1.タイロン・パワーがインドの山上で啓示を受ける。
物語的に肝心であるべき箇所で描写を怠り、
その悟りを口頭説明で済ませてしまうことで映画への興が醒めてしまう。
全般的に過剰気味の台詞と対話芝居の重視、そして徹底したパンフォーカスの
カメラはきわめて舞台的な演出だ。
その上で施された映画的演出の一つが、アーサー・C・ミラーによる
縦横無尽のカメラワークだろう。
パーティ会場やレストラン、パブなど多彩なエキストラが多数入り乱れる
躍動的なモブシーンを後景に、主要人物が画面手前で会話をしている。
と、背後の群衆の中から不意にアン・バクスターやらクリフトン・ウェッブらが
画面手前に入ってきて話者が連鎖的に入れ替わっていく。
その嫌味なくらい統制のとれた人物の出し入れのタイミングとフレーミングが圧巻だ。
パン・フォーカスのシャープで密度の高い縦構図と、そこにさらに奥行きを加える
流麗な移動画面。
その背後の群衆の中から何時どのように主要人物を中心化させるのか、
手前の複数の人物をどう出し入れし、どう移動させて構図を決めていくのか。
そしてどこで俳優の表情芝居にクロースアップするのか。
物語映画でありながら、その説話展開以上に画面展開の緊張で見せていく映画である。
そのキッチリしすぎた段取り感がやはり仇ではあるが。