7.《ネタバレ》 サイレント時代は漲る若さで撮った「大人の繪本 生まれてはみたけれど」、
そしてトーキーにおける小津の最高傑作は、個人的に「戸田家の兄妹」あたりだと思う。
小津の作品と言うと説明的で説教臭い話が多く、俺のような人間にはまず肌が合わないタイプ。
そんな俺でもこの「戸田家の兄妹」は良い作品だと思ったよ。メッチャ良い!
「東京物語」ほどかったるくないし、何より家族が崩壊していく様子をストレートに描写していくところに惹かれる。
突然の死や老いた家族のたらい回しなんか「東京物語」より残酷さを感じた。
戦前の映画で家制度の崩壊をここまで辛辣に描けたのは、家族を何十回と描いていく小津だからこそ出せた答えだ。
葬式の後に遅れてやって来た昌二郎は、正に家族への怒りをストレートにぶつける代弁者。江戸っ子人情を噴出させる小津のな。
「食うや食わずの人間だって、親と子の関係はもっと暖かいもの。どれもこれも一つの腹から生まれながらこの有様はなんだ!」
こ の 有 様 は な ん だ ! !
「人が何と言おうとそんなこと構いやしないよ、対面だとか体裁だとか、世間体とか、そんなことじゃ何にも出来やしないよ。」
何故だろう・・・説教臭い匂いが無い。だって誰もが思う怒りがここに集約されているもの。
良い意味で小津の「家族」描写が完成された作品。唐突なラストもまた意味深だったりするのかも。
斎藤達雄はこれと「宗方姉妹」を最後に小津作品に出なくなってしまった。もう少し見たかったよ・・・。