヌードの強要があったとのことでエキストラの少年数人から訴訟を起こされて、完成後1年以上も作品を上映できない期間が発生し、すっかり熱の冷めた状態でロクな宣伝もないまま公開されたために興行的には惨敗。結果、ブライアン・シンガー監督作中においてもっとも注目度の低い作品となっているのですが、これがなかなか見ごたえがありました。 作品では、少年が悪に飲まれていく様がじっくり描かれるのですが、元ナチの老人にも一定程度感情移入の余地を作っており、その結果、悪とは誰にでも根付くものであるという含みを持たせている点が見事でした。並みの監督であれば元ナチは純粋悪として描くしかないところですが、シンガーには自身がユダヤ人であるという強みがあるため、この辺りに創作上の自由を持つという優位性があったのではないでしょうか。なお、シンガーは後に手掛ける『ワルキューレ』においてもナチの様式美等をじっくりと描いており、彼はユダヤ人カードを結構有効に使っています。 圧巻なのがブラッド・レンフロとイアン・マッケランの演技合戦なのですが、撮影当時14歳だったブラッド・レンフロが30年超のキャリアを誇るイアン・マッケランと互角に渡り合い、時に圧倒している点には驚かされました。本作を見るに、ルックスも演技力もあったレンフロならば後に大スターに成長することもできたはずなのに、私生活の乱れから代表作を残すことができず、わずか25歳で命を落としたことは残念で仕方ありません。 作品中で良くなかった点は、入院したドゥサンダーの隣のベッドにはかつての彼の被害者が入院しており、その被害者に正体を見破られるという後半の転換点があまりに強引すぎたこと。どんな凄い偶然だよとツッコミを入れてしまいました。トッドとドゥサンダーがやってきたことの結果としてドゥサンダーの正体が暴かれるという因果にまみれた展開とした方が、内容的にはしっくりくるのですが。 【ザ・チャンバラ】さん [インターネット(吹替)] 7点(2017-08-19 03:14:51) |
54.《ネタバレ》 二人のやりとりがおもしろい。 テーマになっているナチスの話ももちろん観ごたえはあるのですが、 だんだんと狂気が見えてくるのは恐ろしいと思った。 淡々と進んでいくけどすごくおもしろい。 映画嫌いの母にも勧めました。 【らんまる】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-04-22 21:36:24) |
53.もう10回目くらいでしょうか。鑑賞するたびに評価が上がる作品。主人公二人の底知れない悪意が飽きさせない。あと30分長くても構いません。 【次郎丸三郎】さん [DVD(吹替)] 9点(2011-12-31 16:07:19) |
52.ナチスが人間の脂肪を使って石鹸を作ったっていう話は全くの嘘なんんだけどね |
51.スティーブン・キング原作ですか・・・見応えありました。イアン・マッケランの老人とブラッド・レンフロ演じる、高校生の息詰まる心理戦争の行方に目が離せませんでした! 【白い男】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-09-15 00:32:29) |
50.リアルタイムで作られたナチ残党モノの映画では、恐らくこの作品が一番最後、ということになるのではないだろうか。頭のキレる少年は勿論、80歳を過ぎているであろう老人が、時々見せる悪意にもゾクリとさせられる。派手さは無いが、なんとも印象に残る一本。 【j-hitch】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2008-12-12 01:15:18) |
49.極々普通。原作からしてそうなんだけど、頭の切れる人間が悪に走るというテーマは、特に目新しいものでもない。いやいや、むしろ普遍的なテーマ。かと言って、結構(イイ意味で)ぶっ壊れてた原作を映画化するにあたって、とくに工夫があるわけでもない。まあこんなモンでしょ。原作を含め、この物語で思うのは、非常にアメリカ的な感覚だということ。つまり“誰にでも判る悪”という概念としてナチスを持ってきている。自分たちの悪行は棚上げ。しかも悪いのは他人(他国人)。こういうのを見るとガッカリするね。やっぱりアメリカ人って馬鹿だわ。 【TERRA】さん [ビデオ(字幕)] 4点(2007-12-24 23:22:48) |
48.《ネタバレ》 原作のラストも狂っていて良かったが、こちらの方が後を引く怖さがある。邪悪で頭の良い人間が権力を持つことほど怖いものはない。少年が後のヒトラーとなるのは想像に難くない。キング原作の映画化の中でも衝撃の一作。 【フライボーイ】さん [DVD(吹替)] 5点(2007-09-11 17:54:18) |
47.《ネタバレ》 原作どおりのラストも観てみたかったけども、 何事にも動じず、問い詰めてきた教師を逆に脅すところを観て、 これはこれで、より現代的な「ゴールデンボーイ」だなと思えました。 【彬彬】さん [DVD(字幕)] 6点(2007-01-12 16:39:05) |