13.《ネタバレ》 刑務所映画が好きで、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが好きな自分としては期待しつつ観賞したのですが、それを裏切らない内容でありました。
まず、入所時の主人公が決して強くはない事が意外。
「これはアクション要素を極力排した、シリアスな刑務所物語なのか?」
と思わせて、事実その通りに陰鬱とした展開が続き、中盤にて「スパルカ」の存在が明かされて、一気にアクション映画の色合いが強くなる。
その後のトレーニングシーンは中々に心躍るものがあるし、ヴァン・ダムがヴァン・ダムらしい強さで敵となる囚人達を倒す姿には、大いに満足。
かと思えば終盤には主人公は戦う事を否定し始めて……といった具合に、二転三転する内容が飽きさせなかったですね。
「あれ? 結局どういった映画になるんだ?」
という興味も相まって、先の展開や結末を推理しながら楽しむ事が出来ました。
この構成は主役を演じたのがヴァン・ダムだからこそ、と思えますね。
アクション俳優として抜群の存在感がある彼が主役だからこそ、この映画は一体どちらなんだ? と考えを巡らせる事が出来るという。
また、主人公の妻がレイプされて殺されており、それがトラウマとなって何度も夢に出てくるのですが、そんな妻の姿と重なるように、主人公の同房人には少年期にレイプされた過去があるし、刑務所で仲間となった若い美男子も現在進行形で囚人達にレイプされている、という設定にも感心。
それゆえに、後者の死に衝撃を受けた主人公が「俺はもう看守の言いなりになって戦わない」という宣言に至る流れも理解出来るし、前者と共に脱獄を図る展開にも、自然と応援したくなる気持ちが湧いてきます。
逆に、他の囚人までもが主人公に影響を受けて「スパルカ」を否定する展開には、少々唐突なものを感じたのも事実ですね。
自分としては「これまで数多くの死者が出ていただけに、元々不満も溜まっていたのだ」と解釈しています。
全編に渡って暗い雰囲気が立ち込める映画であり、ラストシーンも解放された喜び、自由を手に入れた達成感などは希薄。
それでも、地獄のような刑務所生活の中でも、最後まで愛する妻が傍にいてくれたし、これからも共にい続けるのだ、と静かに再確認するかのような主人公の姿には、心を打たれるものがありました。
ヴァン・ダム主演映画の中では「その男ヴァン・ダム」と並んで好きな映画となりそうです。