2.《ネタバレ》 他のどんなツクリモノの画もはるか遠くに霞んでしまうほど、すんばらしいです。
ここで大人たちがしようとしていることは、子供に「成功体験」をさせることです。必ずしもトロフィーを勝ち取ることだけが「成功」なのではなくて、舞台の上でダンスを披露し多くの他人に評価してもらうこと、そのこと自体が子供たちにとってすでに「成功」といえるのです。
大人たちは、子供たちが不良化していく原因について、「成功体験」が不足していることがいけないと考えたのですが、それはまったくその通りで、運動でも勉強でも音楽でも得意分野で誉められる体験をすることが、その後の人生の土台になるのですたぶん。
そして、特に不良化しやすい男の子にとって有効なのが「ジェトルマンシップ」であり、これを教えるのにダンスはとても適しているのです。
「ジェトルマンシップ」とは日本語には正確に訳せないのでしょうが、もともとは「貴婦人」と対になっている騎士道精神のようです。指導者は「ダンスの間、女子を楽しい気持ちにさせてあげること」と言っています。だから、「貴婦人」の居るところでは男子は「ジェントルマン」でなければならないし、逆にいうと女子は「貴婦人」でいなければならないし、女子は「ジェトルマン」でないと判断したらばその男を排除します。
私は日本人のプロ社交ダンスを見ていても全くジェントルマンシップを感じませんが、エレベーターに我先に乗るような社会で暮らしていて形だけ真似してみたってダメなのは当然です。この映画に出てくる少年たちのほうが断然それを身に着けています。
不良になるとジェントルマンでなくなり、ジェントルマンでないと不良化しやすくなり、その逆も真であるかもしれない。「男子はジェントルマンたれ」と教えるあちらの大人はとても賢いと思う。
ちなみに日本では筒井康隆が「すべての男は二枚目を気取れ(そうすれば世の中が良くなる)」と言ったのが唯一それに近いです。
インディゴチームの年長のケビン(たぶん)がトロフィーに見とれているシーンに「不良予備軍だった彼はもう大丈夫です」という指導者のナレーションをかぶせて終わる演出に、もうウルウルが止まりません。彼にはこの先どんな人生が待っているのだろう。どんな時にも、このトロフィーの輝きが彼の支えとなっていくのですたぶん。そう思うと、おばさんはまだまだウルウルが止まりません。すばらしいです。