3.志半ばで退役し、農夫となった元宇宙飛行士が、自ら作り上げた“ロケット”で宇宙への夢を追い続ける物語。
まったく。こういう映画を見過ごしそうになるから、おそろしい。
農場の納屋でコツコツと作ったお手製ロケットで、単身宇宙へ飛び立つ。
ストーリー自体はあまりに荒唐無稽で、現実味はないかもしれない。
ただ、観点を変えれば、「映画が荒唐無稽で何が悪い」ということ。
愛すべき家族に支えられ、自分の夢を実現させていく主人公の様は、決して人間として完璧で、力強いというわけではないのだけれど、観る者に正真正銘の「勇気」を与えてくれる。
この作品は、必ずしも「夢」に対する綺麗ごとばかりを描き連ねてはいない。
父親の自殺という過去、権力の妨害、金銭的な障壁、家族間での確執……、多くの人が人生の局面で味わう苦渋をしっかりと描いている。
ただし、その代わりに、「美しいもの」はきっちり美しく描いている。
冒頭のシーンから一貫して、丁寧に美しく映し出される「空」がそれを如実に物語っていると思う。
「空」は、宇宙を夢見る主人公にとって、常に目線の先にあるものだ。
その広大さ、美しさ、をワンカット、ワンカットで描き出す素晴らしさ。それを見た瞬間に、「ああ、これは良い映画だ」と感じた。
クライマックス、再挑戦のロケットが空高くのぼっていく。
それをすべての人たちが、喜びと、興奮で仰ぎ見る。
僕は、感動して、涙が出た。それ以上に何が必要か。